バルグ邸でお着替えと朝食を

カイリ(被害者)以外の4人はフローリングに正座させられてサシャのゲンコツ&説教を受けるハメになった。


「いいですか。今後もメイドとしての立場を弁えてお客様と接するようにして下さいね」


「「「「…はい」」」」


「皆さん、その格好で彷徨かれると迷惑なので服に着替えて下さいね」


「「「「わかりました」」」」


マナさん達はそう言うと服に着替える為に、痛そうな頭を撫でながら部屋を出て行ってしまった。


「ヤレヤレ……彼女達もいい加減節度というものを弁えるようにして貰いたいものです。……ところでカイリ様」


「は、はい! 何でしょうかっ?」


「洗い終えたカイリ様の洋服をご用意させて頂きました。どうぞこちらを着て下さい」


サシャさんはそう言うと俺が着ていた服と下着を渡して来た。


「ありがとうございます!」


「ご用意が出来ましたら朝食の準備が出来ているので、食堂の方へ来て下さい」


「はい!」


カイリがそう返事をすると、サシャは頭を下げてから部屋を後にした。


サシャさんを怒らせると怖いから、怒らせないようにしておかないとな。


そう思いながら着替えているとルルが借りた服を咥えて扉の方へと歩いて行く。


「ルル、どうしたんだ?」


「キャンッ⁉︎」


「……え? サシャさんに渡しに行こうと思っているのか?」


「キャンッ⁉︎」


俺の言葉に「そうだよ!」と言いたそうな返事をする。


ホントにこの子はいい子だよ! ……と言いたいところなんだけれども。


「ルル。俺が持って行くからいいよ」


それに床を引きずって持って行く訳だから服が汚れちゃうよ。


「キュ〜ン……」


ルルが「ええ〜……」と言いたそうな声を出しているが、そんなことを気にせずルルが咥えている服を持ち上げた。


「〜〜〜♪」


今度はファニーちゃんが履いていたパンツを笑顔で持って来てくれた。


「あ、ありがとうファニーちゃん」


持って来てくれるのはありがたいけど、ちょっと複雑な気持ちのなるなぁ……。


プルンッ⁉︎


そんなことを思っていたら今度はプル太郎が「はい、これも」と言いたそうな感じで、震えながらブラジャーも持って来た。


「プル太郎もありがとう」


そうお礼を言いながらプル太郎達から下着を受け取り部屋を出るとバルグさん達が待っていると思われる食堂へと向かった。


「どうも、お待たせしました!」


「お待ちしておりましたカイリ様。そのお洋服は?」


「えっとぉ…屋敷の人に渡そうと思ってたのですが、中々会えなかったのでここまで持って来てしまいました」


カイリがそう言うとサシャさんは納得した様子で話し掛ける。


「そうですか。そのまま部屋に置いといて頂ければ、我々の方で回収してましたよ」


「ああ、そうなんですか。すみません」


「構いませんよ。そのお洋服はこちらで回収致します」


「はい。お願い致します」


サシャさんにそう言って服を渡すとそのまま席へと案内してくれた。


「今日の朝ごはん楽しみだね」


「キャンッ⁉︎」


プルンッ⁉︎


「〜〜〜♪」


ルル達も「うん!」と言いたそうな返事を返してくれる。


「お待たせ致しました。朝食を置かせて頂きますね」


「はぁ〜い!」


……って、この人ミューさんじゃないか! またパンツを脱がして来るかもしれないから気を付けないと!


カイリがそう思っている中、ミューと呼ばれているメイドはカイリとルル達の食事を用意した後、カイリに向かってニッコリとした顔を向ける。


「どうぞ。ごゆっくりして下さい」


「あ…はい。い…頂きます」


「キャンッ⁉︎」


プルンッ⁉︎


「〜〜〜♪」


ルル達も「頂きます」と言うとカイリと同じように朝食を食べ始める。


……うん。この目玉焼き焦げてないくて美味しい! それにこっちのサラダは水々しくてほのかに甘味を感じて美味しい! これもしかして採れたてなのか?


なんて思いながら食事をしていると、あることに気が付いた。


「…あれ? バルグさんとミレイさんは? もしかして先に食事を済ませたのか?」


「はい。バルグ様達は今朝早くにお食事を済ませて商会ギルドへと向かいました」


「ああ……そうなんだ」


でも何でミレイさんまで商会ギルドに行ったんだ?


そんなことを思っていたら、プル太郎がチョンチョンと肩をつついて来た。


「…ん? どうしたんだプル太郎?」


プルンッ⁉︎


「……え? サラダを食べてみたいだって。別に構わないけど、ちょっとだけだぞ」


プルンッ⁉︎


プル太郎が「わぁ〜い!」と言いたそうに震えた。


「はい。あ〜ん……」


プル太郎には口がないが野菜を千切ってあげるのでついつい言ってしまう。俺の行動に対してプル太郎は意味がわかっていないのか、触手を伸ばして野菜を取って自分の身体の中へと入れた。


「味の方はどう?」


……プルンッ⁉︎


プル太郎は「う〜ん……」と言いた気な感じで震えていた。どうやら合わなかったみたいだ。


「〜〜〜♪」


「え? マナさん達が来た? それ本当?」


俺がファニーちゃんにそう聞くとファニーちゃんはドアの方に指をさしたのでそちらに顔を向けてみたら、本当にマナさん達が食堂へとやって来ていた。


「カイリ、食べてる?」


「食べてるんだけど……何で普段着を着てるの? メイド服はどうしたんですか?」


「今日はオフだからね。そんなことよりもサシャからブンゼのことを話して貰ってないの?」


ブンゼのこと?


カイリが首を傾げてそう思っていると、サシャはムッとした顔でマナの顔を見つめる。


「食後にその話をしようと思っておりましたが、聞いてしまっては仕方ありませんね。カイリ様」


「はい」


「ブンゼの商会のことですが近々商会に捜索が入るみたいです」


「やっぱり……俺に絡んで来たせいで?」


「いいえ。あの商会は前々から商会ギルドで定められた法に触れている部分がありました。ちょうどいい機会なのでちゃんとした調査をしましょう。ということになったのです」


なるほどねぇ〜……。


「その商会ギルド法に違反してたら、ブンゼはどうなるんですか?」


「軽い罪だとランク下げと被害者への賠償金の支払い。重い罪になりますと商会ギルドからの除名とブラックリスト入りになります」


「お、おお……どっちにしても最悪な展開になりそうな予感しかない」


そんなことを思っていたら、バルグ邸で働いている執事が「失礼します」と言って食堂に入って来た。


「サシャ様。お客様が来ておられます」


「旦那様は今はいないと伝えたのですか?」


「はい。伝えましたが例の方なので少々手こずっております」


「ハァ〜……わかりました。その方の対応を致します。カイリ様はそのまま食事を続けていて下さい。すぐに戻りますから」


「あ…はい」


「行きますよ。マナ」


「オフだけど了解だよ!」


色々聞きたいことがあるんだけど、言ったら言ったで怖い思いをしそうだから止めておこうか。


そう思い、部屋から出て行くサシャさん達の姿を見送った後、何事もなかったかのように食事を続ける。


「みんな、美味しかったな」


「キャンッ⁉︎」


プルンッ⁉︎


「〜〜〜♪」


俺の言葉にルル達は「そうだね!」と言いたそうな返事を返す。


しかし何だ。食事が終わってもサシャさんが戻って来ないってなると、相当厄介な人に絡まれてるんだなぁ。


「キャンッ⁉︎」


ルルが「お外で遊びたい!」と言って前足を乗せて来たので、カイリは心の中で可愛いと思ってしまった。


「そうだな。庭で遊ばせて貰おうか。…プル太郎達はどうする?」


プルンッ⁉︎


「〜〜〜♪」


プル太郎達も「お外に行きたい!」と言ったので、テーブルの乗っかっているプル太郎を抱き上げる。


「ご馳走様でした。後はお任せしても大丈夫ですか?」


「任せて下さい。カイリ様はお庭で思う存分ルル様達の相手をして下さいね」


カイリはミュー達に一礼するとルル達と共に庭へと向かうのであった。

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