ふぁんやん朝に暮にと

藤泉都理

第1話 朝日






 のそりと起き上がって、ジャージに着替えて、家から出る。


 鼻歌の気分だったら河原へ。

 大声で歌いたい気分だったら海原へ。

 歌いたくない気分だったらひたすらに走り続ける。


 今日は鼻歌の気分だな。


 軽く走りながら河原へと向かう。

 今日は特に身体が軽い。

 十五分くらいで辿り着けるだろう。



 



 月の匂いは、塩。

 火の匂いは、柑橘系。

 水の匂いは、レタス。

 木の匂いは、ミント。

 金の匂いは、鍋を洗ったあとの金たわし。

 土の匂いは、ゴーヤ。

 日の匂いは、綿菓子。





 金の色鉛筆で描いたみたいに、ふちが光り輝いたかと思えば、真っ暗に書き換えられて、瞬く間に、すべてが光に包まれる。

 建物も、木も、地面も、人もぜんぶぜんぶ。


 今日は花の匂い。

 うん、無事に過ごせそうだ。


 横になるにはちょうどいい斜めぐあいの土手に寝転んで、目を眇める。


 ああ、きれいだなあ。


 いつもと変わらずに、感嘆し、合唱。

 朝日に慣れてきたところで、左右どちらの瞼も同じ高さに持ち上げた。


 いつもならば、相棒も一緒に見ているのだが、今日は珍しくも寝坊したようだ。


 来るまで待ちましょうか。

 ただし、お腹が限界を訴えるまで。










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