神様とTL

絵空こそら

真夜中

 神様って、タイムライン流すような感じで、人々の願いをきいているんじゃないかしら。

 そんなこと、布団の中で思った。掛け布団と胸の間に、ブルーライトの半円。就寝の一時間前には見るのを止めたほうがいいらしいけど、そんなの今更。目も肌もブルーライトに侵されて、きっと十年後、シミや視覚障害や生活習慣病を引き起こすんだろう。十年後なんて遠い未来なんだから、今の私が気にすることじゃない。きっと十年前も同じこと思ってたから、今の私は綺麗じゃないんだと思う。

 一時間くらい同じ体勢でいる。言葉を入力して、消して。TLを更新させて。襲い来る不安ってあるでしょ。映画のタイトルみたいに大げさなやつ。誰にも言えないの。疎ましがられるのはわかっているから、その態度で更に傷つきたくない。じゃあなんでSNSなんかに張り付いてるんだろう。自分で意味がわからない。

 なぜ人がスマホ依存症になるか。それは常にスマホが新しい情報を持っているかららしい。新しい情報を得ると脳が喜ぶのだと、テレビでいっていた。情報っていっても、誰が何食べたとか、落単したとか、芸能人が不倫したとか、そういうくだらないことばかり。それなのに喜ぶの、私の脳。薄っぺらいな。

 自分のプロフィール画面にとんで、過去になんて投稿したか、何個反応がついたか、見るともなしに流してみる。結局自分の投稿見てる時間が一番長い。これって新しい情報じゃなくない?じゃあなんでこんなことすんのよ脳。バイト先でべらっべら自分のことばかり話すおばちゃんに相槌打ちながら、心の中で「孤独なんですね(笑)」って思ってたけど、結構私たち同類かも。

 気づいたら二年前の投稿まで遡ってた。またTLを更新して、真新しい投稿は何もなくて、画面を閉じる。今度はメッセージのアイコンを開いてみる。誰からの返信もない。自分が返す時は一週間くらいほったらかすから、自業自得なんだけど。返信が一斉に来るときと、まったく来ない時と、あの波はなんなんだろう。みんなが示し合わせてるとしか思えない。 

 続いて写真に特化したSNSのアイコンをタッチしようとしたら、その四角は空白になっていた。そういえば、精神衛生上よろしくないからという理由で衝動的アンストをしたんだった。

 結局ふりだしに戻る。呟きに特化したSNS。言葉を打ち込んで消して、投稿欄空白のまま呟けたら、案外気持ちが反映されるのかもしれない。当然何にも言葉が打ち込まれてない状態では、投稿できない。だから投稿欄を閉じて、画面をスワイプして、同士を探す。メンヘラっぽいこと呟いてるやつ。いつもはスルーするけど、今日は見つけたらいいねをあげるつもりでいる。こういう時に限っていない。

 わかってる。知ってる。この不安も苦しさも、一生続くわけじゃない。明日はきっとマシになる。それでも、やっぱり夜中じゅう雨に打たれるのはつらいから、誰かに傘を差し出してほしいわけなんだけど、そんな少女漫画展開、あるわけないじゃんね(笑)。

 結局、「あ」としか打ち込めなかった。単語ですらない。私の送り出した「あ」はTLの海にぽんと浮かび、すぐ他の呟きに流されていく。スマホを充電器に差して、目覚ましを設定して、枕に頭を沈める。時々、「あ」に誰かいいねをくれてないかしら、と思って画面を光らせてみるけど、とっくに呟きの地層に埋もれて、どこにいるのかわからなくなっていた。ご愁傷様。

 ブルーライトに侵食された浅い眠りの中で、夢をみた。神様がTLを見ていた。そして私の「あ」にひとつ、ハートを押してくれていた。

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神様とTL 絵空こそら @hiidurutokorono

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