第214話 妙案 その3

「これが……私と鈴音さんで話し合った内容です」

「本家も前向きに検討していますし、青柳さんや稀子さんから反対意見が無ければ、これで進めて行きたいのですが…」


「……」


「……」


 けど、俺も稀子も直ぐには返事をしなかった。


(悪くは無い案だが……、本当にずっと軟禁出来るのだろうか?)

(島の位置関係からして、通信会社の電波は無いから外界とは遮断はされるが、あの人が素直に軟禁されるのか??)


(俺がそれを上回る案を出せれば別だが、本当の妙案何で直ぐには出て来ない)


 俺が返事に困っていると……


「私も…少し考えて見たけど、おばさんの案は仕方無いかなと思う」

「山本さんは確かに怖い人だけど、優しい一面も有る。私もそれに掛けてみる!」


「有り難う御座います。稀子さん……」

「稀子さんにも暴言を吐いたようですが、それでも孝明の事を想っていてくれまして」


「まぁ……私も山本さんの事が、本当に嫌いな訳では無いからね!///」


 稀子は少し恥ずかしそうに言う。

 まだ、山本さんに対する恋心は残っている様だ。


「やはり……青柳さんは納得出来ませんか?」


 真理江さんは、不安な表情をして聞いてくる。


「いえ、そうでは有りません」

「只……今の案を進めつつも、新た方法も模索するべきかと……」


「それは、青柳さんの言う通りです」

「この案では進めますが、同時に他の方法も本家に相談していきます」

「では……賛同してくれるのですね?」


 真理江さんは、真剣な表情をして俺に言う。


「はい…。短期間なら効果は有ると思います」


「……有り難う御座います」

「では、このお話は終わりにします。長い間、有り難う御座いました」


 真理江さんはそう言って、椅子から立ち上がり、居間の方に戻って行く。

 早速、本家に連絡を取るのだろうか。

 真理江さんは居間に戻ったが俺と鈴音さん、稀子はまだ椅子に座っている。


「島流しとは凄いね!」

「歴史の授業を思い出したよ!!」


 稀子は驚きながら言う。


「……これが、ベストとは言い切れませんが、これ以外の方法に成りますと…」


 鈴音さんが突然、言い淀む。


「鈴音さん…。実は、他の方法が有るのですか?」


 鈴音さんの話し方からして、他の方法が有ると感づく。


「えっ!?」

「……えぇ。有る事は有りますが……人の行為に外れる事に成ります」


(人の行為に外れる…)

(これは、聞かない方が良いか……)


りんちゃん。それはどんな行為なの?」


 俺がその話を止めさせる前に、稀子が聞いてしまう。

 鈴音さんも言うのを躊躇ためらっているが…、ゆっくりと話し始める。


「……光が有れば闇が有ります」

「神が居れば悪魔も居ます……」


 鈴音さんは、意味不明な事を突然言いだした!?


「鈴ちゃん!? いきなりどうしたの!!」

「何かのヒロインに、成りきっちゃた!?」


「稀子さん…。茶化さないでください」

「これは真剣な話です!」


「あっ……ごめん//////」


 稀子を睨み付けながら、鈴音さんは言う。

 さっきの言葉は冗談では無いのか。鈴音さんは話を再開させる。


「善人もいれば悪人もいます」

「けど……悪人は悪人を使って、悪行を隠します」


「……」


「……」


 俺と稀子は、鈴音さんの言葉を黙って聞いている。

 何時もの鈴音さんが言う言葉では無いが、それだけ言いにくい話だろう。


「……本家も、表の顔と裏の顔が有ります」

「それは、商売をしていく上ではどうしても必要に成ります。現に私の父もそうでした」


好敵手ライバルは刺激に成りますが、同時に邪魔で有ります」

「商売をして行く中ではどうしても、遭遇してしまいます」


「…ここで、比叡さんと稀子さんに質問です」

「邪魔な好敵手を消したいけど、自分の手は汚したくは無い」

「その時に、どんな方法を考えますか…?」


(鈴音さん。そんなの直ぐに分かるよ)

(スキャンダルで相手を失脚させるか、暴力等で脅すか、最後は暗殺を―――)


「!!!」


(本当の殺処分か…。絶対に真理江さんは反対する!)


 俺は聞かなくて良い話を聞いてしまった……

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