第12話 焚き火焼肉の旨さ

 山頂で食べるコンビニおにぎりは美味しい。

 自然の中で食べると、それだけでも美味しいのだ。

 初めて焚き火をしたとき、炎を眺めながら、カップヌードルをすすった。

 実に旨かった。これほど美味しいカップ麺を食べたのは初めてだと感じた。

 焚き火で肉を焼いたら、どれほど旨いことだろう。

 ホームセンターで金網を買った。

 スーパーで買った鷄のもも肉を、自宅の台所でひと口サイズに切り、串に刺して、塩胡椒を振った。

 河原へ行き、焚き火をして炭火を作り、焚き火台に金網を乗せ、鷄を焼いた。

 鷄の脂が炭に落ち、ジュウと音を立てた。

 これは絶対に旨いと確信する。

 何度かひっくり返して、しっかりと焼く。

 少し焦げ目がついた頃合いで串を手に取り、齧りつく。

 これほどの焼き鳥は食べたことがなかった。チェーンの居酒屋より明らかに旨い。

 ソーセージは燻製特有の煙の味がするが、焚き火焼き鳥も流木の煙の味がした。

 塩味は濃いめ。それがまた旨い。胡椒ではなく、七味でもいいだろう。

 次に焚き火をしたとき、奮発して焼肉用の和牛カルビを持って行った。

 金網に乗せてしばらく焼くと、ジュワジュワと音がした。

 牛肉をひっくり返して、さらに焼く。煙が肉に当たり、空中で霧散する。

 トングで焼肉を掴み、口に入れる。焼肉のタレはつけない。味付けは塩胡椒のみ。和牛の脂の旨みが口の中に広がる。

 キャンプ場でバーベキューをやったことがあるのだが、それより美味しい気がする。同じ炭火焼きだから、なぜ旨いのか、科学的な根拠を示せない。

 たった一人で食べているので、味に集中しているからかもしれない。大人数でわいわいやるのは楽しいが、純粋に味を楽しみたかったら、一人か二人で食べるのがいい。焼き過ぎていない食べ頃の肉を熱々で食える。

 ビールを飲みたいところだが、車で帰らねばならないので、飲めない。

 それだけが残念だ。

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