デメリットしかないスキルで生きていく

@teteoran

第1話 異世界転移

「~であるからしてx=3と8になります。」


「後でカラオケ行こうぜ」


「なら、メンバーよんでおくわ」


 いつもの風景が繰り返される日常。

 はぁ、早く帰ってベットにダイブして寝たい。授業も聞かず、外に立ち登る煙突雲を眺めていた。

 急に煙がぼやけて見える。青空に白い煙のコンテクストが好きだったのだが。目が疲れたのかな。慌てて目をこするがピントは合わない。

 急に視力が落ちたのだろうかと不安になる。安心感を求めて、つい癖で首につけたペンダントを見つめようとする。不安のときにペンダントを見るのが癖なのだ。

 しかし、ペンダントに向けた意識の代わりに手から消しゴムが零れ落ちる。消しゴムは床に跳ね落ちた。拾おうと向けた手の隙間からネオン色の線が床に広がっていくのが見える。それはクラスメイト達の足元を通りながら、やがて一つの魔法陣のようなものを形成していく。魔法陣は幼馴染の静を中心に形成されているように見える。


「あっ」


瞬間、魔法陣は急速に回転し、意識は遠のいていくのであった。


 目が醒めると周りにものがなく、不気味なほど真っ白な空間が続いている。長時間寝ていたせいか、疲労感からふと腰を下ろす。とりあえず3-5組全員いるはいるがそれ以外は何もない。服装も制服で、これは意識を失う前と変わっていないようだ。縛られている人などもいなく、意識を失ったまま、ここに連れてこられてたと考えるのが妥当だろうか。他の人もこの状況を呑み込めないのか、周りを見回していた。そんな中、一人の男がいきなり怒声を飛ばす。


「おい、どういことだよ。早く出せよ!」


 粗暴な口調の彼は、阿久津大毅。制服も着崩し、金髪にピアス。いかにも不良といった相貌だ。俺は正直、こいつのことが大嫌いだ。


「・・・」


 何も反応はない。場は再び静寂に包まれた。


「これって誘拐...」


 ぽつりぽつりと話すものが現れ始め、それは次第に騒ぎになり始めた。


「え?ええ、ここどこ?帰して」


「異世界転生だ!勝ったッ!第三部完!」

おい、それはダメだろ。


「・・・」 (瞬きすらしていない)


 反応は様々だ。怒り出すもの、恐怖のあまり泣き出すもの、喜びの声を上げるもの、緊張し気絶しているもの。

 その中、私は声には出さないものの、ラノベ小説で読んだ状況に心の高鳴りを感じていた。


(これで変われる)


「きゃあぁぁ」


 どこかで女性の悲鳴が聞こえ、俺は振り返る。尻もちをついている子は幼馴染の静であった。一方にはどこか大人びた女性がいた。どうやら、静はこの女性に驚いたようだ。


静は集団から少し離れ怯えている。そんな静に駆け寄り、声をかける。

「けがはないか?」

「うん、大丈夫ありがとう佐久間君」

と頬を少し赤らめ、スカートの裾を払う。


 一方、クラスメイトの方は謎の女性の方に注意を向けている。

『皆さん、こんにちは。私は女神ゼウス。あなたたちには異世界<エクリピオン>に転移していただきます。剣や魔法などの世界で、世界の構成要素はあなたがいる地球を含む現世界と異なります。』


 前に立っているのは白いローブ1枚をまとった金髪の女性。女神というだけあって、顔は整っている。しかし、その表情はどこか無表情であり、こちらには興味がないようにも見える。


『そんなことどうでもいいからさ、うっひょー、めっちゃ可愛いじゃん。というより綺麗系?ちょっと連絡先教えてよ』とニタニタと笑みを浮かべながら迫る阿久津。


『あなたたちには私からは称号やスキルを贈ります。詳しいことは、転生後の場所で聞いてください。』


「おい、無視すんなよ!いいぜ?別に」と胸のほうにいやらしい目線を送る。


「ちょ、やめなよ~。女神様固まっちゃってるじゃん♪」


からかう取り巻き女子。


ゆっくりと手を近づける阿久津。


「汚らわしい。」女神は手を振り払った。


すると、手首からポトりと落ちる。その切断面は、CT画像のようにきれいな切断面であった。


「うわぁっぁあああ。手が手が」と必死の形相で手元を押させえる阿久津。ざまぁみろと心の中で日頃の鬱憤をぶつける。


「縺ゅ↑縺溘?蜻ス莉、騾壹j縲∬サ「騾√@縺セ縺吶?り。悟?謖?ョ壹お繧ッ繝ェ繝斐が繝ウ」

 女神は上に手を掲げ、外国語らしきものを唱え終えると、再び意識は遠のいていく。


一瞬入るノイズだけ聞こえて俺は意識を失った。




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