想い想う

成瀬 慶

第1話 片瀬

「正吾(しょうご)、何見てるの?」


隣の席から甲(こう)に突っ込まれて

俺は少し頬を赤らめる


また見ていた


気が付くと俺は

いつも彼女を見ているようだ


彼女はクラスでも一際

大人しい子で

いつも一人でいる


うちのクラスの他の女子は騒がしいから

気の合う奴がいないのかもしれない


いつも本を読んでいる


どうしてだろう?

俺はいつからか

彼女を見てしまうようになってしまったんだ


失礼な言い回しになるけど

彼女は特別に美人ではない

だけど

彼女に惹きつけられるんだ


甲に言われた


「正吾ってさ

あいつ

片瀬(かたせ)の事が好きなの?」


俺は即答できなった


それは

彼女の方の問題では無く

俺の問題で・・・

問題とは

この思いが”恋”なのか?

よく分からなかったからだ


恋は未経験ではない


実は俺には彼女がいる


彼女は21歳大学生

バイト先のファミレスで出会った


半年前から付き合っている


年上の彼女は

バイト代をコスメや洋服にかけてしまい

いつも給料日前には

年下の俺から呆れられながら

飯をおごってもらう様な人で


彼女のそういう

俺よりも年上のくせに幼く見える所も可愛らしく感じていて


出会ってすぐに気になり始めて

彼女から


「私、正吾の事が好きなんだけど・・・」


と疑問形のような告白を受けた時には

既に射貫かれていて


俺は彼女にしっかり恋をして付き合い始めたんだ


だから

片瀬さんへの気持ちは

恋?

ではないと思いたいんだ


俺は彼女の事は知らなくて

この学校内で見ている彼女の

なんとなくの雰囲気を全てとして見ているわけで

見てしまう理由は

そこでは見つかりようも無いもので


甲に言われた


「片瀬の事

書き出してみたら?

そしたら

自分の気持ちが分かるのかもよ」


そんな事を言われて


俺は素直に書いてみることにした



眼鏡が真面目そう

本を読んでいる

授業中ノートを取らない

制服をちゃんと着ている

髪の毛を綺麗に束ねている

髪の毛が少し茶色

肌が白い

指が細い

たまに遠くを眺める

眼鏡をはずすと目を細める

優しそう

笑わない

寂しそう・・・ ・・・


俺の手が止まった時には

ノートのほとんどが埋まるくらいに

片瀬で一杯になっていた


自分でも驚くほどに

片瀬は俺の中に居たんだ




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