第61話 水道管の破裂について

 令和3年10月7日、首都圏で大きな地震があり、水道管の破裂が多発しました。

 現在、地下に埋設されている水道管の多くは、20世紀の高度成長期に建設されたもので、かなり老朽化しています。

 錆びて、劣化しています。

 だから破裂したのです。

 最新の水道管は耐震性があり、簡単には破裂しません。

 古い管を耐震管に交換する工事を進めるべきなのですが、多くの水道事業体は財政難で、実施できません。

 水道料金を値上げしなければ、工事費を確保できないのです。

 それも大幅な値上げが必要です。

 公共料金の値上げは市民の反発を生むため、むずかしいです。

 水道事業体はたいてい地方自治体が運営しています。水道料金の値上げは自治体の首長の人気を下げるため、なかなか踏み切れないのです。

 水道料金なら上がったけど、と思われる方がいるかもしれません。

 しかし老朽水道管の敷設替え工事を加速するには全然足りないのです。

 水道事業体もまったく敷設替え工事をしていないわけではありません。少しはやっています。しかし基幹の重要管を優先して実施しているので、多くの管が後回しにされ、手がつけられていません。

 今回の地震は最大震度5強でしたが、関東大震災クラスの地震が発生したら、この程度の被害では済まないです。もっと多くの水道管が破裂し、各地で断水し、多数の水難民が発生すると考えられます。

 水道事業体は修理を急ぎ、給水車を派遣するでしょうが、追いつかず、水が足りない状況が長引くに違いありません。

 大地震で火災が発生するでしょうが、断水した地域では、消火活動を行うこともできません。消火栓は水道管につながっていて、管が破裂していたら、水が出ないのです。消防車が来ても、何もできません。

 水道だけではなく、多くのインフラが老朽化しています。

 電気、ガス、道路、橋梁……。

 国や地方自治体は新規のインフラをつくるより、古いインフラの更新に予算をつけるべきです。目立たず、票には結びつかないけれど、やるべきです。

 なお、水道事業の民営化は敷設替え工事を遅らせるだけなので、行わない方が賢明です。民間企業は嬉々として水道料金を値上げするでしょうが、支出を伴う工事には後ろ向きなはずです。値上げ分は社長や役員の給料や株主への配当金で消えてしまうでしょう。私はそう考えています。水道事業の民営化を公約に掲げる候補者には投票しません。

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