第185話 縒りを戻す!? その2

「もしかして……比叡君。真剣に悩んでいるの?」

「私に其処まで未練が有ったの!?」


 稀子は再度驚きながら言う。


「未練は有るさ……」

「稀子が俺を見捨てなければ、俺は稀子を本気で愛した」


「//////」


 稀子は『どうしよう…!』の表情をして、うろたえ始める。


「えっ! えっ!」

「比叡君があんな事した私に、まだ好意を持っていたなんて!?///」

「どうしよう!!///」


「……稀子。やり直すか?」


 俺は此処で、悪魔の言葉を言ってしまう!

 隙だらけの稀子なら、ここで落ちる筈だ!!


 俺は稀子を試してみる……

 稀子は俺を取るか、親友の鈴音さんを取るか……


「う~~//////」


 稀子は頬を赤くして悩み始める……

 俺と稀子……意外に似たもの同士か!?


「やっ、やっぱりダメだよ。比叡君!///」

「私はもう、泥棒猫はしない事を誓った///」


(これ位の言葉では落ちないか……稀子も少しは成長したな)

(本気でやれば、稀子は俺に寝返る。山本さんもこんな気持ちだったのか…)


 鈴音さんの人生を滅茶苦茶にするなら、稀子と関係を完全に修復させるべきだが、俺はそれを出来る人間では無い。

 それが出来る人間なら、此処には居ないからだ。


「……稀子。さっきの言葉は気にしないでくれ」

「本当にそんな事をしたら、鈴音さんの心は今度こそ壊れるだろう…」


「……りんちゃん。しっかり者だけど、少し心が弱い部分が有るからね」

「比叡君…。こんな私でも、まだ好きで居てくれて、ありがと❤」


 稀子は笑顔で言う。稀子とは、仲良い親友で居たい。

 これ以上……鈴音さんを悲しませる事はしたくは無い。


「さて」

「比叡君の状況と気持ちも知る事が出来たし、今度は鈴ちゃんの部屋に行くね♪」


 稀子はそう言って、クッションから立ち上がる。


「比叡君が押しの強い人だったら、私は比叡君にこの場で……大人の関係にされたかもね!///」


 稀子は恥ずかしそうに言う。


「俺にそんな度胸が無いのは、以前から知っているだろ。稀子…」


「そうだね♪」

「スケベな割りに小心者♪」

「それが、比叡君!!」


「そんな比叡君が鈴ちゃんを彼処まで怒らせたのだから、鈴ちゃんにとってはだったんだね!」


(卑猥の言葉を言えば、稀子だって怒るはずだが……これは言わないで置こう)


「それだけ……鈴音さんは俺に対する期待が大きかったんだよ」

「俺だって、鈴音さんとの将来を考えているのに!」


「うん。うん。比叡君の気持ちも分かった!」

「今度は鈴ちゃんの言い分を聞いてみるよ!!」


(鈴音さんは稀子に言うのだろうか!?)

(俺が卑猥の言葉を発した事を!?)


 鈴音さんの性格上、言わないはずだが、言われたら俺は不利になるだろう。


「じゃあね。比叡君!」

「おやすみ~~」


「あぁ、お休み。稀子」


『パタン!』


 稀子は部屋から出て行き、鈴音さんの部屋に向かったのだろう。

 何かをやる気は起きなかったので、俺は布団を敷いて寝る事にする。


(明日に成って……鈴音さんの機嫌が直る訳は無いよな)

(本当に、あの時の鈴音さんは怒っていた)


(俺が直ぐに保育士に成るのを諦めた事と、卑猥な言葉を発言した事で……)


(謝っても、素直には許してはくれないだろうな)

(鈴音さんが納得する道筋を、俺が提示しない限り……)


 俺は今後の事を考えながら、眠りに就いた。

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