第139話 夜食 その2
(頭の黒い
カップ焼きそばを仕舞って有る、戸棚の扉を俺は開く!!
「おぉ! 有った!!」
俺は以前、1個食べた覚えが有るが、戸棚にはまだ5個残っていた!
みんながそれぞれ食費を出し合って、この家の食事は回っているが、カップ麺等のインスタント食品は、各自の自発的な備蓄と成る。俺の酒代に関しては、食費とは別支払いで有る。
真理江さんや鈴音さんは、カップ麺等は殆ど食べない。
お菓子類も、みんなで食べるお菓子は食費から出るが、個人で食べたい・食べるお菓子類は各自持ちで有る。
このカップ焼きそばは、名目上共有物だが、実質俺と稀子の物で有った。
(これからは寒い時期に入るし、インスタント品や冷凍食品を買いそろえないと行けないな…)
俺はそう思いながら、夜食でカップ焼きそばを食べる準備を始めた……
静かにやかんに水を張って、コンロの火を付けて準備を進めていると……
「……稀子さん!」
「また、摘まみ食いですか?」
「!!」
俺は急に声を掛けられてびっくりするが、その人は稀子と言ったし、この声は鈴音さんだ。
鈴音さんは稀子をびっくりさせるつもりで、足音を立てずに来たのだろう。
「あっ……これは、比叡さんでしたか///」
「驚かせて、すいません///」
鈴音さんは俺だと気付いて謝りだす。
「あっ……これは、起こしてしまいましたか、鈴音さん…?」
「少し……小腹が空いてしまいまして」
俺はパジャマ姿の鈴音さんに声を掛ける。
「……私はてっきり、また稀子さんが摘まみ食いに来たのかと…」
鈴音さんは俺ではなく、稀子が台所に居ると思ったらしい。
「鈴音さん。……稀子も良く来るのですか?」
「最近は来ていませんでしたが、比叡さんに夜食を出していた時は、良く来ていましたね!」
俺に夜食を出していた時は、簡単に食べられる物が、冷蔵庫や冷凍庫に常備されていた。
しかし、今はそれが無いので、稀子も来たくても来られない。
また間取りの関係上、鈴音さんの部屋が台所に一番近かった。
「……比叡さんは、この時間から夜食ですか?」
鈴音さんは、俺が準備しているカップ焼きそばを見つめながら言う。
「はい……今晩は、どうしても我慢出来なくて」
「そうですか!」
「では、お休みなさい…」
鈴音さんはそう言って部屋に戻ろうとするが、俺は不思議と鈴音さんを誘って見たく成った。鈴音さんはカップ麺を食べたがらないからだ!
「どうです。鈴音さん?」
「一杯、すすっていきませんか?」
「あれ? ……これは何て言えば良いのだろう、焼きそばだから一皿か?」
「私も……この時間からですか??」
「う~~ん、……」
鈴音さんは困った表情をして悩み始める。
鈴音さんも女性だから、色々と悩みが有るのだろう…?
「比叡さん。実は……カップラーメン類は殆ど食べた事が無いのです!」
「焼きそばも、孝明さんの作った焼きそば以外は、好んで食べませんでしたし……」
(此処まで来て、まだ山本さんの名前が出て来るとは、鈴音さんも中々、思い残している部分が多いのだな……)
俺は正規のルートで、鈴音さんと恋人関係に成ったのでは無いからだ。
展開良く、お互いが興味を示し始め、俺は鈴音さんと一気に関係を深めて、敵役に成る山本(孝明)さんが、本当に偶然良く事故に起こしてくれて、更には18ヶ月の禁固刑に成った。
邪魔者もめでたく居なくなり、元恋人の稀子も含めて、静かな町の1つ屋根の下で、新たな生活が始まり……今が有る。本当に小説の世界だ!?
これがリアルな現実だったら……山本さんに撲殺されて、俺の人生はBADENDだった筈だろう……
鈴音さんが山本さんを払拭出来ないのは、彼女自身の本当の優しさか、今起きている現象に疑問を感じて居るかの、どちらかだろう?
(そんな事を考えても意味無いか…。とにかく、1日でも早く、鈴音さんの中から山本さんを
「鈴音さん!」
「最近のカップ焼きそばも、本当に美味しいのですよ!」
「これを機会に、挑戦してみたらどうですか?」
「釣りと同じ様に初体験ですよ!!」
乗り気ではない鈴音さんに、俺は興味を示させる様な発言をする。
「けど……体にも悪そうだし…」
「う~ん…」
鈴音さんは本当に真剣に悩んでいた!?
正真正銘のお嬢様!?
これ以上は無理に誘うつもりは無いが……、鈴音さんはやはり元とは言え、美作家のお嬢さんだと再認識させられた……
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