第11話 追加調査結果
全く困ったもんだと思っていた翌日。
折よく弁護士の先生から電話がかかってくる。
「先日依頼ありました追加調査の結果が大体まとまりまして、ご報告しようと思いまして。」
なんと良いタイミングなのだろうと思いつつ。
「まず、清水太郎さんは実は次男のようですが、太郎さんの兄、姉はすでに亡くなっているみたいです。」
へえ。名前からてっきり長男と思い込んでいたのだけれど。
「実はウチに昨日また固定資産税の通知が来たんですが、その通知が清水格之進さんの分、と書いてあったんですが家系にそんな人いますかね。」
「ありますね。えーとこれは清水太郎さんのお父さん、かな?」
なるほど、そうすると親の土地が相続で子供のものになった状態かも。相続の再登記がきちんとされないでいることはあると聞いたことがあるから、清水太郎のものになってはいるものの、登記は清水格之進所有のまま変わっていないので、役所は清水格之進あてに請求書を送り続けていた、ということなのか。
「なるほど。で、叔父叔母の住所とかはわかりました?」
「戸籍の附票は取れました。静岡と東京におられるみたいですね。」
「わかりました。では、今度お伺いして詳しいことをお尋ねするってことで良いでしょうか。」
「はい、それでいいです。」
アポイントを取って約一週間後に弁護士事務所へ。
「戸籍の取り寄せを行なって、清水太郎さんと家系について家系図を書きました。この時代ですと旧戸籍法に則るので戸主の下に家族の名前が書かれるので、戸籍見るだけだと関係がわかりにくいので。」
戸籍の現物を見せてもらうと、確かに戸主の後には名前がたくさん書き並べてあって、関係も妻、長男、次男、長女、さらには弟とか甥とか色々書いてある...。これだけでは確かによく分からない。
「わかる範囲では、太郎さんの兄弟はすでに亡くなっていて、相続人は子供さんだけのようです。」
「つまりは、私たち兄妹が最後に相続放棄したら、太郎さんの財産を引き継ぐ人はいなくなるってことですかね。」
「そうなりますね。」
「それで、太郎さんの父親が格之進さん、と。」
「そうですね。格之進さんが亡くなった時、生きている子供は太郎さんだけですので、格之進さんの財産は全て太郎さんが相続したものと思います。」
「で、相続登記漏れでもあったんですかね。まだ格之進さんのもの、となっている不動産があるってことですね。」
「そうなると思います。そして、太郎さんの息子さん、娘さんがそれぞれ静岡と東京にお住まいです。戸籍の附票にある住所を記載しておきました。」
「ありがとうございます。ところで、意外な相続人がいた場合、連絡取ったりするものじゃないんですか?」
「まあ、その方が良いとは思いますが、結構連絡しない人は多いですよ。自分でやらなくても役所から連絡がいくだろう、ってことにしてしまうようですね。」
まあ、もともと関わりの薄い人に連絡を取りたくない気持ちもわからないではないが。こっちとしては手続きやらされるので多少なりとも人間関係が感じられる方がまだいい気がするのだけれど。こればかりは人により感じ方が違うだろうとは思う。
「色々調べていただいてありがとうございます。この後、相続放棄の手続きが終了した段階で、相続財産管理をやってもらうように連絡をとってみようと思います。畑とかはいいんですが、ため池とか危ない状態になる可能性があると思うので、管理しない状態を放っておくとトラブルに巻き込まれる可能性があると思うんですよね。しっかりその芽は摘んでおきたいです。」
お礼を言って事務所を辞去した。
翌日、御茶国市課税課に電話する。今回はまとめ上げたゴミの出し方を聞くような気分で気が軽い。
名前を名乗り、実祖父の名を告げて固定資産税請求の件で、とお伝えする。相続放棄が完了したので書類を送りたいのだが、として、手順を聞く。兄妹三人分の相続放棄申述受理通知書のコピーを固定資産税の通知書と一緒に返信すれば良いらしい。
ついでに実曽祖父の固定資産税請求の方も同送すれば片付くだろう。
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