第125話 甘え始めた自分…… その2

「……無事に休暇が取れるかは判りませんが、明日にでも、上司に相談してみます」


 俺はそう言うが、アルバイトの身分だから休暇は必ず取れる。

 自分の将来が不安の中で、波津音市はずねしに行きたくないとは、言える状況では無かったからだ!


「無事に取れると良いですね、比叡さん!」


 鈴音さんは、優しく微笑んでくれる。

 俺は鈴音さんに嘘を付いてしまった!


「おかしいな…?」

「私が前聞いた時は……好きな時に休めるのが、アルバイトの良い所と聞いたような…?」


(稀子はまだ俺の事を疑っているが、もう知らん。無視しよ!!)


 真理江さんからの報告が終わると、普通に晩ご飯が始まり、時が過ぎていく……


 ……


 今晩は先ほどの焦りからか、真面目に保育士資格取得の勉強をしている。


「ふぁ~~~」

「明日もアルバイトが有るし、ここで切り上げるか~~」


 俺はスマートフォンで時刻を確認すると、大分の時間が過ぎていた。

 お子ちゃまの稀子は、とうの昔に夢の中だろう……


「今日は少しだけ、頑張れたな!」

「明日も……この調子だと良いのだが…」


 俺は事前に敷いて置いた、布団に潜り込もうとした時……


『♪~』


 SNS、Railの通知音が、スマートフォンから鳴る。


「この時間に誰だろう?」


 俺はスマートフォンを操作すると……


『比叡さん』

『今から、そちらにお邪魔しても良いですか?』


『稀子さんには、気付かれたくないので……』


 なんと、相手は鈴音さんだった!


「俺は大丈夫です!」


『では、今から伺います!』

『稀子さんには、気付かれないように静かに向かい、ドアのノックもしません』


 俺が返信をすると、直ぐにその様なメッセージが来る。


(どうしたのだろう?)

(鈴音さん……こんな時間に??)


(だけど、鈴音さんにとっては、大事な話に違いない!)


 俺は今までの、鈴音さん行動パターンから分析をする。

 真面目な鈴音さんだから、今晩中に片付けたいのだろう。


 俺は敷いていた布団を半分に畳んで、クッションを準備する。

 飲み物は部屋の中には無いし、今から準備をするのも無理だから諦めるしか無い。


 俺はドア越しに、鈴音さんが来るのを待っていると、静かにドアのノブが回る!

 何だか……山本悪夢を見た時を、思い出すような感じで有った!?

 ソロリとドアが開いて、鈴音さんが入ってくる。鈴音さんの姿は、オレンジ系のパジャマ姿で有った。


「今晩は……比叡さん…」

「夜分遅くにすいません…」


 鈴音さんは、稀子を警戒しているのか小声で言う。

 俺も小声で返事をする。


「俺は大丈夫です!」

「先ほどまで、勉強していましたから」


「それにしても、忍者顔負けの忍び足ですね!」


「私は、静かに来ただけですよ!」

「稀子さんはな所為か、少し歩く音が大きいですが…」


 確かに、稀子の歩く音は少し大きい気がする。


「では、失礼します」


 鈴音さんは小声でも、礼儀正しく言って部屋に入り、静かにドアを閉める。

 ドアを閉じれば、普通の声で喋っても大丈夫だ!


「急にどうしましたか?」

「鈴音さん?」


「はい…。晩ご飯時の事が、少し気に成りましたので……」


(やっぱり、鈴音さんも勘づいていたか!)


 俺が休暇をほぼ、理想通りに取れる事を、以前二人に話したからだ。

 俺は鈴音さん、稀子に『俺は時間の融通が聞くよ!』と、アピールしたかったからだ。


「それでどうしても、気に成ってしまい、この時間ですが来てしまいました…」

「少し、お話ししませんか?」


 鈴音さんから出て来る言葉の予想は出来ていたが、それでも、妙に緊張してしまう俺で有った。

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