小絵ss

ある秋の寒い日のこと。

花咲小絵は、毎日の習慣になっている落ち葉かきをしていた。


「今日はまた一段と寒いね・・・」

小絵は、悴んだ手に息を吹きかけながら誰にともなく呟くと、神社の境内に昔から生えている、立派な紅葉の木を眺める。

「紅葉って綺麗なんだけど、厚化粧みたいで好きじゃないって、前にハルちゃんが言ってたっけ」

小絵は先日深春が言っていたことを思い出して微笑む。

本人曰く『深春理論』なのだそうだ。

「そう言うこと考えるのがハルちゃんっぽいよね・・・」


小絵は呟いて、もう一度紅葉の木を見上げる。

「私はわりと好きだな、この色も」

小絵は再度手に息を吹きかけると、落ち葉かきを再開した。

そんな小絵の小さな努力など露知らず、秋風は無情にも落ち葉を舞い上げていく。

「あ、また飛んじゃったや・・・」


今日も作業が終わるまで時間がかかりそうだった。

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