第154話 鈴音さんの母親 その2
エレベーターに乗り込んで、涼子さんの部屋に向かう。
数分で部屋に到着して、鈴音さんは玄関の横に付いて居る、インターホンを鳴らす。
『ピンポーン♪』
鈴音さんがインターホンを押すと、直ぐに涼子さんが応答する。
『いらっしゃい、青柳さん。鈴音!』
『鍵は開いているから!』
涼子さんは元気な声で言う。
俺と鈴音さんはそれに従い、涼子さんの家に入る。
玄関に入ると、直ぐに涼子さんが出迎えてくれる。
「こんにちは! 青柳さん!!」
「お久しぶり♪」
「そして、おかえり。鈴音!」
「さぁ、二人共。部屋に上がって!!」
俺と鈴音さんは、凉子さんに部屋を案内される。
涼子さんの家には初めて上がったが、3LDK位の広さは有るだろうか?
(1人暮らしにしては少し贅沢な気もするが、前の家と比べたら、それでも狭いのだろうな?)
鈴音さんの元実家の事は、本人が余り話したがらないので詳細は不明だが、かなりの大きさ何だろう……
俺の中では豪邸を想像するが、実際はどうだったのだろうか?
「二人共。其処のソファーに座って、今、お茶の用意をしますから!」
涼子さんも鈴音さんの様に軽い口調で言う。
鈴音さんも、我が家に帰って来たかの様な、寛いだ表情をしていた。
我が家には違い無いが……
お茶が来るまでの間、俺は鈴音さんに話し掛ける。
「ねぇ、鈴音さん?」
「はい。何でしょうか!」
「結構、良い部屋の感じはするけど、これって買ったの?」
「うん?」
「どうでしょうね?」
「このマンションは、本家の人達が管理をして居る物件ですから、私では判りませんね」
「あ~~、此処も本家絡みか…」
「
「……ですね」
「けど……私達は、直接の関係では無くなりました」
「父は婿で無く成り、本来の名義に戻して、事業を継続しているそうですが、かなり縮小したとお母さんから聞いてます」
「本家の人達は、私とお母さんを可哀想と感じたのか、色々と支援はしてくれてますが、それだけの関係です…」
「けど、鈴音さん!」
「本家が色々、手助けしてくれるからには、本家は見返りを求めているのでは無いですか!?」
「幾ら、可哀想と言っても、見返り無しで、支援する人は居ませんよね?」
「う~ん。見返りですか……」
「私の祖父や祖母が、見返りを返している可能性は有りますが、少なくともお母さんは、そんな行為をして居ない筈です!」
「あっ!」
「涼子さんの両親が居たか!?」
「それなら話が繋がる……」
「あら! 熱心に話をしているわね!!」
「お茶の用意が出来たわ!」
涼子さんが、お茶の用意をして戻って来た。
お茶を配膳して、涼子さんもソファーに座る。
「では、どうぞ!」
「ありがとうございます」
涼子さんが用意してくれたお茶を、俺は頂く。
(あっ、美味しい!!)
(鈴音さんのお茶も美味しいけど、涼子さんの淹れたお茶も美味しい!)
鈴音さんが淹れるお茶は、母親譲りだろうと俺は気付いた。
涼子さんも、お茶を一口付けてから、話し始める。
「少し……二人の会話を聞いてしまったけど、青柳さんは美作家に興味が有るの?」
涼子さんが突然聞いてきた!
小声で鈴音さんと話していたが、涼子さんにも聞こえていたようだ。
「えっ!?」
「あっ……興味程では無いですが色々、大変な事が起きてましたので、それで……」
「まぁ…、大変と言えば、そうでしたわね!」
「鈴音には黙っていたけど、元夫からのDVや経営不振……。本家の人達に目を付けられたり、普通の人なら興味を持って当然よね!」
「はっ、はぁ……」
「けど……皆さんの御陰で、全てが解決したわ!」
「私の両親が……青柳さんの言う通り、かなりの見返りはしたけど、その事も有って、美作家に力は殆ど無いわ」
「有るのは、本家が経営している企業の株券や、僅かな土地位しか無くなってしまったわ!」
「このマンションも、本家の温情で格安賃貸だし、私の場合、本当に生かされて居るだけと言った方が良いかな!」
涼子さんは陽気な声で言う!?
えっ、それで良いの!?
涼子さんは離婚が出来て、今手元に有るのは、元夫からのお金だけしか無いの?
「鈴音……。あなたは私唯一の、子どもに成ってしまったわ!」
「元夫からの財産分与等で、鈴音を大学までは通わせる事は出来るけど、その先は鈴音自身の力で、どうにかして欲しいの…」
「けど、これは……今する、会話では無いね」
涼子さんはそう言うと、お茶を飲む。
(涼子さん自身は、財産が無いと見た方が言い訳か!)
(それなら、公立の大学に進学させれば良いかも知れないが、今からでは間に合わないか……)
私立大学の学費も馬鹿に成らない。
4年間通うと成ると、かなりの金額が必要に成ってくる。
(これは普通の面談では、終わりそうでは無いな……)
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