第204話 悪夢の再来 その2

「死ね~~~」


 山本さんはナイフを突き出して、俺と鈴音さんに向けて突進して来た!

 俺と鈴音さんどっちだ!?


 俺が状況を判断している間に……


(しまった! 鈴音さんだ!!)


 俺が気付いた時には、山本さんは鈴音さんに向かっていた!!


「きゃぁぁぁ~~~!」


 鈴音さんは逃げようとはせずに、只悲鳴だけを上げている!?


「逃げて、鈴音さん!!」


 俺はそう言うが、鈴音さんの足が動かない!

 恐怖で固まってしまったか!?


「クソッ!」


 俺は玉砕ぎょくさい覚悟で山本さんに向かうが、山本さん上手に身を避ける!?

 彼の最初の攻撃は、絶対に鈴音さんを刺し殺す気満々で有った!!

 鈴音さんも其処まで憎いのか!?


「死ね~~~、鈴音!!」


 山本さんの復讐じみた声が、町中に響く!!


「!!!」


「!!!」


『ドン!』


 鈴音さんが刺される直前、山本さんに目掛けてタックルしてくる人物がいた!

 その人物のタックルは見事に決まり、山本さんとタックルをした人物が共に地面に転げ回る。

 その衝撃でナイフが再び地面に落ちたため、今度はすかささず俺は回収に入る!


「よし! ナイフ回収!!」


 俺は山本さんの持っていたナイフを回収する。


(此さえ回収すれば、山本さんはどうする事も出来ないだろう……)

(最後は手や足を使って来る可能性も有るから油断は出来ない!)


 道の遠くからはパトカーのサイレン音は聞こえており、後数分で到着する筈だ。

 これで、事件は収束に向かうと思うのだが……


「阿呆の正義マンが、僕の行為を邪魔しやがって!!」


 山本さんは、起き上がりながら声を荒げる。


「……いい加減にしてくださいよ。総長いや、孝明さん…」


「……! 敏行!!」

「何故……貴様が、其処に居る!!」


 タックルをした人物は同じ暴走族仲間で有る、元副総長の敏行さんで有った!

 敏行さんは山本さんに話し始める。


「孝明さんが……出所してから、ずっと監視をしていた」

「勿論、俺だと直ぐバレるから、孝明さんに面識が無い人で監視していた」


「……余計な事をするな!」

「敏行…。これは、僕と比叡の問題だ!!」

「お前の出る幕では無い……」


 山本さんは敏行さんにそう言うが……


「勘弁してくださいよ! 孝明さん…!」

「あなたが問題を更に起こすと、俺達までが来る!!」


「前回の件は、総長いや孝明さんの交通事故だけで済みましたけど、今回は完全に常軌を逸脱しています!」

「あの時の時代の様に、未成年で起こす事件では無いのですよ…」

「その辺の部分も理解してから、行動してください」


 敏行さんは山本さんに説教を始めるが……


「敏行! 何だ、急に大人ぶりやがって!!」

「あの時の敏行だって…、比叡を拉致る気、満々で有ったでは無いか!!」


 逆ギレする山本さん。


「拉致…。そうですね……」

「もし、あの時…。孝明さんが事故を起こさなければ、俺と孝明さんは今でも、塀の中で過ごして居るかも知れませんね……」


(拉致!?)

(鈴音さんと逃亡旅行をおこなった時、山本さんは本当に俺と鈴音さんに、と言う拷問を加える気だったのか!!)


(運命は……本当に解らないな)


「……孝明さんの性格上、青柳さんを許す事は無く、絶対に仕返しをする事は分かりきっていたから、機会を覗っていたが……こんな短期間で行うとは…」


 パトカーのサイレン音が間近に成る……

 山本さんは逃げる素振りを見せないし、敏行さんが居るから、俺と鈴音さんにも攻撃は仕掛けて来られない


「……」


 山本さんは鼻でため息をつく。

 やっと、観念したのだろうか…?


 いや、全くしていなかった!?

 俺の方に睨みを利かせながら顔を向けてくる!!


「比叡……」

「僕は絶対に、君に仕返しをする!」


「今回は敏行に邪魔されたが、何時か必ず、君には死んで貰うから…」

「僕の人生を台無しにして置いて、君だけがハッピーライフを送るのは公平では無いからな!」


「君にはと言う公平を与えないと…!」


(この人……本気マジでやばいよ!)

(頭が完全に逝かれてやがる!!)

(俺に鈴音さんをとられたのが、余程悔しかったのか!!)


 話を聞いていた敏行さんは、此処で山本さんに強く言う。


「孝明さん! あなたはもう成人ですよ!!」

「何時までも、暴走族ヘッド時代の余韻に浸っていないでください!!」

「孝明さんがやっている事は、殺人行為ですよ!!」


「僕を見捨てた割には……良く言うね。敏行…」

「何故、そこまで比叡の肩を持つ!?」


「孝明さん…。男女の関係に、俺達を巻き込まないでくださいよ!!」


「話しは全て、知っているんです!!」

「孝明さんの私怨が、全ての原因で有る事が!!」


「あなたの私怨のために、どれだけの仲間が、あなたのために時間をいたのを知っていますか!?」

「青柳さんが道理に反した事をしたとは言い切れないし、孝明さんの面子のためがだけに、あなたは仲間を私物化した!!」


「俺はそれが許せなかった……」

「元総長の女問題で、仲間を足に使った事が許せなかった……」


「あの時に……俺は、気付くべきだったが、俺も族時代の余韻を捨て切れていなかった……」


「……」


 敏行さんが事実を知っている事で、山本さんは反論出来ないで居る。

 孤立無援の山本さんはどうするのだろうか……?

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