彼女は常に欲求不満!? イチャップルの変態通話

さばりん

ご時世で会えないカップルのビデオ通話

 俺、智哉ともやには、愛しの彼女がいる。

 今日もいつものように、寝る前のビデオ通話を楽しんでいた。


『ねぇ、智哉―! 今日も寝落ちしようね』

「いいよ。一緒に寝ようね美夏みか


 彼女の名前は唐津美香からつみか

 同じ大学のゼミナール生。

 このご時世もあり、大学はすべてオンライン授業。

 美夏は地方から都内へと上京してきた勢。

 飲食店でアルバイトをしていたものの、時短営業や人件費削減の影響もあり、生活に苦しんでいた。

 そして、人に会えない寂しさを紛らわすため、毎日こうして彼氏である俺に電話を掛けてくるようになったのだ。


『はぁ……画面越しじゃなくて直接会いたいな』

「うん。そうだね。宣言が明けたら、またすぐ会いに行くよ」

『でも私、お金ないし……』

「別にデートって言っても、無理に都内に出向かなくてもいいでしょ。近所の公園で散歩したり、お家でゲームしたり。やりようはいくらでもあるよ。それとも、どこか行きたいところでもあった?」

『い、行きたいところというか、イキたい……』

「ん、どういうこと?」


 素で分からず、俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。

 恥ずかしかったのか、美夏は羞恥で頬を染める。


『だ、だからっ! 智哉とイチャイチャしたいっていうか……なんというか……』

「あぁ、そういうことね」


 ようやく理解して、俺は思わず頬が緩む。

 一肌に触れたい気持ちが抑えられず。彼女は欲求不満の様子。


「じゃあ、次に美夏の家遊びに行ったら、扉明けた瞬間に抱きしめてあげる」

『……バカっ。そういうの素で言うなっての』


 直接的に言われるのは恥ずかしいらしく、画面越しに頬を桜色に染める愛しい彼女。

 そういう反応を見ると、余計にからかいたくなってしまう。


「もしかして、抱き締めるだけじゃ足りない?」

『……』

「無言は肯定にとらえるけど?」

『……勝手にすれば』


 唇を尖らせながら、ぽそりとか細い声で答える彼女。

 その様子がまた、可愛らしくてたまらない。


「ふふっ……」

『ちょ、笑うなし!!』

「いやだって、美夏が可愛すぎるから」

『……可愛くないし』

「可愛いよ」

『可愛くない』

「大好き」

『……私も好き・・・・・・』


 そんな、イチャップル前回の会話をしていると、不意に美夏が寝転がっていたソファから立ち上がる。


『ちょっとお手洗い』

「はいよ」

『スマホ持ってっちゃお』

「ミュートにしろよ」

『……』


 反応はない。

 俺のスマホの画面に映っているのは、彼女が手に持っているスマホが左右に揺れ動く映像だけだ。

 それを見ていると酔ってしまいそうだったので、俺は適当に部屋の本棚の漫画を手に取って見繕う。

 すると、スマホからガチャリとドアを開ける音が聞こえてくる。

 さらには、服を脱ぐ衣擦れの音までスマホから届く。


「おい、だからミュートしろって」

『ふふっ……興奮した?』

「しないっての。誰が人の放尿楽しむやつがいるんだよ」

『……そう言うことじゃないっての! もう、ミュートにすっからね!』


 ぷぃっと憤慨した様子で、美夏はミュートにしてしまう。

 全く女心が分からない俺にとって、理解できない行動だった。

 思わず、はぁっとため息が漏れてしまう。

 すると、ピロンと通知が鳴り、誰かから通話アプリのトークが送られてくる。

 見れば、今電話をしている彼女からだった。

 俺は、美夏とのトーク画面を開き、内容を確認する。


「ぶっ!?」


 送られてきたのは画像だった。それを見て、俺は思わず吹いてしまう。

 何故なら、トイレの便器に座り、下を下ろした状態、もう片方の手で器用に上着もすべて持ち上げ、白いお腹と小ぶりながらも膨らみのある胸と下腹部が丸見えの写真が送られてきたのだから。

 直後、彼女からトークが送られてくる。


『たまには、私でヌいてね♡』


 俺はすぐに、メッセージを返す。


『何が♡だボケ』

『でも、ちょっとはドキっとしたでしょ?』


 そりゃ勿論。好きな人の裸体を見たら、興奮しないわけがない。


『だからって、わざわざエロ画像送ってくる必要ないだろ』

『だって、もっと私を見て欲しかったんだもん』

『いや、だからってな……』


 俺が額に手を置きながら苦悩していると、美夏がトイレを済ませてミュートを解除した。


『ふふっ、どう? ヤりたくなった?』

「はぁ……ったくお前は」

『……あれっ? もっと過激なヤツじゃないと興奮出来ない?』

「そういうことじゃなくて……」

『なんなら、今日は特別にオ・〇・サ・ポ。してあげてもいいよ』


 秘密めいたような小声で、そんなことを言ってくる彼女。

 こういった時に『そんなのやらねぇよ』と即否定できればいいのだけれど、俺の下腹部は既に臨場態勢を整えてしまっていた。

 男のさがというものなのか。


「よし、じゃあお前もちゃんと見せろよ?」

『えっ!? 見せるって、何を!?』

「それくらいわかるだろ?」

『えー私ちゃんと智哉の口から言ってもらわないと分からないなー』

「だから、俺もするから、お前もしろよってことだよ」

『何を?』

「自慰行為」

『……なんか言い方がキモイ』

「うるせぇな……お前から言い出したんだろうが……」

『にしても雰囲気ってものがあるじゃん』

「はいはい、分かりました。俺には雰囲気ってものが分かりませんでした。すいません。ってことで、今の話はなかった事に――」

『えっ、いいの?』


 俺の真意を確かめるように、潤んだ瞳を画面越しに向けてくる美夏。

 それはもう、一緒にシよ?と催促しているも同然の言葉だった。

 本当は、美夏がシたいだけなんじゃないだろうか?

 そんな風に思えてきてしまう。


「いやっ……別に嫌ってわけじゃねぇけど……」


 そこで俺はわざと、頭を掻いて視線を逸らす。

 すると、我が意を得たように我が意を得たようににやりとした笑みを浮かべる美夏。


『ふふっ……もう、素直じゃないんだから』

「それはお前の方だろ……」


 そんな会話を交わしつつ、今日も添い寝通話ではなく、変態カップルのエロ〇プ通話へと移っていき、バカップルの夜は更けていくのであった。

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