第215話 妙案 その4
「……比叡さんは、正解が分かった様ですね」
「稀子さんはどうですか…?」
「好敵手を消すなんて事は、考えた事は無いからな…」
少し考えれば、直ぐに分かるだろうに稀子は分からない感じで有った。
「好敵手を消すなんて…、私では邪魔をする位しか思い付かないな」
稀子は過去に、鈴音さんにした事を言う。
鈴音さんと山本さんの仲が険悪になった時、稀子は交渉人と成ると言いだして、それを伝えなかった事だ。
優しい鈴音さんは稀子を信じたが為に、状況が悪化して俺を頼る様に成った。
「
「消すの別の意味は、殺す事だろうけど、実際そんな事出来るの?」
「……稀子さんも、気付いた様ですね」
「裏世界は、裏世界のやり方が有ります」
「暗殺の依頼は最終手段ですが…、比叡さんが以前見た夢の様に、拷問で調教してくれる人も裏世界には居ます…」
(暗殺、拷問!?)
(完全に裏世界では無いか!!)
(それをテーマにしたネット動画を良く見るが、現実世界でも行えるのか!?)
(伊○院さんや流○さんが現実に居たら恐すぎる!!)
「鈴ちゃん…。それは山本さんを拷問して、更生させるで良いの?」
「はい…」
「けど……そんな事を孝明さんにしても実際は逆効果です」
「中途半端な拷問は、更に復讐心を生みます」
「暗殺は流石に……お母様には言えませんでした」
(あの人なら拷問にも耐えそうだ…。優しい鈴音さんが、暗殺の依頼を出来る訳が無い!)
(俺も山本さんは憎いよりも恐いだが……俺から暗殺を依頼するまでの度胸が無い)
(それをしたら社会的に終わるし、今度は見えない恐怖と戦わなければ成らない)
「ですので孝明さんは出所後、南取島に移住して、新生活をして貰うで話が纏まりました」
「これが一番の落とし所だと、お互いが感じたからです……」
「鈴音さん…。島流しの案を出したのは誰ですか?」
「考えたくは無いのですが……鈴音さんですか…?」
俺は島流しの発案者を聞く。
真理江さんは内心反対している感じだったし、そう成ると鈴音さんしか居ないからだ。
「比叡さん…。それは私では無いし、お母様でも有りません」
「南取島に
「その人は、本家の相談役に当たる人で有りまして、お母様最後の頼みの綱らしいです」
(本家の相談役…。また、話がややこしく成ってきたな)
「最初、お母様と2人で相談をしていた時は、案が全く出て来ませんでした」
「行き詰まったお母様が、頼みの綱の人に電話相談をして、南取島の話が出て来ました」
「私も…孝明さんを暗殺までは考えていませんし、お母様も反対するのは言うまでも有りません」
「実質孝明さんは監禁では無く、南取島での幽閉生活に成るでしょうが、其処で『真の更生を願う』と言う気持ちが、お母様と一致したのです」
「そんな流れだったのですか…。俺も山本さんが更生してくれるのを願ってはいますが……」
「大きなお家は色々と凄いね…。私の家なんか力なんて何も無いし、有るのは山と田んぼばかりだよ!」
俺と稀子。それぞれが感じた事を言う。
「この話が決定すれば、もう、私達は孝明さんと会う事無い筈です。言え、逢っては成らないのです!」
「連絡体制も見直して、緊急時の連絡や定時報告等の連絡体制も構築するようです」
「万が一、孝明さんが脱走した場合は本家が鎮圧隊を編成して、後は言わなくても分かりますね…」
「鈴音さん。本家は……何者なんですか?」
「只の、由緒有る家系では無いですよね……」
「そう、感じ取るのが普通ですよね」
「お母様の言う通り、南取島でリンを採掘して、財を成した所から本家の始まりです」
「孤島からリンを本土に輸送して、それを商売人に売り渡すのですから、善人の心だけで出来る商売では有りません」
「今の本家は不動産事業や商社等の事業が中心ですが、商売の関係上、裏の関わりが無い訳が有りません……」
「お父さんが……商売で成功したのも、本家の影響が有ったからです」
(聞けば聞く程……複雑な展開に成ってくるな)
(鈴音さんと結婚すれば、俺も本家と関わりが生まれてくる…。出来れば関わりたくは無いが……)
「鈴ちゃんはやっぱり、正真正銘のお嬢様だったんだね!」
「そんな人と結ばれるなんて、逆玉の輿だね! 比叡君!!」
突然言い出しながら、俺の肩を『バン、バン』叩く稀子。
「稀子…。鈴音さんはもう普通の人だぞ……」
「でも、比叡君」
「困った事が起きたら、その本家に泣きつけば助けてくれるよ!」
「……そんな事が起きない様にしたいよ」
「鈴音さんのお母さんだって、平穏の生活を望んで居ると思うから」
「ですよね、鈴音さん」
「はい…」
「私の家系。美作家はお父さんの問題を、本家の介入代って無事に解決出来ましたが、その代償も大きく、美作家の力は完全に失いました」
「山本のお母様は何かと本家に頼りますが、私としては本家との関わりを避けたいのが本音です」
「私が結果的に比叡さんを選んだのは…、私自身が普通の生活を知らない間に、望む様に成っていたからです」
また、鈴音さんの口から衝撃事実が発言された!!
もう、勘弁してくれ……
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