錬金術ギルドに向かう途中で……

ルル達は遊び疲れたのか芝生の上でゴロンと寝転がっている。


「そこで寝てると風邪引いちゃうよ」


イスに座ってそう言うと、ルルとファニーちゃんが欠伸した。


欠伸する姿可愛いなぁ〜……。


「クゥ〜ン……」


カイリがそう思っている中、ルルが「平気だよぉ〜……」と言いたそうな鳴き声を上げた。


プルンッ⁉︎


そしてプル太郎が「甘えたい」と言いたそうに震えた後、こっちにやってきたので、抱き上げて膝の上に乗せてあげた。


「〜〜〜♪」


ファニーちゃんも「私も〜!」と言いたそうな声を出して膝の上に乗って来た。


みんな甘えん坊だなぁ〜……。


「錬金術ギルドに行って来ようと思ったんだけど、これじゃ行けないなぁ……」


…と言ったらルルが耳を立ててこっちを向いて来て、プル太郎がプルプルと震え出した! ファニーちゃんに至っては興味深々な顔を向けて来る。


「……え? もしかして錬金術ギルドに行きたいのか?」


俺がそう言うとルル達は「うん!」と言いたそうな感じで頷いた。


やっぱりみんな活発だから身体を動かしたいのか?


そんなことを思っていたらマナさんが俺の肩に手を置いた。


「カイリ。錬金術ギルドに行くなら私も付いて行くよ」


「いや、流石にそこまでして貰うのは……」


「あの商会が何して来るかわからないじゃん! カイリ1人で何とか出来るの?」


「俺よりも全然強いルル達が側にいるからぁ……」


そう言ったら、顔を目の前まで近付けて来たのでビックリした顔になる。


「いいカイリ。アイツの狙いはあくまでもルル達だから、カイリがルル達を心配しなきゃいけないの。そこはわかる?」


「う…うん」


「だからルル達をすぐ守れるように1人ずつ護衛を就けるからね」


「あ、そう……って、1人ずつ?」


俺が疑問に思っている中、マナさんは屋敷の方を向いて手を振って大声を出す!


「みんなぁ〜! こっちに来てぇ〜⁉︎」


そう言うと先ほどの変態メイド達がラフな格好で俺達の下にやって来た。


「お呼びでしょうか、マナ様?」


「カイリ達の護衛をするから付いて来て!」


「「「かしこまりました」」」


「かしこまりました。じゃないよ! 自分達の仕事をしなくていいの?」


「ここで働いているメイドは大抵のことは出来るので大丈夫ですよ」


「そーそ。他のところよりも給料が高いし、休みもちゃんとくれるから天国ですよねぇ〜」


「ただサシャ様の試験が厳しいから、途中で辞めちゃう子もいるんですよねぇ〜」


「「あれはヤバイ。マジでヤバイ……」」


「でもそれを乗り越えれば超安定な職場で働けるから頑張ったんだよね!」


サシャさんはここに勤めようとしているメイド達にどんな試験をさせているんだ?


「とにかく! 私のショッピングも兼ねて錬金術ギルドに行くよ! みんな準備はいいよね?」


「「「お〜〜〜っ⁉︎」」」


変態メイド達はそう言いながら、拳を上げてそう言う。


「よし! それじゃあ出発だぁ〜! 私に付いて来るのだぁ〜〜〜‼︎」


「キャンッ⁉︎」


プルンッ⁉︎


「〜〜〜♪」


ルル達は「お〜〜〜っ⁉︎」と言いたそうな返事をした後に、マナさんの周りに集まり出した。


「あれ? 俺には聞かないの?」


「カイリ今から向かうつもりだったでしょ?」


「…うん。まぁ……」


「なら返事聞かなくてもいいじゃん。さぁ立って立って!」


確かにそうだけど準備出来たのか聞いて欲しい。


なんて思いながら立ち上がり、マナさん達と共に錬金術ギルドへ向かう。


「いいみんな! 怪しい人を見掛けたら睨んで追い返す! 知らない人がカイリに近付こうとしたらディフェンス体制を取って追い返す! そしてカイリ達に何かしようとしたら、命を懸けてそいつをデストロイするんだよ! わかった?」


「「「はい、マナ様」」」


「何で命を懸けて相手を殺すの⁉︎」


俺人が死ぬ光景を見たくないんですけどぉ⁉︎


「……マナ様、出来る限り相手を死なせないように致しましょうか」


「そっちの方向でいっか。行こうカイリ」


「いや行こうって……って、マナさん。俺の手を引っ張らないで下さい」


自分が襲撃されるかもという心配よりも、襲撃して来た人達がマナさん達に、ボコボコ状態になるような返り討ちを受けてしまわないか心配になってしまう。


マナさんに引っ張られるような形で錬金術ギルドに向かい始めた。


「カイリ様、あのお菓子店でお菓子を買いましょう。私があ〜んをして差し上げますよ」


「カイリ様、あそこのお店でお洋服を買いましょう! キレイなお肌に合う服を私が探して見せましょう!」


「カイリ様。帰りにあの靴屋さんに行きましょう! 素敵な足に合う靴を見繕いましょう!」


「…カイリ。あのお店でリンゴ飴買って」


「みんな当初の目的を忘れてないかぁ⁉︎」


てかマナさんが俺に奢られる前提で話してない!


「忘れた訳じゃないんですけど……」


「こうも何も起きないとカイリ様の素敵な髪を見る以外暇で暇で……」


「そうですね。カイリ様の可愛いあんよも見れないので暇ですね」


まだバルグさんの邸宅を出て3分ぐらいしか経ってない気がするんだけど。


「カイリ。ちゃっちゃと用事を済ませて遊びに行こう」


この人達遊びに行く前提で話を進めてるっ⁉︎


なんて思っていたら、マナさんが腕を掴来てギルドの方へとグイグイ引っ張ってくる。


あ〜……サシャさん。やっぱりこの人達の側にアナタがいないと俺が振り回せれるよ。……助けて。


「…ざけるなっ⁉︎」


いきなり怒鳴り声が聞こえて来たので、カイリは一瞬身体を強張らせると聞こえて来た方向に顔を向ける。


「ふざけるなって言いたいのはワシの方だ! 期限まで時間があるだろうがっ‼︎」


あれは、ブンゼじゃないか! 言い争っている相手は一体誰なんだ?


そんなことを思っていると、ブンゼと言い争っている男性が懐から1枚の紙を取り出してブンゼに突き付けた。


「期限は明日までと書いてるけどなぁ。どう見てもお前には返済する能力がねぇってことがわかったから、期限を前倒しすることにしたんだよ!」


「前倒しにしなくてもワシは……」


「フェンリルと妖精をちゃんと連れて来るから平気って言いたいんだろ? 残念だけどその2匹はもういらねぇ」


「な、何故⁉︎」


ブンゼがそう言うと男は連れと共に呆れた表情をさせる。


「何故も何もお前はテイマーの従魔に手を出そうとしているからだ。流石の俺達でもそこまではしねぇって。

それにお前は目立つようなことやっちまってるから、色んなところに目を付けられてんだよ」


「ワシが…目を付けられているだと?」


「ああ…だから捕まる前に取れるもんは取らせて貰うぜ。おい、お前ら。コイツを逃げられないようにしろ」


「「…はい」」


男の連れと思わしき2人はブンゼに向かって歩み寄るが、ブンゼの方は流石にマズイと思ったのか慌てた様子で両手を前に突き出した。


「ま、待ってく……いや、待って下さい! 店を失ったらワシはどうやって金を稼げばいいんじゃ⁉︎」


「そんなもん知るか」


「さっさと店に行くぞ」


「離せ! ワシに触るな!」


男達はそう言うとブンゼを拘束する為なのか身体を掴もうとしたが、ブンゼは振り解いて距離を取った。


「……こりゃ痛い目見ねぇとわかんねぇようだな」


「ああ…ボス。どうします」


「抱えて行くのも面倒だから歩ける程度に痛め付けてやれ」


「「わかりました」」


男達は関節をボキボキ鳴らしながらブンゼに歩み寄っている中、ブンゼが怒りの表情を露わに地団駄を踏む。


「ネマルの邸宅で使うつもりだったが、こうなったらこれをここでつかってやる!」


ブンゼはそう言うと懐からクリスタルを取り出して掲げた!

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