第113話 鈴音の本音 その1 

 ……


 俺の怪我が完全に治ったその週の週末。

 俺は今日。鈴音さんの本音を探り出すために、俺の家に鈴音さんを呼んでお家デートをしている。

 お昼ご飯は俺の台所を使って、鈴音さんが手料理を振る舞ってくれる様だ。

 いきなり本題に入る訳には行かないので、初めの内はお互いの生活話をして場を和ます……


「それでね、鈴音さん―――」


「へぇ~、やっぱり、―――」


 トークを初めて30分位が過ぎた所…。お互いのお喋りが熱く成って来ている。

 普段の会話ではしない、鈴音さんの秘密話見たいのもしてくれている!

 これだけ暖機運転をすれば鈴音さんの、心の奥底が開いているだろう……


「鈴音さん……」

「此処で、1つ聞きたい事が有るのですか?」


「何でしょうか、比叡さん!」


 鈴音さんは警戒する事無く、俺の聞きたい事を聞いてくれる様だ!

 今がチャンスだ!!


「鈴音さんは……どうして、山本さんを好きに成って、更に山本さんから俺に乗り換えたのですか?」


「えっ///」

「それが……比叡さんの知りたい事ですか///」


 鈴音さんは当然、恥ずかしがる。


「鈴音さんは山本さんのお母さんを、お母様と呼んでいる関係です」

「それなのに山本さんに見切りを付けて、俺と関係を深くしたのは、俺的には嬉しいのですが、少々疑問に感じまして……」


「……」


 鈴音さんは無言でお茶を飲んで、静かにカップを置いてから、目を瞑り出す。

 鈴音さんの中で考えを纏めているのだろうか?

 1~2分位すると、鈴音さんは静かに目を開けて話し出す……


「私が…、孝明さんに好意を感じたのは以前、比叡さんにお話した通りです」

「……頼り甲斐が有る男性が、輝いて見えた時期が有って、丁度その中に孝明さんがはまり込んだのです」


「……」


「孝明さんが暴走族を作ったのも、孝明さんが家業を継ぎたくなかった事が発端です」

「親戚の集いの時に興味で理由を聞いたら、孝明さんがおくすること無く教えてくれました!」

「あの時から、孝明さんは私に興味を持ち始めたそうです……」


「あの時の私は、世の中に抵抗する人物が輝いて見えました…」

「善人の顔をしていても悪い事をするより、最初から悪い事はしているけど、理由が有って悪い事をしている人が、私の中では良いと感じていました」


「……」


「私の家は父が実業家をしており、私は不自由なく暮らしてきました。けど、私は服や物に拘りを持ちませんでした!」

「小学校も私立でしたが、中学(中等部)進学は私がワザと入学試験に落ちて、公立の中学校に進学して、其処で稀子さんと知り合いました」

「稀子さんは見ての通りの性格です。直ぐに仲良く成り今が有ります」


「私の両親は、不合格に成った中等部に裏○入学をさせようとしましたが、私の説得で諦めました…」

「こう言うのも何ですか、私は両親に溺愛されていたのです」

「私以外に兄がいますが、兄は私に興味をあまり感じていません。家業を継ぐのは当然兄に成りますし、私は政略結婚の道具に成るのが目に見えていました」


「……」


「それで、親戚ですが孝明さんと関係が出来れば、私も稀子さん見たいな生活が出来るかなと思い始めて……学園進学が決まった時に、タイミング良く孝明さんが声を掛けてきました」


『美作さん』

『下宿先を探して居ると聞いたよ。僕の所で下宿をしないか?』

『僕の家からなら学園も近いし、僕の母親も喜ぶと思う!!』


「私は進学を機に、自由に成りたいと感じていたのと、通園の関係で下宿先を探していました…」

「でも、私は最初、断わりました…。断わりましたは語弊が有りますが、私の父が反対したのです!」


『幾ら親戚とは言え、社会に迷惑をかけている家に、愛娘を下宿させる訳にはいかん!!』


「私は、父にそう言われてしまいました」

「私はその部分は敢えて、孝明さんには伝えなかったのですが、孝明さんは急に暴走族を解散させて、家業を継ぐのを決めました!」

「あの時の孝明さんは、私にこう言いました」


『鈴音ちゃん』

『僕、真人間に戻るから!』

宿のは君の口からだが、下宿自体を拒否したのは誰だか判るから…』

『まだ、4月までは時間有る。何度でも、君の両親を説得してみせるよ!』


「孝明さんは、そう仰いました……。その時に私の中で、孝明さんが1人の男性に見え始めたのです……」

「私は推薦入試でしたが、稀子さんは一般入試でした。稀子さんも学園の入園が決まった時に、私は稀子さんに、孝明さんの家に下宿をする事を提案しました」


「……」


「私は実家から、学園には時間が掛かるけど通えますが、稀子さんの場合は下宿をしないと、ほぼ通えない場所に実家が有るからです」

「時間で言ったら、早朝のバスに乗って行く感じです…。稀子さんの地域とも成りますと、バスの本数自体が多くないからです」

「当然、家に戻る時間もそれだけ掛かります。中学時代、私は自転車通学でしたが、稀子さんはスクールバス通学でした」


 鈴音さんは一気の此処まで話して、口が渇いたのだろう。

 冷めた紅茶を一気に飲み干す。


「鈴音さん…」

「鈴音さん達の下宿話は少しですが、山本さんから聞いた事が有ります」

「その後は、無事に決まったんですよね?」


「はい!」

「そうです……。私の両親が反対していましたが、私が稀子さんと下宿する事を孝明さんに提案して、私と孝明さんで両親を説得して、学園に在籍する間は下宿を許して貰えました!」


(成る程……そう言った経緯か…!)

(鈴音さんが山本さんに好意を持った理由は、これで理解出来た!!)


(しかし、かなりの関係だったのに…、鈴音さんは山本さんを見限ってしまった!!)


 俺は少しの疑問が残るが…、いよいよ本題で有る、俺に好意を持った理由を聞いてみる事にした……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る