第20話 勇者、測られる

 ある日の午後。

 いつものようにマリーが魔王の午後のお茶のお供をしていると、ドアをノックする音がして被服担当のスケルトンの男性が執務室に入ってきた。


「魔王様、こちらが先日いただいたご意見から起こしたデザイン案でございますぅ」

 何枚かの紙を魔王に手渡す。一通り目を通した魔王はスケルトンに返した。

「うむ、よかろう。このまま進めてよいぞ」

「はぁい、ありがとうございますぅ。それじゃマリーちゃん、お茶のお供が終わったらちょっと採寸するから私の作業室まで来てねぇ」

 スケルトンの男性はマリーの頭を軽くなでて去っていった。なでる手も骨なので少々硬い。


「あの、採寸って服を作るんですか?」

 マリーが魔王に問いかける。

「ああ、近いうちに南の離宮へ行くのにそなたも連れて行こうと思うてな」

「え、でも外出着ならもういくつも作っていただいてますけど…?」

「南の離宮があるのは少し暑いところでな、涼しく過ごせるように今回は半袖の服を作ってもらうことにしておる。茶が終わったら採寸に行くがよい」

 マリーはよくわからないが従うことにした。


 魔王のお茶の供を終えたマリーは、スケルトンの男性の作業室を訪ねた。

 部屋の中にはたくさんの生地や糸が並んでいる。

「いらっしゃ~い!待ってたのよぉ」

「あの、半袖の服を作ることはわかったんですけど、確かこないだ採寸したばかりのような気もするんですが…」

 チッチッチと右手人差し指の骨を小さく左右に振るスケルトン。

「あのね、マリーちゃん。貴女はまたちょっと背が伸びたでしょう?それに今後の成長も見越して服を作るから、前のままというわけにはいかないのよぉ」

 そう言われては返す言葉もないので、マリーはおとなしく身体のあちこちを細かく採寸された。


 それから数日後にはマリーの夏物の服がほぼ出来上がり、また試着という名のファッションショーが開催された。

 確か1泊するだけと聞いているのに、どうしてこんなに服が必要なのだろうか?

 そして自分の服が出来るたびに城のみんなが集まって論争が始まるのはなぜなのだろうか?

 マリーにはやっぱりよくわからなかったが、なんだかみんなが楽しそうだからまぁいいかな、と思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る