交流最高!

いすみ 静江

小説ならカクヨムで

「交流最高!」


 一人心に叫んでみる。


「だめだめ、ゆうちゃんとひなちゃんが起きちゃう。しーよ、小雪こゆき


 よく眠って可愛いな。

 家族が四人になるのも長い道のりだったと振り返った。


 ――私が、真白ましろ家に嫁いてから、一年が過ぎた頃、お義母さんにパーマをかけて貰っているときだった。


「まだ?」


 優しく鏡越しに訊かれた。

 赤ちゃんのことだと直ぐに分かる。

 真摯に私の病気について話した。


「服薬しておりまして……。残念な思いをさせてしまい、すみません」


 ――それから、夫婦と病院ばかりの時間が過ぎて行った。

 私は薬の調整をしなければならなかったからだ。

 それから十年以上が経ち、ゆうちゃんを授かり、二年後にはひなちゃんにも恵まれる。


 ――子ども達も少し大きくなって来た年のことだ。


『さて、今年の紅白を締め括るのは、この曲です』


 歌番組に交じり、幼い子ども達に子守唄を聞かせながら、とんとんと叩いていた。

 いつもと違うと思ってか、二人とも遅くまで起きていたが、やっと寝かし付けられた。

 あの件について、佐助さすけさんに相談に乗って貰おう。


「パパちゃん、カクヨム様に登録したらどう思う?」


『最後に合唱いたしましょう』


 その年の紅白歌合戦も終わりを告げようとしていた。


「スマートフォンでね、暫く前にこのサイトを知って、わくわくしていたのよ」


「うん、それで?」


 パパの後ろ頭だ。

 壁際に寝そべって、六畳一間を何とかしてくれている。


「よく分からないけれども、コンテストをしているらしいわ」


「参加したいのなら、自分で決めた方がいいよ。人の意見に左右されていては、続かないしね」 


 私は、自分で決めるのが特に苦手だ。

 いいのかな。

 この小説サイト、いいのかな。

 あの映画を作ったカドカワ様が背景にあるよ。


「専門的な小説のサイトかあ。登録したことがないわ」


 手が震えて、スマートフォンをまともに持てなかった。


「落ち着け、小雪。落ち着くのよ、ママちゃん」


『るるるる……』


「ああ、紅白終わっちゃうし。真っ暗な中テレビの明かりが頼りなのに」


 決断力がないと自分でも思う。

 しかし、今引き下がったら、年も明けてしまう。


「パソコンがないので、スマートフォンのメアドね。この子達からIDを考えて、登録をしよう」


 ぽちっとな。

 フリック入力も知らないし、アルファベットは入力し難かった。

 一周回って元の文字になったりして。


『ゴーン……』


 テレビが後十五分で来年になることを告げた。


「パパちゃん、除夜の鐘だよ」


「うん、そうだね」


 年越しのキスはないんかいと、心で呟いた。

 彼はお蕎麦を拵えたりして、お疲れなのだろうと解釈しよう。


「ある意味、煩悩ママちゃんだわ。がんばって、投稿するね」


 その後、短編二つを投稿してみた。

 また、コンテスト作品と言うのは十万文字以上ないといけないらしい。

 何かを支えにがんばろう。


 ◇◇◇


「んー。ただ隅っこに置いていては、読まれるのは、難しいのかな」


 珍しく独断で動いてみる。

 早速、興味深いと思ったタイトルの小説を拝読しに伺った。

 ジャンルはエッセイで、共感できる部分もある。

 書くだけではなく、読むのも勿論面白いと再確認した。


「おお、こうするとコメントが残せるのね」


 すると、作者の方からご返信が届いた。


「うわあ! 一話毎にコメントができて、いいわね。作者様もきちんとご返信してくださるし」


 凡そ、一話ずつ拝読して行く内に、最新話まで読み終わったのでレビューをしてみたくなる。


「ですます調で書くのも丁寧でいいわね」


 レビューでは、作品のいい所をご紹介したい。


「何と! 作者様の方から、私の作品を読みにいらしてくださったわ」


 こうして、初めてのやりとりが始まった。

 小説って、書けば終わりではない。

 その後、書き手と読み手の交流があって、成り立つんだ。


「小説で交流できるとは考えたことがなかったわ。子育てで人との交わりに飢えているのよ。嬉しいじゃない」


 家族で書店に出掛け、いい本を探していたとき、私は、はっと気が付く。


「考えてみれば、店頭でタイトルや可能ならば目次を睨めて、本って選ばれるわね。作品との出会いって、これよ。カクヨム様では、作者にも読者にもなれる」


 そうこうしている内に、参加していたコンテスト用小説は、五万文字程度になり、折り返し地点になる。

 スマートフォンの日課として、更新とコメントのやりとりがあった。


「読んでいただくのも楽しみ。拝読しに伺うのも色々な世界を堪能できるわ」


 ある書き込みがあった。

 私のキャラクターの名前で楽しそうに書かれている。


「どうしたことかな」


 早速、書き込みをくださった方の所へ伺うと、コンテスト参加作品があった。


「うわ! 男性主人公のお名前が被っているわ!」


 私は早速コメントへと指を走らせた。

 長いお話でしたので、二話か三話ずつ拝読してみる。

 いいお話で、読み終わったのはコンテストの締め切りが過ぎてからだった。


「いつも夜にお伺いしても返信をくださる。楽しみだな」


 その方の近況ノートは、賑わっていた。

 私も書き込みをさせていただこうと、お邪魔した言葉が、『毎晩すごいわ!』だ。

 まさか、誤解を受けているとも知らずに、再び近況ノートを拝見しに伺った。


「やらかしてしまった!」


 けれども、近況ノートに集う人々は、あたたかく迎え入れてくれた。

 そこから、作者に対して読者がいるのみならず、仲良くしてくださる方々が増えて行く。


「私もお仲間と呼ばれたいが、いいのだろうか」


 要らない心配だったみたいでほっとした。

 人ってあたたかいんだね。


 この近況ノート以外にも別の近況ノートでも交流してくださる方々に恵まれた。


 暫くして、小説を語り合える友人と出会う。

 私が教わってばかりだが、話にお付き合いしてくれた。

 殆ど語り明かしているのに、話していないことがいつまでもあると、私は思える。

 引き合わせてくださって、カクヨム様には感謝しかない。


「私と読者と仲間たち――。それは、小説を通じての交流で成り立っているものだと思うわ」



 ――交流最高!


 これからも仲良くしてください……。











Fin.


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