第171話 大雪が降った有る日…… その1
この地域は雪が降る地域では有るが、根雪に成る程、雪が降る地域では無い。
しかし、冬の時期に何回かは、大型寒波が来襲するので、その時には纏まった雪が降る。
大雪に成る前日……
全員での晩ご飯後。冬の時期だけ有って寒いので、晩ご飯後でも全員が、居間で夜の時間を過ごす。
テレビ画面には天気予報が流れている。
明日の天気は一日中、俺達の地域天気は雪マークが付いていて、かなりの降雪が予想されていた。
「今年、初めての大雪に成りそうだね~~♪」
「実家を思い出すよ~~♪」
明日は大雪に成る恐れが有るのに、陽気な声で言う稀子!
『実家』のキーワードから、稀子にとって雪はへっちゃらなんだろう。
「雪か……明日もアルバイトが有るけど、サボる訳には行かないしな…」
俺のアルバイト先は、公共交通機関(バス)で行っている。
バスが運休に成る程の大雪が降れば別だが、運休に成る程大雪が降ったら大事で有る。
それにバスが運休に成ると、鈴音さん達も学園に通えなくなる。
「おばさんの家は庭も有るし、久しぶりに雪だるまでも作ろうかな♪」
稀子は大雪を期待して、雪が降った後のプランを考えている。
「稀子…。気が早いぞ。ねぇ、鈴音さん!」
「はい…。雪が降って喜ぶのは小学生までです…」
鈴音さんも辛口の言葉を言う。
お正月の時に鈴音さんは、俺と稀子に不信感を抱いて、少し拗ねた事が有った。
真理江さんの言葉で、その場は落ち着いたが、それ以来……鈴音さんは稀子と距離を少し開ける様に成ってしまった。
稀子はその事に気づいて無いのか、普段通りの接し方をしている。
それとも、気付いていて、その様な態度を敢えて取っているのか?
「比叡君も、
「そんなのだと、つまらない大人に成ってしまうぞ!!」
稀子は少し、興奮気味で反論する。
(稀子が、子ども過ぎるのだと思うが……)
その日の夜は、そんな感じで過ぎていった……
俺も雪を喜んだのは、中学生までだった……
☆
翌日の夕方ごろ……
アルバイトをしている途中から、雪が本格的に降り始めたのは知っていたが、アルバイト先を出た時に改めて見たら、アルバイト先の駐車場には5cm位の雪が積もっていて、更に積もりそうだった。
俺は長靴ではなく、普通の運動靴で有ったため、これ位の雪の量に成ってくると、靴に雪が染み始める。
俺は車の
少し歩くと幹線道路で有る、国道に出るが交通量が有る所為か、道路上の雪は殆どが溶けていて、シャーベット状に成っていた。
(この状態なら、大きな遅延も無いだろう…)
バスは何時もの時間より、5分位遅く来たが、この天気の中なら十分に速い方で有る。
この日は問題無く、家に帰る事が出来そうだ。
無事に家前のバス停に着き、俺は真理江さんの家に戻る。
玄関を開けると、今日は雪の影響も有るだろうか、家の中が凄く暖かく感じる。
(今日の食事当番は、鈴音さんだったよな…。何が出るんだろ?)
鈴音さんの得意料理は、クリームシチュー等の煮込み料理系で有る。
そう考えると……シチュー系かなと思いながら、台所に入ると良い意味で、期待を裏切られた!
「あっ、比叡君が帰って来た!」
台所に入ると、鈴音さんと稀子が居た。
最初に声を掛けてきたのは稀子だった。鈴音さんはシンクに居て、野菜等を切っている。
稀子は鈴音さんの手伝いをしているかと思ったが、そうでも無さそうだ。
「比叡君! 寒かったでしょ!!」
「温かいお茶でも、淹れて上げようか♪」
稀子は笑顔で言う。
此処は稀子の好意に甘えたいが、鈴音さんがまた拗ねると厄介なので、此処は適当な理由を付けて断わる。
「さっき……自販機で缶コーヒー飲んだから大丈夫!」
「そう…!」
鈴音さんが拗ねない内に、俺は声を掛ける。
「ただいま。鈴音さん!」
「お帰りなさい。比叡さん!!」
俺は鈴音さんに声を掛けながら、晩ご飯のおかずを見てみると……それは、鍋だった!!
「今日は、鍋?」
「はい! そうです!!」
「比叡さんの事ですから、シチューだと思っていたでしょうが、雪が降る夜はお鍋も良いです!!」
鈴音さんは無邪気な笑顔で言う。
久しぶりに見る、無邪気な姿の鈴音さん。
普段から、こればっかりだったら、もっと嬉しいのだが……
俺は稀子がなぜ、手伝いもしないのに台所に居るのが不思議に思った。
俺は稀子に理由を聞いて見る事にする……
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