第31話

「私は一体……」


 そうホテルで考えていると、メイドの一人がやってきた。


「お嬢様!街の人達が、ブラウン家がいないなら是非お嬢様に街を統治して欲しいって話が出てるみたいですよ!」


「え!?

うーん、でも正直もうこの街統治しなくても、それぞれで自立して経済も回ってるし、私は別に平民生活も満喫してるしなー」


「ええ!?お嬢様はお嬢様に戻りたくないのですか!?」


 そうメイドは驚く。

 何とも面白い言い回しだなと思った。


「それに女の私が統治するのも、どうかと……」


「それなら、お嬢様が結婚すれば問題無いのでは?

噂で聞きましたよ~ウィリアム男爵とアンドリュー君のどちらからも告白されてるって!」


 そうメイドは嬉しそうに話してくる。

 私は絶賛その事で悩んでいるというのに。


「あ、それとお嬢様!

街の復興として建物の建て直しやその他色々な出費でそろそろお金が少なくなってきてます!」


 そう言えばお金の管理をメイドに任せてて私はそこまで把握していなかった。


「まあ、それなら働けばいいわね」

「お嬢様が働くなんて!」

「いや、元々そのつもりだった訳だし」


 さて、働き手を探しに行こうかな、と私は借りてるホテルを出た。


 アンドリューのいる路地へ……


「いや、自分の仕事探しにまでアンドリューを連れてってどうするのよ


それに、街の人から私が狙われる事ももうないから、護衛もいらないし……」


 もうアンドリューと一緒に居る理由がないんだ。


 何故だろう、街もすっかり活気を取り戻して、私は元々夢描いていた平民ライフを満喫する予定だというのに、心にぽっかり穴が空いた様な、この気持ちは。


「って、何沈んでるのよ私!

気を取り直して職探しよ!」


 私はそれからお店を回って、服屋さんで無事就職する事が出来た。


 それからは私はそんな心の穴を埋めるべく仕事に没頭した。


 初めての仕事は、色々大変な事もあるけれど、とても楽しかった。

 お店の人も最初は私を貴族の様に接していたけれど、今ではすっかり打ち解けた。


 けれど、こんなに毎日充実していて楽しいのに、何か大事な事を忘れている様な気がする……


「レイラさんって好きな人とかいるの?」

「え?」


 突然、客で来た常連の男性にそう聞かれた。


「いえ、恋愛とか良く分かんなくて」


 私はそう苦笑いすると、男性に両手を掴まれた。


「それなら、俺と付き合って下さい!」


「え?

あ、えーと」


 私は握られた両手を見る。

 私が本当に手を繋ぎたいのは……


「ごめんなさい。

やっぱり私好きな人がいます」


 そう言うと、男性は手を離してはあ!?と言ってきた。


「さっき恋愛とか分かんないって言ってたじゃんか。

今俺を振る為に適当にそんな事言ったんだろ!」


「え、違っ」

「なら俺と付き合えよ、恋愛分からないなら教えてあげるからさ」


 ど、どうしよう……!

 こんな時に限って店に私一人しかいない時間帯だし。

 いや、寧ろ私一人だからこの時間を狙ってきたのかも……


「おい」


 すると、後ろから聞き覚えのある男性の声がした。


「ああ!?何だよテメー!」


 そう常連客が振り向いたと同時にその常連客が突然殴り飛ばされた。


「ぐふぅっ!」


「相手嫌がってんだろーが

振られたんなら潔く諦めろ」


「ア、アンドリュー!?」


 私はびっくりして目を丸くした。


「くっくそ!」


 そう常連客は去っていった。


「な、何で此処に?」

「言ったろ、お前を守るって」


「あ、ありがとう」


 私は少し涙ぐみながら笑顔でお礼を言う。


「久しぶり、っつっても一ヶ月振りくらいか」

「あ、うん、そうだね……」


 久しぶりに会って助けて貰えたのは凄く嬉しいけど、ちょっと気まずい様な……


「店終わった後、路地に来てくれないか?」


「へ?

えーと」


 どうしよう、告白の返事の事かな?


「お前俺に前行ったよな?

逃げないって」


 私はそのセリフを聞いてドキリとする。


「も、勿論、逃げる気なんてないわ」

「そ、じゃあ待ってるから」


 そうつい勢いで言ってしまった。

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