作家語り

維 黎

1.創作論っぽいなにか

 私は大喜利が好きなのだが、ことKACはそれに似ている。あぁ、誤解してほしくないのだが、好きというだけでうまくはない。そしてこれまたKACも同じで、今年で三回目の参加だがうまくはない。

 話を戻そう。

 大喜利もKACも瞬間的なひらめきが重要になってくると思う。

 それが証拠に、毎回どのお題が発表されても12:30までには一つか二つ、作品が投稿されているからだ。

 例えそれが2000文字に満たない作品だとしても、う~ん、う~んと頭を悩ませていては絶対に書けないだろう。

 お題を見た瞬間、書くことの、あるいは書きたいことの概要インスピレーションが湧かなければ短時間で書くことなど不可能だ。

 もちろんある程度時間をかけて創作していくパターンもあるだろう。ただ〆切が二日程度であれば、学生さんも社会人も、半日は学業や仕事があるので、やはりお題を見た瞬間に作品の概要なり方向性なりが反射的に思い浮かばなければ、短期間で仕上げるのは難しいのではなかろうか。


『私と読者と仲間たち』


 このお題を見てまっさきに思い浮かんだのはカクヨムでの創作活動だった。これに関しては他の作家さんたちも多いだろう。

 今回のお題はなかなかに手強てごわい。

 まず『私』に引っ張られて書き方が一人称に大きく偏ってしまう。これを三人称で書くにはかなりの手間で、かつ技術さいのうもいると思われる。

 昨今の作品では一人称が多く、受け入れやすいというのはわかっているのだが古い人間からすると、どうも一人称は軽い――過ぎるのだ。

 学生当時もっともハマっていた作品が、魔法少女が無双する一人称作品だったことから、一人称を忌避しているわけではない。これは私個人の偏見だが、一人称は

 世界観の設定、登場人物の心情や背景など、細かな描写をしなくても成り立ってしまうからだ。作品世界の広がりは一人称主人公の知識内で納めることが出来るので、主人公が知らない世界は描写する必要がなくて楽という利点がある。逆に三人称より主人公の内面をしっかりと作りこまなければならない、という難しさはあるが。

 余談だがライトノベルから長く遠ざかっていて、久しぶりに戻ってみれば一人称と三人称が混ざった作品が普通に出版されていることに驚いた。私が読んでいた当時は、夢オチくらい禁忌タブーだったのだけれど。

 と、前置きが長くなったが要するに流行はやりの書き方、作品、設定には乗りたくないという私の偏屈さを言いたかっただけである。


 次に『読者』についてだが、まず私自身がカクヨムや他の投稿サイトでも読者ではないので、読者視点のことが書けない――というか書くことがない。また、作品を読んでくれている読者という意味ではあまり多くないので、これまた書くことが難しい。

 よく芸人さんの若手時代の苦労話で、お客さんが二人や三人の劇場や営業先の話をよく聞くがアレと同じだ。

 読者やお客が来ないのは、作品やネタが面白くない、筆力や実力がない、才能がないというのが主な原因だろうか。最後の『才能がない』は致命的だと思うが、私はプロではなく趣味の域なので気にしない――ホントデツヨ?


 最後に『仲間たち』。

 ある意味これが一番、鬱陶……難問だ。

 カクヨムでの創作活動において仲間たちというのはピンとこない。お互い創作する者同士という意味で創作仲間と呼べるとは思うが、仲間となるとなんだか仰々しくて、カクヨム創作活動を視点において書くならば、ちょっと違うような気がしてくる。

 では物語おはなしの作品として書こうとすると、前の二つの『私』と『読者』が難しくなる。特に『読者』。

 現時点で改めてお題を見てパッと浮かんだのは、冒険者兼小説家の『私』が『仲間たち』と洞窟ダンジョンかどこかに行ったことを小説にして、オチは読者――物語世界の読者とカクヨム読者の両方――視点で本を閉じる――みたいな。

 って、無理過ぎる。4000文字で起承転結なんて私の筆力では無理だし、かといって一場面ワンシーンだけの描写で読者視点のオチまで持っていくのは、これまた私では荷が重すぎる。


 以上の点から初めて創作論・評論というジャンルになったわけだが、物語が書けそうになかったので、はっきり言って『逃げた』と開き直っておくとする。

 次のお題は簡単なのがいいなぁ、と思いながら『鏡』なんてどうでしょう? と提案してみる。KAC2021に間に合わなければKAC2022でひとつ。

 10年ほど前に個人投稿サイトに出した作品が『鏡』をお題にした作品なので、一回分稼げるなぁと。

 ――あ。

 あれ『一人称』で書いてるやつだった――。

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