出会い系サイトで知り合った女の子は、10年前に別れた元カノでした
黒猫(ながしょー)
第1話
スマホ……それは現代の文明における最高の利器と言えるだろう。
遠くに離れた人との通話はもちろんのこと、最近ではパソコンにも匹敵するほどの昨日まで備わっている。時にはナビにもなったり、ゲーム機の代わりにもなる。手のひらサイズであらゆる機能が備わっているから、まさに夢の道具と言ってもいい。まぁ、実際にあるから夢でもなんでもないんだけどな。
つい二十年前にはこんな未来予想されていなかっただろう。携帯電話という小型受話器が開発されてからのたった二十年ぽっちでこの急成長だからな。人間の可能性というものは本当に計り知れない。可能性は無限大……って、誰かが言っていたように本当にそうなのだろう。そのうちタイムマシーンとか開発されるんじゃないだろうか?
そんなことを思いつつ、俺、武田和人は駅前の昇降口にスマホの画面を覗きながら、立ち尽くしていた。
今日は出会い系サイトで知り合った女の子と初めて顔を合わせる日だ。
実を言うと、俺は高校の教師をしているのだが、そんな立場でありながら出会い系サイトを利用している、なんてことが学校にバレたら結構マズい。そのため、なるべく知っている人たちに会わないように隣町の駅で待ち合わせをしているのだが、俺だって、そろそろ結婚くらいしたいよ……。
大学を卒業してから気がつけば、今年で二十八歳。三十を手前にして、彼女がいない歴約十年。これまでは勉強やら、仕事やらですっかり恋愛には遠のいていた。
――このままでは、一生女の子とは巡り会えないかもしれない……。
そう思い立ち、二ヶ月ほど前からこっそりと出会い系サイトを利用していたわけなのだが……やっぱり緊張するなぁ。
多くの生徒の前に立つことはもう慣れたが、女の子とこれからデートをすると考えると、また別の緊張感が立ってくる。
先ほどからスマホの画面に注視してはいるものの、ずっとホーム画面だし、なんなら時間の方しか見ていない。
身だしなみはある程度、整えてきたし、所持金だって十分にある。心の中で自分を鼓舞しつつ、約束の午前十一時を迎えた頃。
「も、もしかして……和人さん、ですか?」
横からそう声をかけられ、俺は咄嗟的に振り返る。
すると、そこにいたのは……
「「……え?」」
顔を見合わせた瞬間、二人して固まってしまった。
長くて、少しカールがかかった明るめの茶髪に凛々しい瞳。顔は全体的に整っており、かつ清楚な感じを漂わせている。
“昔”とは全然見た目とか変わっているものの、間違いない。
「な、なんで夏海がここに……?」
相川夏海……高校の時の同級生であり、大学進学とともに別れた俺の最後の元彼女。
あれだけ楽しみにしていたデートが一転して、気まずい空気に呑み込まれてしまう。
まだ春で過ごしやすい季節なのに、背中にはびっしょりと冷や汗をかき、この後どうすればいいのかわからないッ!
というか、元カノと出会い系サイトで再会するっていう奇跡に驚きつつも、そんな運命的なシチュエーション俺は望んでねーよ!
「と、とりあえず……どこか行こっか?」
夏海はぎこちない笑みを浮かべつつ、俺はそれに対して同調する……それしかないよな?
そして、元恋人同士によるデートが開幕した。
こんな地獄みたいなデートあってたまるかッ!
出会い系サイトで知り合った女の子は、10年前に別れた元カノでした 黒猫(ながしょー) @nagashou717
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