第79話 大丈夫か……

 俺は鈴音さんと、今後起きそうな問題を話し合う。

 新しい仕事(アルバイト)の事。住処の事。そして保育士の道と……


「このアパートの大家さんが、山本さんの親友ですと、たしかに厳しいですわ!」


「ですので……、このアパートからは退去するしか無いと思うのです」


「分かりました…。住処に関しては、山本さんのお母様と相談します」

「後……これを、山本さんのお母様から預かってきました!」


 鈴音さんはそう言って、A4サイズの封筒を渡してくる。


「これは…?」


「まずは、中身を見て下さい」


「あっ、はい…」


 封筒の中身を確認すると、通信講座の案内がプリントされた物が入っていた。


『通信講座 保育士講座』


「通信講座?」

「保育士講座……」


「比叡さん!」

「通信講座でも道のりは大変ですが、保育士資格は取得出来ます」

「筆記試験や実技試験対策に関しては、私や山本さんのお母様も協力します!」


「まさか……通信講座何て有ったとは、全然気付かなかった!」


「通信講座ですので、保育士養成学校で資格を取得するのと比べれば、難しいのは確かです!」

「でも、私達がサポートしますので、比叡さんなら出来るはずです!」


 鈴音さんは強気の口調で言う。

 本当に俺の事を心配してくれている。


「あれ?」

「まだ、何か有る…?」


 A4封筒用紙の中には、まだ何かが入っている。

 ひっくり返して見ると……更に長方形封筒が入っていた。


(何だろう…?)


 俺は長方形封筒の中身を確認すると……


「!!!」


 封筒の中には現金が入っていた。

 それも数万円では無い!?


「山本さんのお母様からです」

「返すのは、出世払いで良いそうです!!」


 俺は思わず目頭が熱くなる。

 遂1時間前には、山本(孝明)さんに見限られて、稀子に縁を切られて、地獄に突き落とされたのに、今では地上に戻って来られて、天に導く道までが見えて来ている!!


 すると……鈴音さんが立ち上がって、側に来てくれる。


「人間……苦しい時やつらい時は、当然有ります!」

「だからこそ、人は助け合わなければ成りません…」


 鈴音さんは俺を優しく抱いてくれる。

 この感じは、稀子を抱いた時の感触では無く、お母さんが子どもを優しく抱きしめる感じだった……


「鈴音さん……」


「はい…」


「好きです…」


「はい!」


 俺のその言葉で鈴音さんに振り向き、鈴音さんと目が合う。


「んっ…」


 遂に俺は…、鈴音さんに手を出してしまった!!

 でも、鈴音さんも嫌がっては居ない?

 お互いが求めているのだろうか…?


 鈴音さんとのキスの味は……美味しかった。

 稀子は食べ物の味が多かったが、鈴音さんのキスは、ずっとしていたい位だった。

 俺と鈴音さんはしばらく抱き合いながら、キスの時間を楽しんだ……


 ……


「晩ご飯も、私が届けに来ますから大丈夫ですよ!」

「じゃあ、お休みなさい! 比叡さん!!」


「おやすみ~~。鈴音さん!!」


 これ以上、遅くなると流石に不味いので、今日はこれでお開きにする。

 晩ご飯も今まで通り用意はしてくれるみたいだが、稀子が料理当番の時は出来ないため、その時は自分で用意して欲しいとの事だ。


 保育士講座に関しては、明日にでも申し込みを行おう。

 アルバイトは……この町では無理だから、周辺の町に働きに行く事に成るな……


 ……

 …

 ・


「あっ、あっ、そろそろだ……」

「うっ……鈴音~~」


「!!~~~~」


 俺は先ほどの…、鈴音さんの体の感触と、キスの味を思い出しながら自慰を行う。

 絶頂時に先端から吹き出した白濁液は、ティッシュ数枚重ねたのにそれでも足りずに、脈を打ちながら溢れ出していた……


「まさか……鈴音さんを想って、自慰行為をしてしまうとは!」


 稀子を意識して自慰は何回もしたが、こんなに出たのは久しぶりだったし、快楽も全然違った……


「俺の体が、本当に鈴音さんを求めているんだ…」


 1回出したのに鈴音さんを意識すると、また膨張を始める……


(まだ……鈴音さんは、山本さんと関係が切れてないのに…)


 心ではそう思うが、体は完全に求めている。

 本当に鈴音さんと関係を、この先深められるのだろうか?

 山本さんにバレた時は絶対に私刑にされるし、でも、その状態で有った……


 それでも、俺は鈴音さんを意識して、再度絶頂に向かい始めた……

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