読まない友達

ヘイ

相談できる人

 ドラマとか漫画とか、アニメとか映画とか。

 そういうのって一人じゃ作れない。

 じゃあ、小説はどうなのかって話になると、独りよがりでも割と小説は書けてしまう気がする。

 これを小説と呼んで良いかは甚だ疑問ではあるけど。

 小説を書くという行為において、最低限小説の形を守っているという定義で小説と呼称することを許されるのであれば、誰にだって小説は書けるわけだ。

 アニメーションを作るなら様々な人が関わってきて彼らは一つのチームだと思う。ドラマも映画も同じ。

 じゃあ、小説は?

 そう聞かれてパッと答えられる自信がない。取材するのは自分。アシスタントにこの描写をお願いなんて言えない。

 一人のしがないWeb作家は今日もパソコンとかスマホの前でメモを広げながら頭を悩ませるだけだ。

 って言っても、所詮は俺の想像なわけで。

 

「誰かに相談してぇ……」

 

 そう思っても、ネットで意見なんて聞くわけには行かないし。読んでくれてる読者に聞いたらもう、それは先の楽しみが消える様な気がする。

 というか、謎を多分に残しているのだから必要以上のことを読者に求めてはならないのだとも感じている。

 そこで頼るのは。

 

「あー、もしもし?」

『どうした?』

 

 リアル友達だ。

 小説を書いていく上でとても役立つことを教えてくれる。

 だって、こいつら俺の作品読まないもん。ネタバレとかしても全く関係ないし。ガンガン、意見聞かせてもらって参考にさせてもらう。

 一人じゃ凝り固まるとか確かにそうだけど、だからと言って読者に先の展開を委ねるのは我慢ならない。これは自分の作品だと思うから。

 

「ヒロイン、退場させようと思うんだけど」

『え? マジ?』

「マジマジ」

『んー、いいんでない?』

「そか」

『どうせ、退場させるつもりだったでしょ?』

「や、そうなんだけど」

 

 読者は仲間と呼べないし、なら作家仲間かとか何とか思うけど、それは俺の作品を完成させるにあたって仲間とは言い難い。彼らも俺の作品を読むにあたっては単なる一読者になるのだから。

 謎のある作品なら、提示した謎を考えさせるのもまた一つのエンターテイメントだと思う。なら、読んでいる間は何らかの作品の作者であったとしても、ただの読者でしかないのだ。

 

「むー、助かった。ありがと」

『気にすんなって。どうせ読まんし』

「知ってる。だから相談してんだよ」

 

 小説なんて基本は一緒には作れない。一緒に作る仲間なんて見つかりもしない。だから読まないだろう友達に聞いて、ちょっとずつの話を聞いてアドバイスをもらうだけ。その友達は作家でも何でもないけど、Web小説というものへの理解はそれなりにあるから。

 

「さて、と。ここの展開だよなぁ。どうしよっかな……」

 

 再度、頭を悩ませて文字を入力しては消してを繰り返して、納得のいく物が出来るまで続ける。

 

「いや、こいつこんな事言わんだろ……」

 

 何千文字か書いた後、ちょっと読み返して、納得が行かなくて全部消す。

 こう言ったこと繰り返してる。誰かに相談できないし。

 俺と読者と、読者に全く関係ない第三者で俺の小説は成り立っているのだと言うことを、俺と友達以外に知る人は居ないと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

読まない友達 ヘイ @Hei767

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ