UNKNOWN 1

にゃちる

第1話

大人になると節目節目でふと過去を振り返る瞬間がどんどん増えてくることに最近気がついた。


私が振り返る過去はいつも悲しくて寂しい過去。


小学校の頃だったか。

私はいつも誰かの後ろをついてまわってた。


誰かの横顔をより誰かの背中の方が思い出せる。

楽しかった。

ただ何も知らなかった。


その感覚が一瞬でひっくり返ることもあるんだと。

私は誰よりもよく知ってる。


私にとってどれだけの影響力を持っていて私の中で何よりも’’母”が全てだった。

たった一言。

物心着いた子にはなんでもない言葉でも、そうじゃない子には深く心を傷つけた。

私はただその傷の治し方も知らないただの子供。


薬も塗られないままかさぶたで無理やり傷口を塞いでいただけ。


そこに触れようともせず…

いゃ、そんな傷があること自体私は気づいてなかったのかもしれない。

もしその傷に母が気づいてくれて目を止めてくれてたら。

かさぶたを剥がせば意外と綺麗に傷跡も残ってない肌が見えたかもしれない。

でも、ずっと私の中では傷口はぱっくり開いたままだったんだろう。


今でも気づいてなかっただけだと思っている。

でも本当は気づいていたとしたら。


ただ、直視したくなかっただけなのかもしれない。

直視した結果がどうなるかなんて分からない。

何も思わないかもしれない。

答えなんてでないかも。


それより、私がどうしてこんな怪我をしたのか。

どうしてしなくちゃいけなかったのかさえ分からなかった。

分かりたくなかった。


心にぽっかり空いた穴にモヤモヤして。


このモヤモヤがどこから来ていて何が原因なのか。

自分の中にある傷口だって事も気づけなくて。

何もわからなくてただ、ひたすらもやもやを募らせる日々。


ただただ、下を向いて自分の動く足を自分のものじゃないかのように見つめながら、ただ帰りたくない。家族みんないなくなっちゃえばいいのに。


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