第43話 新しい働き場所

 今日は日曜日……


 日曜日は休日の人も多いだろうが、俺は山本さんからアルバイト先を紹介して貰う日で有る。

 山本さんの話では、ほぼ採用見たいだが、一応アルバイト先で軽い面接が有る見たいだから、恥ずかしくない格好で行く事にする。


 午前10時前。

 俺は山本さんの家に向かう。山本さんの家に向かうと玄関口で山本さんは待っていた。

 山本さんは俺の姿を見つけると声を掛けてくる。


「おはよう! 比叡君!!」


「おはようございます。山本さん!」


 俺は元気よく挨拶をすると……


「良いね~~。それ位の元気も有れば、相手先も喜ぶよ!」


 山本さんは機嫌良さそうに言う。


「あの……山本さん。アルバイト先はどんな所ですか?」


「うん。今から紹介するよ!」

「早速行こうか!」


 そう言って……山本さんは歩き出すが、ハ○エースが停めて有る、駐車場の方向には向かわずに道路を歩き出す。徒歩で行ける距離なのかな…?

 歩きながら、山本さんは話し掛けてくる。


「いや~~、比叡君も運が良いよ!」

「近場で、見付かったから!!」


「そうですか…」


「そうだよ!!」

「最初…、紹介しようとした所は、バスと電車を使わなければ通勤出来ないからね!」

「君の家から徒歩10分で仕事場に行けるなんて、君は本当に運が良いよ!!」


 山本さんは上機嫌で俺に言う。

 しかし、アルバイト先に関する情報は何1つ教えてはくれない……

 俺が聞いても、山本さんがからだ!


 本当に他愛の無い話をして、山本さんに紹介されるアルバイト先に向かう。

 しばらくするとスレート屋根の工場が見えて来た。

 規模からして……中小企業だと感じた。工場の側面には企業名が書かれている。


長居ながい鉄工所…?)

(鉄骨でも作っているのか?)


(鉄工所の連想から俺はそう思う)

(しかし、またキツそうな所を選んでくれたな…)


「比叡君。見えるかい…。あれが君のアルバイト先に成るはずの場所だ!」


 山本さんはそう言うが『成るはずの場所だ!』が少し引っかかる。


「決まりでは無いのですか…?」


 たしか、ほぼ採用だと言っていたはずだが……

 しかし、山本さんはこう言ってきた。


「決まりでは無いよ……。相手は、君の本当の素性を知らないからね」

「僕がどれだけ比叡君を褒めようが、相手が比叡君を認めなければ、それだけだよ…」


 山本さんは意味ありげに言う。


「じゃあ、ここの社長に今から会って貰うから!」


 山本さんはそう言いながら、閉じているシャッター側面に有るドアを開ける。


「比叡君も入って…」


「はっ、はい……」


(うっ……機械油臭い…)


 入った瞬間……工場内は、機械油の臭いで充満していた。

 工場内には色々な工作機械が設置されている。

 今日は日曜日だから休みかと思ったが、工場の奥では機械音が聞こえる……


 山本さんは奥の方に向かっていくので、俺も付いていくと在る工作機械の前で中年男性が作業をしていた。


「社長! こんにちは!!」


「おぅ、山本!」

「元気か!


 2人は知り合いなのだろうか?

 気楽に声を掛け合っている。


「連れて来たよ! この前言っていた子!!」


「おぅ。どいつだ!!」


 社長は張りのある声でそう言うので、俺は山本さんの方を見るが、山本さんは首をと向けて『行け!』のジェスチャーをする。


「はっ、初めまして……青柳と言います…」


「んっ……君か。アルバイト希望の子は?」

「思ったより、華奢だな…」


「あっ、はい……」


「社長!」

「話は以前したが…、青柳君は、将来保育士に成りたいそうだ」

「支援してやってくれんか…?」


 山本さんは社長にそう助言しているが、社長は不思議そうな表情をしていた。


「……年はいくつだ?」


「年齢ですか……2xです」


「その年で保育士に成るのか……?」

「大変だな…。覚悟は有るんか?」


「はっ、はい。有ります。僕には大切な人が居ますから!」


「……そうか」

「有る程度は山本から聞いて居るが、出来そうか…?」


「えっ、仕事ですか?」


 俺がそう答えると、社長は不機嫌声で言う。


「……それしかねぇだろ!」

「見た感じ……。現場慣れをしている顔では無いから、一から教える事に成るそうだな……」


 社長はそう言うが、俺の頭の中では全く理解が出来ていない。

 沢山の工作機械が有るから、鉄鋼を作るのでは無く、金属加工の仕事だと思うが、俺はそんな仕事未経験だし……、何をどうやったら製品が完成するのも理解出来ていなかった。


「山本さんから詳細は聞いていませんから、何とも言えませんが頑張ります…」


「何だ!?」

「お前、何も聞いてないのか?」

「おぃ、山本。どういう事だ。説明しろ!?」


 俺がアルバイト内容を理解していないので、社長は苛立ちを山本さんにぶつける。


「社長……。彼に詳細を教えると逃げると思ったんですよ…」

「今も、彼の顔を見れば、凄く不安そうな顔していますからね」


「今の彼は自分の意思よりも、他人からの意志が強い状態なんです!」

「その辺を理解して貰えると……」


「山本。そうでもよ……せめて仕事内容ぐらい教えろや!」

「こっちが、一から説明せんとあかんやろ!!」


「すんません。社長…」


 山本さんはそう言いながら頭を下げる。

 どうやら、社長はご立腹の様だ……。俺のアルバイト先は果たして決まるのだろうか……

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