第19話

「実は、前々から怪しいなと思っていたのです。

噂では色々と言われていましたが、私は貴女がそういう方にはみえませんでしたので」


 まさか、ユーリより私の方を信用してくれている人がいたなんて。

 私は少し嬉しくなる。


「その、それでウィリアム様にお願いがありまして、こんな事を言ったら怒られるかもしれませんが、この街の税金を減税してくれませんか?」


 私はダメ元で尋ねてみる。


「いいですよ」


 するとあっさりOKが出た。


「え!?

いいんですか!?」

「はい。元々あの増税もこちらとしては反対でしたし、その頃からブラウン家を薄々怪しいとは思っていたので。

こちらから後でブラウン家には上手く伝えておきます」


 そうウィリアムは笑顔で話してくれた。


「マジかよ……」


 そう後ろでアンドリューも驚いている。


「そうそう、ここまで色々あって疲れたでしょう。

お二人とも一晩家で休まれては如何ですか?」


「ええ!そんな!」


 私は両手を振って否定する。

 ただでさえ無茶な条件をお願いした挙句、一晩厄介になるのは贅沢すぎるだろう。


「まあまあそう言わず」


 そうウィリアムはメイドを連れてきて私たち2人は部屋に案内された。


 何故こんなことに……?


 私は訳が分からず部屋に案内され着替えを渡される。

 私のドレスも洗ってくれると言う。


「いや、そこまで大丈夫です!」

「いえいえ、ウィリアム様から頼まれていますので、なんなりとお申し付け下さい!」


 本当にお言葉に甘えても良いのだろうか……?


 きっと私やアンドリューがあまりにも見窄らしく見えて気を利かせてくれたのだろうか?


 しかし、下手に断って逆にウィリアムの機嫌を損ねてもいけないし。


「なら、お言葉に甘えて」


 私は結局一泊させて貰うことにした。

 断っていた手前アレなのだが、実際は物凄く嬉しい。

 何故なら久しぶりに湯船が堪能出来るから!

 私は早速着替えを持ってお風呂場まで移動した。


「ああ、丸2日ぶりのお風呂は気持ちいいわ……」


 私はお風呂に入った後、出された服に着替えて部屋に戻る。


 すると、ちょうどアンドリューと出会した。


 いつものボロボロの服とは打って変わって、綺麗な服を着ているのは何だか新鮮だ。

 それに今までそれどころじゃなくてあまり見ていなかったけど、アンドリューって割とかっこいいんだなと思った。


「おい、何じろじろ見てるんだ?」


「え?ああいいえ、

ただそういう格好も似合うなと思って」


 私がそう言うとアンドリューは少し顔を赤らめた。

 照れたのだろうか。


「それはどーも。

それより、こんな豪華に招待されてるけど、罠じゃねーよな?」


 そうこっそりとアンドリューは聞いてくる。


「うーん、可能性は無くはないけど、単純に私たちの見た目が可哀想だからって同情な気もするけどね」

「それに、何かあるならこんなまどろっこしい手口は使わないと思うし、普通に歓迎されてると思うわ」


 それを聞いてアンドリューは少し安心したらしい。


「まあ、罠だったとしてもなんかあったら俺があんたの事守るよ」


 それだけ言うと足早にアンドリューは去っていった。


 しかし、あのアンドリューから私を守るなんて言葉が出てくるとは。


「まるで別人みたい」


 私はそうクスクス笑いながら部屋に戻った。

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