第141話 クリスマス・イブと言えば…… その1

 季節も12月に入って、あっという間に時が過ぎていく……

 気付けば、明日はもうクリスマス・イブで有った。

 鈴音さんや稀子は、明日の午後から冬休みに入る。


 鈴音さんや稀子は本来、受験生に成るのだから、冬休みなんて有っても無い様な物だが、鈴音さん達は推薦を貰っているし、学園系列の大学だから、ややこしい試験等をしなくても良いらしい。この辺が私立学園の良い所で有る。


(しまったな……すっかり、忘れていたな…)


 俺は明日が、クリスマス・イブだと言うのに、鈴音さんへのクリスマスプレゼントの準備を全くしていなかった。

 鈴音さんは俺に物をねだってくる人でもないし、鈴音さんに特別な趣味が有る訳でも無い。


(釣りもあれ以来は、していないからな…)


 先月の終わり頃…。海釣り公園で釣りデビューをした鈴音さんだったが、それ以降は余り関心を示さなかった。

 時期も冬の時期に入って、この近海は海釣り公園でも波は荒いらしいし、幾ら貸し竿が有っても、軽装で釣りを楽しむ時期では無い。


(けど……何も、渡さないのも不味いよな!)


 俺は今日。偶々アルバイトを休暇にしたので時間は有る。


(鈴音さん、稀子が学園の間にプレゼントを買いに行くか!)


 俺は急遽、鈴音さんのクリスマスプレゼントを買うために、市街地に向かう事にした。


 ……


 本当の地方都市だが、運が良いのか悪いのかは判らないが、駅周辺に女性向けのアクセサリーショップが有ったので、俺は其処に入ってペンダントを買う。

 買ったペンダントは、雪の結晶をモチーフにしたシルバーペンダントだった。

 時期も冬だし、不思議と鈴音さんのイメージと重なったのでこれにした。


 俺はアルバイトの身分だし、金銭的にも余裕は無いので、福沢さんが数枚で済む、このペンダントを買ってプレゼント用に包装して貰う。

 鈴音さんがペンダントや装飾類を、積極的に付けて居る場面を余り見ないが、その辺を深く考えずに買ってしまった…!


(鈴音さんの性格からして、拒否される事は無いと思うが、喜んで貰えるかな…?)


 元々、言葉遣いや仕草からして、お嬢様の雰囲気は感じては居たが、その容姿は見掛けでは全く出ていなかった。

 本当にゲームや漫画に出て来る様な、質素な美少女で有った。

 服装も高そうな感じのする服は無さそうだし、今有る物を工夫して、暮らす人にも見える。


(何も、渡さないよりかはマシだ!)


 俺はそう思い、用事も済んだ事から、家に戻った……


 ☆


 今日は、クリスマス・イブ。

 真理江さん、鈴音さんや稀子、俺の四人で今夜はパーティーが行われる。

 何時もより少し早めにアルバイトが終わって、俺は家に帰ってくると学園から戻って来た、鈴音さん稀子が、今夜の準備を進めていた。


 今夜のメニューは事前に決まっていて、鈴音さんがクリームシチュー、玉子サラダを担当して、稀子がフライドチキン代わりに、鶏の唐揚げとフライドポテトを担当らしいが、その前に……二人共同でクリスマスケーキを作っていた!

 それを見た俺は二人に声を掛ける。


「凄いね…。クリスマスケーキまで自分らで作るんだ!」


「比叡君!」

「作ると言っても、市販のスポンジケーキをデコレーションするだけだよ♪」


 稀子は生クリームを泡立て器で掻き混ぜていた。

 稀子はそう言うが、生クリームや苺などのフルーツ。サンタさん類の飾りを用意するだけも結構大変だろう……


「比叡君は知らないだろうけど、私はね生クリーム。控えめな甘さが好きなの♪」

「最近のケーキも甘さ控えめだけど、私好みで調整出来るのが良いね♪」


 稀子はそう言って、ホィップしたばかりの生クリームをスプーンですくって、味見か摘まみ食いをしている!?


「うん、この味だ!!」

「ミルクの風味と甘さのバランスが絶妙~~♪」


 稀子がそう言う中、鈴音さんは台所で、ケーキに挟んだり乗せたりするフルーツを用意していた。


「鈴音さん、稀子!」

「俺にも手伝える事は無いかな?」


りんちゃん!」

「比叡君に手伝って貰う事有る?」


「……今のところは大丈夫ですね!」

「時間もまだ、余裕が有りますし」


「比叡君がどうしても手伝いたければ、手伝っても良いよ♪」


 稀子はそう言うが俺は美的センスが無いし、無理して手伝わなくても良いかと俺は感じる。


「じゃあ、俺は一旦部屋に戻るね」

「何か有ったら呼んでね!」


「うん、分かった~~♪」


「はい! 比叡さん!!」

「手伝って欲しい事が有りましたら、連絡します」


 俺はそう言って部屋に戻る。

 今夜はクリスマスパーティーだから、夜の勉強は多分出来ない。

 今の内に少しでも勉強を進めておこうと思い、俺は机に向かった……

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