第10話

「それじゃあ先ずは警備の強化ね。

アンドリュー、警察署の方まで連れていって」


「……分かったよ。クソっ!」


 アンドリューはまた私の腕を掴み歩き出した。


「たくっ、俺はさっさとお前を殺してやりたいのに」


 と何やらアンドリューは物騒な事を呟いているが、一旦無視だ。


 私はさてどう警察と交渉するかを考える。


「おら、着いたぞ」


 暫く歩いてようやく警察署へと着いたのだが。


「これは、ひっどいわね」


 私は目を疑った。


 思ったよりも建物が小さく、普通の住宅と間違えてしまいそうだ。


 それに、いつから建てられたのか、修繕工事も特にしていないらしく、外見はボロボロだった。


 取り敢えずアンドリューと2人で中へと入る。


「ああ?何だいお二人さん。

カップルの冷やかしならお断りだよ」


 そう中に居た警察官にしっしっと手であしらわれる。


「誰がカップルだ!!」


 そうアンドリューはブチ切れた。


「あの、お尋ねしたいのですが」


 私はそんな警察官の言葉を無視して話し出す。


「ああ?何か事件かい、面倒臭いな。」


 そう警察官は新聞を読む手を止めない。


 仕方なくそのまま尋ねることにした。


「あの、この街の警察官って何人くらい居ますか?」


「ああ?

俺を含めて12名だ」


「12名?それだけですか?」


 私はあまりの少なさに愕然とする。


この街の人口は確か1~2万くらいだったか?

それに対し警察が100人にも満たないとは。


「それは大変ですね、人材募集とかはかけてるんですか?」


「そんなもんかけたって誰も来やしねーよ。

年中事件だらけでずっと働かされてその割に給料は増税されたせいで雀の涙なんて、誰も働きたくないだろ?

だから俺も程々にしか働かないって決めたんだ。

どうせ全部の事件を解決する事なんて出来やしないし」


 成る程、だから勤務中なのに新聞を読んでるのか。


「分かりました。ありがとうございます。

因みに、この警察署のトップは誰でしょうか?」


「ああ?そんなん居ない居ない。

緩ーくやってるからねぇ」


 その警察官はそう笑いながら答える。


「分かりました。

それじゃあ暫定的に今から貴方がトップになって下さい」


「はぁ?

お嬢ちゃんさっきから何訳分からんこと言ってるの?」


 そう警察官はやっと私の方を向いた。

 歳は40代後半くらいのおじさんと言ったところだろうか?


 そして私の顔をまじまじと見る。


「ん?あんたもしかして、レイラ・ブラウン?」


 どうやら私の顔を知っているらしい。

 まあテレビやニュースで流れていたら分かる人には分かるのだろう。


「こりゃまた我が儘娘が来たもんだ。

何だ?これもあんたの我が儘か?」


 そう笑いながら警察官はそう言った。


「そうね、我が儘よ。先ずはこのお金で警察署を建て直して人材を確保しなさい」


 そう私は100万ルーペを机に置いた。


 すると警察官の目の色が変わる。


「は?一体どういうことだ?」


「そのままの意味よ。

この警察署、修繕工事すらされていないし小さ過ぎる。

建て直して、それから人材、先ずは100人は欲しいわね。本当はもっと要るだろうけれど。

それから給料は頑張って昇進すると上がる様にしたら、みんな張り切るわよね。

後は設備を整えて、それから……」


 そうレイラが言うと、警察官は待った待ったと一旦話を止める。


「そんなの一体どうやれって言うんだ!」


「そうね、先ずは人集めからしないとね」


 そうレイラは微笑みながら答える。


 レイラはそう言うと、100万ルーペをまた片付けた。


「もし手伝ってくれたなら貴方はトップになれるけど、どうする?」


 そうレイラは警察官に問いかける。


「っち!そんなん簡単に出来るわきゃねーだろ」


 そう警察官はまた新聞を読み始めた。


「分かったわ。

じゃあこちらで人材集めするから。」


 そうレイラが出て行こう後ろを向くと、警察官から声をかけられた。


「ちょい待ち、あんたは結局何が目的なんだ?」


 レイラは警察官に振り返って答えた。


「この街を立て直そうと思って」


 警察官はレイラの真剣な顔を見て悟る。


「あんたが壊したこの街をあんたが立て直す?ははっ!面白い冗談だな。


……だが、そういう冗談は嫌いじゃないし、こんな生活も正直うんざりしてた。

手があるなら乗ってやってもいいぜ」


 そう警察官はニヤリと笑った。


「あらありがとう!」


 レイラはそう笑顔でお礼を言った。


「但し、俺がトップだからな!

分け前はきっちり寄越せよ?」


「それは頑張り次第かしら?」


 そうレイラは微笑んだ。

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