シンデレラ

私誰 待文

シンデレラー上

 むかしむかしあるところに、美しい使用人の娘が家族と暮らしていました。彼女は意地悪な継母や二人の義姉あねに毎日ひどい仕打ちを受けていました。


 彼女は朝早くに起き、継母たちに朝食をこしらえるため釜戸かまどたきぎをくべ、灰まみれになってせっせと働いていました。継母たちはそんな彼女を「灰かぶりシンデレラ」と呼び、さげすんでいました。


 ある日、シンデレラたちの元に舞踏会への招待状が届きました。遠い国の大きな城の王子様が、自分の妃きさきを探すために開いたのです。

 継母たちは王子の眼鏡にかなおうと、華美な衣装や化粧で自分をかざりました。そんな様子を見たシンデレラは、ぜひ舞踏会へ連れていってほしいと頼みました。


 ですがシンデレラの美しい容姿を密かにうとましく思っていた継母たちは、彼女を舞踏会へ連れるどころか、いつも以上にいそがしい用事を押し付けると、とっとと迎えの馬車に乗り、お城へ向かってしまいました。


 ☆  ☆


 数多の星がまたたく夜。家内の掃除をしつつ、シンデレラは一人の寂しさから、さめざめと泣きました。


 その時、彼女の眼の前にパッと誰かが現れたのです。


「あなたはだぁれ?」

 きらめくドレスをまとった女性は、微笑みながら答えます。


「私は魔法使いよ。おぉ可哀想かわいそうなシンデレラ、舞踏会に行けなくて悲しいのでしょう?」


 親身になって話をく魔法使いに、シンデレラは心の内を全て話しました。魔法使いはただうんうんとうなずくと、パッと杖を取り出しました。

「貴方に魔法をかけてあげる。それで今から、王子様に会いに行きなさい」


 魔法使いが杖を振ると、野生のネズミはかがやくたてがみを持つ馬に、畑のカボチャは馬車に、そしてシンデレラが着ていたみすぼらしい服と靴は、誰もがうらやむ水色のドレスとガラスのくつに早変わりしました。


 それから魔法で変化したものに、杖で念入りに魔法をかけます。

「この魔法で、馬は思うだけで意のままに動くようになるわ」

 魔法使いは得意げにシンデレラへ語ります。


「さぁ、早く行ってらっしゃい。舞踏会は12時を過ぎたら終わってしまうから」

 生まれ変わったように美しくなったシンデレラは馬車の籠に乗ります。


「それと」

 魔法使いは少しだけ真剣になって、シンデレラに話しかけます。

「今は継母たちにいじめられて困っているのでしょう。けれど、見捨みすててはいけないよ」


「あの、魔法使いさん」

 舞踏会へ向かう直前、シンデレラは空色のローブをまとった魔法使いに質問しました。


「どうして私へ、こんなにやさしくしてくださるの?」

 すると魔法使いはにっこりと笑って、ただ一言だけ答えました。


「そうすることが、私のためにもなるからよ」


                                〈続く〉





 

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