第239話 鈴音さんと共に暮らす生活 その6
俺は家に戻った後は、鈴音さんと一緒に細かい片付けをして、引っ越しの残り作業を進めていく。
夕方に成る頃には、その作業も止めて晩ご飯作りに移動する。
今日の晩ご飯はカレーで有った。
この家の台所は昔ながらの台所で有るため、せせこましい。
ガスコンロも一応、2口有るが、大きな鍋を同時2つに置ける余裕は無かった。
真理江さんの家に居候していた時の台所も狭く感じたが、こっちの方がもっと狭い感じがした。
それでも、鈴音さんはその中でも上手にカレーを作っていく。
俺も出来る事を聞いたら『では、豚カツを揚げてください♪』と言われたので、カレーの鍋を見張りながら、豚カツを揚げる。
チルドの只、揚げるだけの豚カツでは無く、豚カツ用の肉を小麦粉から付けた、手作り豚カツで有る。鈴音さんは、出来合品を余り好まない。
お互い初めての台所だが、大きなミスも無くカツカレーと付け合わせのサラダが完成する。今日からは、俺と鈴音さんだけの食事成る。
この家は、台所で食事をする場所が無いので、居間での食事に成る。
お酒に関しては、今まで通り飲んで良い事に成っているし、鈴音さんもワイン等に成るが多少は付合ってくれる。
俺はビール。鈴音さんはワイングラスに入ったワインで乾杯をしてから食事が始まる。
「ふぅ~~。初日は無事に終わりそうだね、鈴音さん!」
俺は一気にビールを飲み干し、手酌で缶ビールをコップに注ぐ。
「はい!」
「車も借りる事が出来まして、粗方の買物も出来ました!!」
鈴音さんも和やかな表情で、ワインを軽く口付けている。
「……そう言えば、稀子がこっちに来たいとは言い出さなかったね」
「逆に言えば、こちらが招待するべきで有ったか?」
今までの稀子なら、絶対に俺と鈴音さんの側に居たがるからだ。
「きっと、稀子さんの両親に言われたのでは無いです…?」
「2人の中を邪魔するなとか♪」
「稀子さんの招待は、落ち着いてからにしましょう」
「荷物があちこちに有る状態での食事では、稀子さんも落ち着かないでしょう!」
陽気な声で言う鈴音さん。
鈴音さんも俺との生活を希望している様だ。
全体の進捗率で言うと、引っ越し作業は70%位完了しているが、まだ部屋の隅は段ボールが数箱残っている。
「そうだね…。完全に落ち着いたら、稀子を晩ご飯に招待しよう!」
「それで、明日は凉子さんが、こちらに来るんだよね」
「はい。そうです!!」
「11時位を目安に、こちらに来ます!!」
「11時だと……昼食を跨ぐね。この家で食べて貰う?」
「そうですね、比叡さん。そう成りますね!」
「折角、こちらに来て貰ったのに、里に降りての昼食では意味が無いですからね」
「だよね…」
「えっと……凉子さんは日帰りの予定だっけ?」
「はい。日帰りの予定です!」
「まだ、家の中がごちゃごちゃしていますし、お布団も準備していないので、今回は日帰りに成ります!」
「そうすると……鈴音さん。帰りは駅まで送った方が良いかな?」
「帰りですか!」
「今日車を借りたのに、明日直ぐにまた車を借りるのは気が引けるので、帰りの送りは大丈夫です。最終のバスまでにはお母さんも帰るでしょう」
「お気遣い、ありがとうございます。比叡さん!!」
「いえ、いえ」
(……昨夜話した時は明日、婚姻届けを出す予定だったが、スケジュール的に明日では無く明後日に成りそうだな)
俺の両親は事後報告で構わないが、凉子さんだけには、最終の了解を貰わなくては成らない。
夕方に凉子さんが戻った後に、市役所の支所に出向いても良いが、其処まで焦る必要も無いかと感じた。
鈴音さんと過ごす、ゆっくりとした食事に時間が流れていく……
……
晩ご飯後は後片付けを2人でして、夜の団らんを過ごすが、2人だと今までの様な賑やかな団らんでは無く、1つの部屋に2人が居る状態で有る。話題なんて出尽くしてしまうからだ。
俺はスマートフォンを触り、鈴音さんは小難しそうな本を読んでいる。
鈴音さんが自分の時間に本を読むのは、昔からの習慣らしい。これは最近まで知らなかった。
真理江さんと一緒に暮らしていた時も、俺が鈴音さんの部屋に遊びに行く事は無くて、鈴音さんが来るパターンばかりで有った。
俺も彼女とは言え、女性の部屋に入るのは気が引けるので、鈴音さん1人の時間を知る機会が無かった。
うん……良い血筋の家はやはり違った!
この家の部屋数は3部屋で有った。居間と寝室と客間と言えば良いのだろうか。
鈴音さんは1人をどちらかと言うと、好まない人だと言うのに気付いた。
真理江さんと暮らしていた時も、大体居間で真理江さんと居たし、山本さんの家に居た時も山本さんや稀子とか、常に誰かの側に居た。
その御陰で言う言葉もおかしいが、鈴音さんが山本さんと大喧嘩をして、稀子も鈴音さんと距離を取った時、居場所を失った鈴音さんは俺の所に自ら来た……
そのため、この家は個人の部屋は無い。俺も鈴音さんと常にいたいからだ。
(時間的に、そろそろ寝るか……)
普通の流れなら、今から布団で愛の確認に成るのだが、どうなるのだろうか?
静かに本を読んでいる、鈴音さんに俺は声を掛けてみた……
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