鉄壁の布陣か、見えざる矛か

 アビスや他の幹部は防衛の布陣を取っていた。

 アビスは大規模演算装置のある管制室の椅子から離れず、三隻の攻城艦(一隻は例のバリア搭載型)を始めとして、数千の戦闘艦と最終的には二〇万機近いドローンをアビス・ステーションの周囲に配備している。

 マルドを始めとして、他の幹部たちも同様に防衛体制を取っている。

 進軍中の宇宙警察と真正面から戦う気でいるのは事実だった。

 体裁ていさい上、宇宙警察の側から大量破壊兵器を使うとは考えづらかったが、例外がないわけではない。

 宇宙警察が最も大きな戦力をいたのは、ノア社の本社ステーションだった。

 とある惑星の巨大な衛星に建造されたステーションで、幾重もの罠が張り巡らされている。

周囲の小惑星群アステロイドベルトには、敵が一定距離近づくと爆発する核兵器が仕込まれていたし、戦力の布陣にも老獪ろうかいさが見られた。

 最前線の周囲四箇所、四角形の頂点のように、大型戦艦の艦隊を配置して敵の攻撃を誘っている。

 ノアの本社・ステーションは宇宙警察の狩りの対象になった哀れな犠牲者ではなく、ずるがしこあみを張った蜘蛛の狩人ハンターなのだった。

 戦艦たちは絶対に倒す必要があるが、そう簡単ではない。

 宇宙警察が一箇所の戦いに集中していれば増援が来る可能性もあるし、戦力を分散するとその分火力は当然減る。

 大型の戦艦及びその艦隊群は、簡単に突破できるような布陣ではなかった。

 どこかに喰らいつけば、別の部隊が反応する。

 制圧作戦の前から、宇宙警察は会議に時間を割いていた。

「アモルド。

 出番だ。

 クローク戦艦と核レールガンの使用を許可する。

 ノアの本社に風穴を空けてこい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る