第14話 新装備

「また来たのかオマエは! 変なモンは竜翼競艇機スカイ・ボートにつけないってあれほど言っただろ!」


「違うって! 今日はそんな頼みじゃないよ! ちょっとは話を聞いてくれって!」



 製造部資材調達班の新設小屋に訪れたボクは、危うくテオスに門前払いされそうになる。まずはよこしまな考えがない事を言葉に出した。



 なんだよぅ! ……せっかく親切心で来たってのに! 



『マクリー砲発射装置案』がそんなに嫌だったのか、胡散臭そうな目でボクを見るテオスに、「『モン・フェリヴィント』イメージアップ大作戦」の概要を話し始めた。



 そしてここで詳しく説明する事と言えば。



「なるほどなぁ……空賊を捕まえるために、人翼滑空機スカイ・グライダーの風の飛礫つぶての発射口の改造か」


「そうなんだよ。三方向に同時発射できる、なるべく小さい発射口を作って欲しいんだ」



 そう。拡散三点バーストだ。これならば空賊のパイロットを失神させる事なく、ましてや機体を大破する事なく、人翼滑空機スカイ・グライダーの翼を効率よく傷つけて航行不能にできる。それに小さな風の飛礫つぶての三発なら、通常の攻撃よりも断然に加護の力がセーブされる。その分戦闘時間だって延びるはずだ。



「あ、でも万が一の事も考えて、今の大きな発射口も残したまま、三方向の発射口も付けて欲しいんだ。できれば戦闘中に切り替えられると便利だね」


「……相変わらずカズキは、俺たちが考えつかない事を考えるな。……分かったよ、やってみるさ。で、何機分、必要なんだ?」


「……全機分」


「は、はぁ? 人翼滑空機スカイ・グライダー全機分って……一体何十機あると思ってんだ!? バカ言ってんんじゃねえよ!」



 ボクはニマっと顔を崩す。ちょっとだけ意地悪い表情を浮かべながらテオスを見た。



「これはヴェルナードさん肝煎りの任務で、多分明日にはエドゥアさんから正式に指令が出ると思うけど」


「ほ、ほ、ホントかよ!?」


「だから少しでも早くテオスさんに伝えておいてあげようかと思って来たんだけど……お節介だったかな?」


「ば、馬鹿野郎! こうしちゃいられねぇ! い、急いで資材の準備と人員を用意しないと……」


 

 手に持った工具を放り出して、テオスは小屋から出て行ってしまった。

 その慌てふためく姿を見て、ほんのちょっとだけ気持ちがスカッとしてしまったボクは、悪い子なんだろうか。


 せっかく教えに来たのにさ、人を疑ったんだから。……これくらいは意地悪く思っても、許されるよね?

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