第一章・信任と懐疑(二)


 日常の訓練をするヴワディスワヴ


 「疲れた…ちょっと起きたくない。」


 私は無理やり目を開けて、ベッドの側の時計を見た。もう朝九時だ。私の上司は多分まだ地下室で熟睡しているが、私は起きて訓練に行かないとだめだ。任務が終わったら訓練、訓練が終わったら任務、隼哨兵として一刻も休めない。


 私は沢山疲労を蓄積したが、息子は元気だ。エウフェミア様のおっぱいを思うと、息子は堅くなってつらい。これも隼哨兵の我慢する必要がある苦しみだ…朝は訓練があるから、今は体力を無駄に使ってはいけない。


 私はパジャマをぬいで、リネンのシャツと綿の乗馬ズボンに着替えた。食事した後で訓練に行こうと思う。


 豆、野菜、鶏ささみで作られたサラダ、あと特別な香辛料で煮えた鹿肉と鹿内臓がついたパンを食べて、そして、薬草に入れた大豆汁を飲んだ。以上は私が食べさせられる朝食だ。健康的だけど、全然美味しくない。


 私の生活の全ては大公国のため、これは定めだ。こんな生活は辛くてくだらないが、思考しすぎることによる苦痛を減らせる。


 反抗軍の生活は自由だったか?分からない、私の心は自由と感じたことがないから……

 


 片手ずつ2・5キロの練習用軍刀を持って、色んな方向の斬撃の技をやるのは不可欠な訓練だ。今、私の両手は自由自在でどっちでも武器を上手に操れる。反抗軍の時代に比べたら、今は武術が一層良くなった。


 あの妖精の首領との戦いを追憶した。彼が槍を突き刺す速度は流星の如く速かった。しかも、状況により武器を変形させることもできる。もし真銀の手袋で強いて彼の槍を折らなかったら、多分勝ちにくかっただろう。


 しかし、高品質な装備で相手を倒しても何だか少し悲しい…反抗軍が持っている資源と技術は帝国のに勝てるわけがない。私も妖精の同胞と共に立って暴政に抗ったが、今、吸血鬼の命令を受けて彼たちを制圧している…


 私は社会の平和と安全のために、政府軍に寝返ったと自分に繰り返し言い聞かせた。


 後悔する必要はない。反抗軍を放置すれば、悪魔がもう一度世界に侵入して、罪のない平民たちが災いに遭うことになる。彼たちが自由と平等のために戦うというスローガンを信じてはいけない。そう、あれはスローガンに過ぎない。


 私は美しい三連撃をやった。私はこれからも迷うと思うが、反抗軍と戦闘し続けることを選ぶ。


 

 軍刀の練習が終わった後、私はもうかなりの汗をかいた。次は筋肉の鍛錬だ。長い時間日差しにあっても平気な妖精である私は、ちゃんと鍛えれば力も筋肉量も吸血鬼に勝る。


 この時、私は突然寝室で寝ているエウフェミア様を思い出した。彼女はいつも裸で寝ると聞いたから、山のような巨乳が寝る時にどのように両側に流れるか、本当に見てみたい。彼女のおっぱいは肉がたっぷりで張りがあるから、形が崩れないはずだ。もし彼女のおっぱいに顔を押し付けて寝れば、きっと気持ちいいだろう……


 私は股間が熱くなって、全身の精力がマグマみたいに流れていると感じた。これは新しい問題ではない…隼哨兵が食べる料理は大量の体力を付けるが、副作用は性欲も強く上げることだ。特に運動する時、強烈な性欲が湧いてくる。


 隼哨兵は退職するまで結婚はできない…でも、性欲を発散する相手が必要だ。政府はそういう相手を私たちに与えるために、志願して身を捧げる上質な美女を紹介して、隼哨兵の恋人にする。私の殆どの仲間は一週間に十回ぐらい美女と交わる。もちろん、彼たちは訓練に足りる体力を残す。退職した後、殆んどの哨兵は恋人と結婚して、一夫二妻のやつもいる。


 他の人民から見れば、隼哨兵は両手に高い給料と美人を持てるから、素晴らしい仕事だ。しかし、あれらの美人たちは全員政府が送った監視者だと分かっている…私たちが知っている事が多すぎるから、退職しても側には監視者が要る。その上、私たちの子供たちにも国に忠誠を尽させることができる。


 大公国が欲しいのは、雄の本能に支配されて完全に命令に従う勇猛的な戦士かもしれない。でも、私はまだ少し自由を保ちたい。


 私の考えは矛盾的だ…時折、政府の計画を受け入れて、性欲を満たせる快楽の生活を送れば、悩みが無くなるかなと考える。今までの我慢は必要があるの?


 エウフェミア様の巨乳がまた浮かんだ。私はとても彼女のおっぱいを揉みたいと感じた。この大きさも広さも上等な胸はきっと両手でも掴み切れないだろう。


 「もし反乱者たちを奴隷にして、紡績工場に送ることができなきゃ惜しいね!」


 でも…そういう言葉も覚えている。今、私は隼哨兵だが、実はエウフェミア様の奴隷に等しい。私は彼女に可愛がられても恋人になるのは不可能だ。やばいのは、エウフェミア様の下で働いた後、だんだん他の美女への興味が減ることだ…


 エウフェミア様のようにあれほどセクシーなボディを持っている美人は少ないから、彼女以外、私の欲望を満足させる女性がいるか?エウフェミア様に会えるなら、暫く性欲を抑えられるが、長い時間続かないと分かった。いつか恋人を探さなければならない日が来る…


 私は一体何のために、ここで軍刀を振るの?頭が痛いな…今は絶対に答えを見つけられないから、私は胸を触って自分を冷静にさせて、訓練を再開した。

 


 「弩手、もう一度照準して射撃しろ!」


 ポニーテールを結んだ金髪の保安官は元気溢れる声で命令した。


 「なぜ中心に当たった兵士が一人もいない?」


 「保安官様、これらの新しい弩は貫通力が強いですが、照準器の品質は良くありません。」


 保安官は白い両手を伸ばして、民兵から弩を受け取った。


 「変じゃな~弓師のアンドリイは、弩の魔法照準器は彼と学徒に三回調整されたと言ったのに、どうして問題あるの?」


 保安官は弩に矢を入れた。今は夕方になったが、吸血鬼である彼女にとって、周りが見えないという悩みはない。彼女は構えてトリガーを引いた。的に当たった矢は強く響いて、的に半分刺し込まれた。確かに致命的だ――中心を三センチ外れなかったら。


 「矢の威力がいくら強くても、命中精度が良くないなら無駄じゃ。」


 保安官は憂いを帯びた顔をして、側の助手に向かって話した。


 「問題点を記録して。わたくしは後でアドリイと話し合って、彼に改めて照準器を検査することを要求するね。」


 「アルドナ様、私は城主様のメッセージを伝えて来ます。」


 若い民兵は保安官のほう駆けて来た。彼はちょっと息が切れている。官邸から民兵訓練所まで走ってきたようだ。


 「分かった。すぐ行く。」


 保安官アルドナは青い目で弩を見て、絃、弓床、グリップ、トリガー、滑車を全部詳しく検査した。


 「みんなは古い弩で練習しよう!新しい弩を営倉に返しておいて。射撃訓練が終わった後、槍とファルシオンの技を習って、そして解散する!」




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