執事長の結末

 

 アグルス様に執事長の行動を報告してから数日が経ちました。


 この数日の間にアグルス様は執事長の行動の裏を取るために、いくつか探りを入れていたようです。

 その結果、とある伯爵家との繋がりが浮上し、そこからいくつかの不正の証拠をつかんだとのこと。


 となれば、執事長と会っていた男性は伯爵家の方だったのかもしれません。さすがに当主の方ではないでしょう。


 アグルス様は今、その証拠を元に執事長を退任に追い込むため、計画を進めているようです。また、近々に王都へ向かうことになるため、その証拠を元に伯爵家への追求をする予定だそうです。




 そして、さらに数日が経ちました。


 アグルス様は、1度王都へ出向いていたのですけれど、執事長が関与していた件が片付いたため、1日だけお屋敷へ戻ってきました。まあ、今朝がたに王都の方へ出発されたので、もうお屋敷には居ませんけれど。


 アグルス様の言葉によると、執事長に関しては、不正、及びナルアス辺境伯爵家にとって不利益を被る取引を行ったとして、執事長を更迭するとの事です。また、執事長に追従して、不正に関わっていた使用人に対しても同じ対応をするようです。

 さすがに不正にまで関わっていた使用人は数人程度のようなので、お屋敷の使用人が激減する、という事にはならないようなので安心しました。


 アグルス様が追及した際に、執事長は最後まで「そのような事実はない」と言い続けていましたが、証拠が出ている以上、言い逃れは出来ませんし、既に貴族院への報告も済んでいるのです。何を言ったところでこの処分を覆すことは出来ません。


 執事長が行っていたことは、ナルアス辺境伯爵家に蓄えてある物資、及び金品の横流し。さらに、辺境伯領内に存在する資源の採掘許可を当主の了承を得ずに出したことです。


 おそらく、私が見た現場は、報酬の受け取りなどを行っていたところだったのでしょう。


 さらに執事長と不正取引をしていた伯爵家へ、貴族院から通達があったようです。

 どうやらこの伯爵家、ナルアス辺境伯家以外でも不正な取引をしていたらしく、近々降爵処分が正式に言い渡されるようです。


 なんと言うか、処分が甘い気がしますね。明確に不正を行っていた事がわかったのなら爵位を剥奪してしまった方が良いと思うのですけれど。


 ですが、アグルス様によるとこれ以上の処分は難しいらしいです。どうやらこの伯爵家の所有する土地は特殊な立地らしく、この土地を管理する貴族が一時的でも居なくなるのは困るようです。それに、他の貴族家がこの土地を管理するのも駄目なのだそうです。


 それに表面上の処分はそれだけ、というだけであって実際には現当主を処分し、さらにはその一族もこの国の貴族から除名され、表面上は遠縁の方が新たな当主として立てるようです。新しく当主になる方は、実際には血縁どころか何の繋がりもない方らしいですから、実質的にはお取り潰し扱いとほとんど同じですね。


 詳しく聞くと結構な処分になっていた事がわかりました。これだけの処分ならば甘くはないですね。

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