【R-15】鈴音編

第73話 急接近

☆鈴音編は『稀子編 第55話 鈴音さんの心情』で、鈴音を引き留めた場合のルートです。

 物語の経緯いきさつに関しましては『稀子編 第53話 いきなり嵐!? その1‐第55話 鈴音さんの心情』を読んで貰えると幸いです。


 鈴音編は【R-15】作品に成ります。

 鈴音編は他編と比較して、暴力シーン・残虐シーン・性虐待シーン・不適切な言葉が描写されます。苦手の方はご注意して下さい。


 この物語は、法律・法令に反する行為を容認、推奨するものでは有りません。


 ☆鈴音編☆


 

「待って! 鈴音さん!!」


「えっ……」


 俺はどうしても……鈴音さんを、山本さんの所に向かわせたくは無かった!

 俺の中では、稀子から鈴音さんに乗り換えたい気持ちが強いからだ!!


「比叡さん……どうして、引き留めるのですか?」

「今、話し合いをしなければ、関係が崩れるかも知れないのに……」


「鈴音さん!」

「今の山本さんは感情的に成っていますし、鈴音さんも口では冷静を保っていますが、心の中では、そうでは無いでしょう!!」


「!!」


「俺は学童保育で指導員していたので、多少でも人の気持ちが分かるのです!」

「お互いが…、今晩だけはゆっくりと、考えて見てはどうでしょうか?」


 俺が鈴音さんにそう言うと、稀子も加勢をしてくる。


「そうだよ! りんちゃん!!」

「比叡君の言う通りだよ!」

「今の状態じゃ、満足に話し合いなんて出来ないよ!」


 まさかと思うが……稀子も俺と同じ考えを持っているのか!


「お二人方が、そこまでおっしゃっるなら、今夜一晩は考えてみます…」

「では……すいませんが、お先にお休みします…」


 鈴音さんはそう言って、2階に自室が有るのだろうか。階段を上っていった。

 しばらくすると……静かに扉の閉まる音がする。


「うん……これで良い」


 稀子は何か、意味ありげな事を言う。

 何が良いのだろう…?


「じゃあ、比叡君!」

「一緒に後片付けをしようか!」


 稀子は俺の方に顔を向けて、いつも通りの笑顔で接してくれる。


「あっ、あぁ……」


 その後…、稀子と一緒に晩ご飯の後片付けをするが、リビングに誰かが来る事は無かった……。俺が鈴音さんに声を掛けた行為は、本当に正しかったのか?


 ……


 翌日以降……


 鈴音さんと山本さんの関係は、すっかり冷え切ってしまった。

 晩ご飯時でも会話はしないし、お互いがすれ違う様に成ってしまった……

 俺にとっては、良い事に感じてしまうが、人としては最低で有った。

 気に成った俺は、稀子に状況を聞いて見ると……


「お互いが、変な意地を張っちゃって、どうしよう無い状態…」

「比叡君が鈴ちゃんを引き留めたのは、失敗だったかも…」

「長期戦確実だね……」


 さらりと、俺が状況を悪化させた様に言う稀子!

 稀子はその様に言うが、稀子も加勢しただろう?


「だから今は私が、鈴ちゃんと山本さんの橋渡し役!」


 そう言う稀子だが、本当にをしているのか怪しかった……

 お店の手伝いも鈴音さんは、本気で言った訳では無かった様だが、山本さんは本気で捉えて『君みたいな、直ぐ刃向かう子に店員は任せられん! うちは客商売だ。時には我慢も必要なのに、直ぐに文句を言う奴は要らん!!』と言い切ったらしい……。この話は稀子経由で聞いた。


 事の発端が起きてから、1週間位過ぎた時……


 俺は思いきって、鈴音さんと話をする事に決めた。

 山本さんと鈴音さんの関係が、まだ恋人関係の可能性も捨て切れないので、山本さんの家で、鈴音さんに声を掛けるのは止めた方が良い!


 今の状況は、晩ご飯時には全員食卓に揃うが、山本さんは食事が終わると直ぐに席を立つ。

 今までは談笑の時間が有ったが、それがなく成った。有る事は有るのだが、山本さん抜きで行われる。

 山本さんのお母さんは『馬鹿息子が…』と言うだけだった……


 それは仕方無いが……稀子も、山本さんの後を時々追う事が有った。

 稀子曰わく『鈴ちゃんの橋渡しのため!』と言うが、俺は疑問を感じまくりだった。

 俺と稀子は正式な関係には成ってないから、稀子が山本さんと恋人関係成っても俺は何も出来ない。


 稀子とはキスをした関係だが、稀子は『女の子同士でもキスはする!』と強く言って、俺とのキスは『あのキスは比叡君を元気づけるため! 親友としてのキス!!』と訳の分からない事を言われる始末で有った……

 以前、稀子を抱きしめた時も『比叡君……、これ以上はダメ…』で終わってしまったが、その後も稀子は、俺を異性として見てくれなかった。


 言うまでも無いが、稀子は近い内に俺を裏切るだろう……

 俺と稀子は親友以上の関係だが、稀子を完全に振り向かせる事は出来ず、鈴音さんが隙を作った瞬間に稀子は、山本さんに潜り込んだ可能性が大きい!

 俺が鈴音さんに声を掛けるのは、決して鈴音さんに好意が有るからで無く、親友として声を掛けるので有る!


 アパートに戻った俺は雑用を済まして、鈴音さんが完全に自室に居る時間を狙って電話を掛ける。

 時刻は22時半を過ぎた時間…。俺は以前、鈴音さんが掛けてきた電話番号で鈴音さんに連絡を取る。


 しばらくのコール音の後……鈴音さんが電話に出る。


「はい…」


「もしもし、青柳比叡ですが…」


「比叡さんですか…?」

「こんばんは」


「はい。こんばんは」


「……私、比叡さんに電話番号教えましたか?」


 俺が番号を知っているのを当然、鈴音さんは不思議がる。


「以前、稀子が俺のスマートフォンで掛けた番号で、鈴音さんに掛けました」


「あぁ、そう言えば有りましたね!」


 鈴音さんの口調はいつも通り丁寧だが、声に元気さが無い……


「鈴音さん!」

「俺があの時、鈴音さんを引き留めてしまって、すいませんでした!」


 俺が鈴音さんに謝罪をする。

 本当は直接、本人の目の前でするべきだが、これ以上自体をややこしくすると、収拾が付かなくなる。


「良いのですよ……比叡さん」

「私も悪いのですから…。比叡さん、丁度ですから、少し相談に乗って貰えませんか?」


 何と、鈴音さん自らが、相談に乗って欲しいと来た!

 これは有る意味、本当にカップルの入れ替えが起きてしまうか!?

 期待しては行けない事だが遂、期待をしてしまう俺だった……

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