あれこれの結末

封書の内容

 ※前話を少し修正しています

 手紙→封書


 ―――――

 

 昼食後、アグルス様に呼び出されて執務室へ移動しています。

 要件は先に伝えられているので、フィラジア子爵家からの報告書についてなのはわかるのですが、呼び出されるほどの内容でも書かれていたのでしょうか。

 ナルアス家に来てからこのように執務室へ呼び出されたことは数度しかないのです。


 執務室に着いたところでその前に立っている使用人に中へ入って良いかの確認を取ります。その使用人は私が確認を取ると同時に執務室の中へ静かに入って行きます。

 どうやら、私が来たことを知らせるためにここに立っていたのでしょう。


「許可が出ましたのでどうぞ。奥様」

「ありがとうございます」


 奥様、と呼ばれたことを少し嬉しくも恥ずかしく感じながら私は使用人がドアを開けてくれている中、執務室の中に入りました。



「アグルス様。フィラジア子爵家の報告のことで話がある、との事ですが」

「ああ、そうだ。場を整えるからそこのソファに座って少し待ってくれ」

「わかりました」


 アグルス様はそう言うと執事を1人残し他の使用人たちを執務室から退出させました。

 場を整える、と言われた時はよくわかりませんでしたがあまり口外するような事ではない話をするのでしょう。フィラジア子爵家からの報告についての話にしては物々しいものですが、他にも話すことが有るという事なのかもしれません。


 私がソファに座ってそう経たない内に準備が終わり、アグルス様は私が座っているソファの向かいにある椅子へ腰を下ろしました。


「それでフィラジア子爵家からの報告書について話があると伺ったのですが」

「ああ、これだ」


 差し出された書類を受け取り、その内容を確認します。

 内容としては簡潔に、デスファ侯爵家の包囲網が完全に引かれゼペア商会の逃げ道が無くなったと言う点と、その結果、商会長であるオージェの親が逃亡したと言う点。最後はオージェはリースの策でデスファ侯爵家に確保されたという事。


 あの商会長が逃げたのは予想通りですが、デスファ侯爵家がオージェを確保する理由がわかりませんね。


「その内容についてはこちらの調べでも確認済みだ。間違いはない」

「そうですか」

「これであの商会は確実に無くなるだろう」

「そうでしょうね」


 商会長が逃げ出したとなれば、現状商会内にデスファ侯爵家の対応を出来る者はいないでしょうから、そう時間が掛からない内にゼペア商会は無くなるでしょう。その後、関係者がどうなるのかはよくわかりませんけれど。


「それで、私をここへ呼んだ本当の理由は何でしょうか」


 これだけのためにアグルス様の貴重な時間を使って呼び出すことはないでしょう。これだけでしたら、いつもしている寝る前の報告で十分なはずです。


「あの商会が潰れた後の話に関係している」

「潰れた後、ですか」

「あの商会は今の地位に着くまでにいくつもの商会を取り込んでいたのは知っているな」

「はい。フィラジア子爵家に近付いて来たのも、最初は貴族との繋がりを持つ商会を取り込むのが目的だったようですから」


 途中でフィラジア子爵家の持つ商会を取り込むのを無理だと判断したのか、支援をちらつかせて商会同士の繋がり、という名目で息子と私との婚姻を迫って来るようになりましたが。


「まあその結果ではあるが、あの商会を利用している住民や勤めている商会員が多い。そのため、いきなりあの商会が無くなるのは無駄な混乱を招きかねない。それは、国としても貴族としても看過できないという通達が今朝、私に来たのだ。事後通達ではあったが」


 苦い表情をしながらアグルス様はある書類を私に渡してきました。


「トーアはナルアス辺境伯家の妻としてある程度知っておかねばならないことが有る。その書類は私宛の物だが、後半の一部はトーアに向けて書かれている部分があるので確認するように」


 国からの通達に私に向けた部分があるというのはよくわかりませんが、アグルス様がそのように言うのですからしっかり確認しなければなりませんね。それにナルアス辺境伯家の妻となれば、ということは国防関係のことでしょうか。


「え?」


 書類の一番上に書かれている家名を見て、私は驚きで声を上げてしまいました。

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