恋はアルデンテがお好き
@kanako_01
第1話 初めての時 (1)
この物語は、「彼と彼女」の子供たちを描いた作品です。主に長男優一を中心として、進んでいきますが、所々に長女花音の友達との話も出てきます。
高校まで、女っけなく素直に育った優一が大学に入学してから知り合った、女の子達との恋愛事情を描いていきます。
最初の方は、流れがゆっくりですが、段々、盛り上がっていきます。
結構濃い内容です。お楽しみ下さい。
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僕の名前は、葉月優一。今年、大学に入学した。まだ、友人と呼べる人もいないが、将来の立場も見えている、いや決められている自分にとって、大学とは将来の為の基礎を色々学ばなくてはならないところ位に思っていた。
もちろん、友人も欲しいが今のところ、その暇はない。
・・・・と思っているのだが。
「優一、今日はどうするの」
「えっ」
入学当初から僕をいきなり名前で呼んでくる女の子がいた。
特に勉強の邪魔になる訳でもない。ただ、講義が一緒の時だけ、いつも隣に座ってくる。
その子が、講義を聞きいている僕に、いきなり話しかけてきた。
「別に。午後二コマ聞いた後、家に帰る」
「えーっ、優一は、たまには遊ぶとかしないの」
「遊ぶって」
何を言っているのと分からないという顔をすると、
「帰りにどこか、例えば青山通りをぶらつくとか」
女の子の顔を見ながら少し考えると
「あんまり興味ない」
まだ半年も経っていない学校で、なぜかいきなり声を掛けてきた子が安西三咲だった。
安西三咲。“多摩の方に住んでいるらしい”しか知らない。愛くるしい顔が特徴の女の子くらいにしか思っていなかった。
「ねえ、たまには私と学校の帰りに青山でも散歩しない」
頭の中で困ったなと思いながら“今日はお母さんには、特に何も言っていないし、たまにはいいか”と思うと
「ちょっと待って」
と言ってスマホを取り出した。授業中なので電話は出来ない。
母親の携帯にメールをすると、五分後位に
『夕飯はどうするの』
『夕飯は家で食べる』
『わかりました』
それを見た優一は
「いいよ」
と言うと
「わあ、じゃあ、最後の講義終わったら」
と言って微笑んだ。
“微笑むと結構可愛いな”そう思いながら授業に気を向けた。
四コマ目が終わり教室の中の学生が半分位居なくなると
優一は、さっ、帰るか。と小さく呟き、彼女との約束の場所に向かった。
彼女に誘われて表参道方面に歩く事にした。通りの右側は、そんなに変化がないが、反対側は大きく変わっている。少し歩くと安西さんが
「ねえ、ここに入らない。結構コーヒーが美味しいんだ」
「うん、いいよ」
構えが、いかにも“青山通りのお店”という雰囲気の店のドアを開けると、店員が声を掛けてきた。
少し落ち着いた雰囲気で、入口の直ぐ左側に、二階に上がる階段がある。
一階は、右側に四席、左に三席のテーブルがあり、奥に二つのボックス席があった。
“へーっ、見た目より結構広いんだ”そう思いながら入口に立っていると店員が、
「お好きなところにお座り下さい」と言って奥に戻って行った。
「優一、一階でもいい」
彼女が僕を見つめながら、少し困った顔をして言ったので
少し笑顔で
「うん。いいよ」と返した。
僕は、二人で入口から三つ目の席に座り、周りを見渡すと一つ奥のテーブルにお腹の大きい、いかにもお嬢様という雰囲気の女性が座っていた。
“今の時間、こんなところでパフェを食べている人ってどんな人だろう”と思いながら何気なく横目でその人を見ていると、店員が氷と水の入ったグラスとメニューを持って来た。
僕の視線に気づかなかったのか、メニューに夢中になっている彼女は
「コーヒーも良いけどやっぱりパフェにしよう」
そう言って三咲は色々なパフェの写真が載っているページを見ながら、店員に少し大きめのパフェを頼んだ。
「優一は何にする」
「キリマン」
店員が、“分りました”という顔をしてメニューを小脇に抱えながら奥に行くと僕の目を“じっ”と見て
「優一、今どこ見てたの」
「えっ」
「えっ、じゃない。私がメニューを見ている時、あそこの女の人見ていたでしょ」
・・なんだ、分かっていたのか。
「えっ、気のせいだよ。初めて来た店だから何となく周りを見ていただけ」
また“じっ”と僕を見つめると
「まっ、いいわ。ところで優一は、どこに住んでいるの」
「えっ」
「・・・田園ライン沿い」
「どこなの」
「うーん、まあいいじゃないか」
「何故言えないの」
・・何故か言う気分でない・・
テーブルの反対側に座りながら自分の目を覗き込んでくる。
「安西さんは」
と聞くとちょっと考えた後
「多摩センター」
「ふーん、小田急、京王どっち」
「いつも京王で通っている」
「そうか」
彼女が、僕の目を覗き込むようにすると、自然と洋服の胸元が前に垂れて、淡いピンクのブラの上の方と透き通るような肌が見えた。
ちょっと“どきっ”としながら“ちらっ”と見ると“普通かな。大きい方なのかな”、自分の母親が大きい事を考えると基準がどうしてもそっちにいく。
視線を少し上げると彼女の視線が自分に“どこ見ているの”という意味を伝えた。
直ぐに視線を外して、青山通りの方向に視線をずらすと通りの反対側にある、最近出来たブティックに目をやった。
ちょっと気まずい感じの中、ちょうど店員が、注文した品を運んできた。
“良かった。慣れていないんだよな。こういうの”
気を悟られないようにしながら、やがて運ばれてきたコーヒーを口にすると“へーっ”と思った。
確かに結構美味しい。キリマンの豆の味が素直に表現されている。感心してもう一口飲みながらコーヒーを楽しんでいると
「優一」
会ったその日から、自分を名前で呼ぶ女の子に、なぜか抵抗を感じないまま受け入れている。
「優一。ねえ、私と一緒にいるんだからもう少し楽しい顔をして」
「えっ」
また、答えにならない声を出すと
「うん」
と言って微笑んだ。
“この子なぜ、僕に声を掛けるのかな”頭の中に分らない疑問符を一杯に出しながら相手の顔を見ているとパフェを食べ終わった彼女が、
「ねえ、少し歩こう」
今のまずい状況を脱するにはいいなと思うと
「ああ、いいよ」
と答えた。
“なんで僕は帰るといわないんだろう”そう思いながら、なぜか二人で青山通りを歩いて行くことになってしまった。
自分の右を歩きながら色々話しかけてくる。
「優一って不思議ね。私これでも高校まで凄くもてた。今の大学でも結構声かけられるのに優一は、“私の事無視する”というかそれ以前に全く興味ないと言う感じ。私のこと嫌い」
「えっ」
また答えにならない言葉を言うと
「ねえ、“えっ”だけは止めよう。何か他の言葉を言って」
「・・・うーん」
「ったく。まあいいわ」
「安西さん、無視したり、興味なかったら、今こうやって歩いていない。それだけじゃだめ」
歩きを止めて安西さんの目を見ると
「ごめん。少し言い過ぎた」
と言うと安西さんは下を向いた。
そんな姿に優一は
「いいよ。あまりうまく言えないんだ」
そう言って歩き出した。
彼女が後を追うように歩くと、僕はちらっと腕時計を見て
「安西さん、今日はもう家に帰ります。ごめん、また明日」
そう言って表参道と青山通りの交差点にある地下鉄の入口に向った。
三咲は、“どうして”という思いで優一を見ていた。
今まで、男から声を掛けてきた。自分から声を掛けることもなかった。なのに、始めて“あいつ”を見た時からなぜか気になってしまった。
“なんで”という自分自身でも理解できない心の揺らぎを消化できなくて、いつも“あいつ”の授業と一緒の時は、必ず隣に座るようにしていた。そして今日やっとデートに誘ったと思ったら全く“無反応”。
”ありえない”今までの自分の事を考えると無性になぜか心が揺らいだ。
「お母さん、ただいま」
玄関で靴を脱ぎながら言うと
「お帰りなさい。優一。思ったより早かったわね。お母さんもっと遅いと思った」
「うーん、なんか僕も良く分からない」
自分で寄り道してくると言いながら“良く分からない”と言う、分からない言葉を言う可愛い息子に微笑むと
「食事は、まだだから」
と言ってキッチンに戻った。
二階にある自分の部屋に入ると、ソファに座りながら、安西さんが、何で自分を誘ったのか考え始めた。
“可愛いんだから僕に声かけなくても良いのに”
答えが出そうにないと思うと、自分の部屋に置いてある机に向かって今日の講義の復習を始めた。
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いかがでしたか。
続き読みたいなとか。面白そうと思われた方、投稿のエネルギーになりますので、フォローと★★★お願いします。
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