第29話

「は?警察官?」


 ユーリは突然の警察官の来訪に目を丸くする。


「一体警察が何の用なの?」


「ユーリ・ブラウン、あんたを詐欺罪及び侮辱罪で逮捕する」


「……は?」


 ユーリは訳が分からないと言った顔をした。


「何よ、私身に覚えなんてないけど?」


「この期に及んでシラを切るのもいいけどよ、残念ながらあんたの魂胆はもう知れ渡ってんだ」


「どういうことよ?」


「実はあんたを訴えるって声があがってね。なので潔く出頭して欲しいんだが」


 ユーリは顔をしかめた。


「私を訴えるなんて、そんなの誰が?」


「ブラウン家が統治してるこの街の民衆のみんながだよ」


「え?」


 訴える?出頭?何でこの私がそんな事をされなくちゃならないのだ。


「私はブラウン家の娘よ?そんな事が出来ると思って?」


 ユーリはふんと鼻を鳴らす。

 民衆が貴族を訴えるなんて、普通は出来ないはずだ。


「出来ちゃうんだよな、これが」


「はぁ?」


 そう言って警察官はペラっと紙を見せた。

 そこには更に新しい法律が追加されていた。


「今日から執行されたもう一つの法律でね。

貴族があまり好き勝手しない様に民衆でも貴族を訴える事が出来る様になったんだ」


「そんな……そんなの知らないわ!

聞いてない!

それに、詐欺罪?侮辱罪?私が何したって言うのよ!?」


「本当に分からねーんだなお嬢ちゃん。

あんた今まで実の姉の嘘のニュースをテレビで流しまくった癖に」


「あ、あれは……知らないわ!

私じゃない!

テレビ局が勝手に流しただけでしょ!?」


「残念だけどテレビ局からバッチリ裏とってるから、言い逃れとか出来ねーよ」


 それを聞いてユーリは絶望的な顔をする。


「そんな、う、うぅ、お父様、お母様!」


「残念だがあんたの両親もさっき連行されたよ、さ、観念するんだな?」


 こうなったら、とユーリは警察官に抱きついた。


「お願いします!何でもするから、見逃して下さい!」


 そう瞳をうるつかせて懇願した。


「何なら、私の体を好きにしてもいいので、だから、お願いします……」


 ここまで言って断れる男はいないだろとユーリは心の中で嗤う。


「そうか、それじゃあ」


 そう言って警察官はガシッとユーリを小脇に抱えて歩き出す。


「え?え?」


 突然の展開にユーリは驚く。


「あんたの体を好きにして良いって言ったな?

今からムショにぶち込む」


「そんなっ!?私があそこまで言ったのに何でなびかないのよ!?」


 警察官はふぅ、と一息ついた。


「俺は女房以外は抱かないと決めてるんだ、てめーみたいな青臭いガキ、こっちが御免だよ」


「なっ!?そんなっ!?」


 こうしてユーリはあえなく捕まったのだった。

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