新たな仲間が出来た瞬間!

ルルの涎だらけだった妖精の身体をプル太郎が綺麗に拭き取ってくれた。しかし、涎を拭き取り終わっても全く起きる気配がないので、ちょっと困っている。


「全く起きてくれませんねぇ……」


「そうね。死んでいる訳じゃないのは分かっているけど、心配になってくるわね。鑑定をした時に状態異常は見当たらなかったのよね?」


「はい、だから普通に気を失っているだけだと思う」


俺の両手に乗っている20cmよりもちょっと低い妖精の女の子を心配した顔を見ていると、ルルが近付いて来た。


「クゥ〜ン……」


プルンッ……


ルルとプル太郎も妖精が心配そうに見つめている。


「心配なのは分かるけど、ファニーが起きるのを待とう」


「えっ⁉︎ ファニー? 何を言ってるの?」


「この子の名前は、ファニーって言うんですよ。ステータスを見た時に名前がちゃんと載ってたから間違いない筈」


「その子に名前があるのぉ⁉︎」


イヤイヤイヤイヤッ⁉︎ 何よりも人間っぽいから、名前が付いているのは当たり前じゃないのか?


「妖精に名前があるなんて……」


あれ? サシャさんも同じ反応してる!


「名前がある妖精って珍しいんですか?」


「あ、いえ……妖精は妖精の国にいる妖精しか名前が付いてないのです」


「妖精の国にいる妖精しか名前が付いてない?」


どういうこと?


「カイリ、妖精は精霊と魔物の間みたいな存在でね。特定の花から生まれるよ。その花が多く咲く場所に妖精達は自分の国を作っているのよ」


「何か俺の中のイメージだと、国というよりも楽園みたいな感じがするんだけど」


「半分は合ってる。それで話の続きなんだけど。その国で生まれた妖精はその国の女王から名前が与えらえる決まりになってるの」


「へぇ〜……」


何か毎年生まれたフェアリーに名付けしていそうで大変そうかも。


「妖精の国は外部との交流が全くと言っていいほどないので、場所も一部の人しか場所を知りません。

なので彼女を元の場所へ返してあげるには、その知っている方々を探すしかないですね」


……何か答えを先読みされた気分。でもそう考えていたよ、俺はさぁ‼︎


そんなことを思っていたら、手のひらに乗ってるファニーちゃんがモゾモゾ動き出した。


「おっ⁉︎ 起きそう!」


俺がそう言うとファニーちゃんは目を開き、周りを確認するように見回した後、俺達を見つめる。


「よかった、起きてくれて」


「〜〜〜ッ⁉︎」


ファニーちゃんは驚いた顔をさせ、カイリから逃げるように距離を取った。その行動にカイリはちょっと傷付いたのか、ションボリした顔になってしまう。


「カイリ様、ファニー様があのような行動を取るのは致し方ありませんよ」


「どうしてですか?」


「妖精だけが作れるフェアリーベリーは貴重な果物で、とても美味しいから狙う商人が多いの。それに彼女の羽に付いてる鱗粉は、浮遊の効果があって身体に振り掛ければ宙に浮くことが出来るのよ。しかも錬金術の材料としても貴重価値はあるわ」


「マジですか?」


「マジな話よ。今では妖精の国と友好な関係を築く為に妖精狩りは禁止されているけど、密猟しようとする輩は少なくはないわ」


ならあんな風に警戒されるのは、当たり前ってことだよなぁ。


俺がそう思ってフィニーを見つめていたら、ルルがフィニーの側まで行ってしまった。


「キャンッ⁉︎ キャンッ⁉︎」


「〜〜〜……?」


「キャンッ⁉︎」


あれ? 何か知らないけど、ルルとファニーちゃんが会話をしている気がする。


「プル太郎……もしかしてファニーちゃんとルルは会話出来てるのか?」


プルンッ⁉︎


「うん!」と言いたそうな感じで震えていたので、カイリは驚いた表情でルルとファニーを交互に見つめる。


フェンリルと妖精が会話出来るなんて、まるでポケモ……ファンタジー感で満載で感動的だ!


その後もキャンキャン吠える鳴き声と鈴のような音色の声で話し合った。その結果俺達から離れていたファニーちゃんが、俺の元へやって来た。


「俺のところに来てどうしたんだ?」


「〜〜〜♪」


……ダメだ! 何が言いたいのかサッパリ分からないっ‼︎


「キャンッ!」


「えっ!? 何? テイムぅ? 一体どういうこと?」


「〜〜〜♪」


プルンッ⁉︎


プル太郎が驚いて様子を見せる中、ファニーちゃんが腰に手を当てて胸を張った。


テイム……テイムって、まさか⁉︎


「ファニーが従魔になってくれるのか?」


「〜〜〜♪」


何て言っているのか分からないけど、笑顔で踊っている姿を見て容認していることを理解出来た。


「分かっていると思うけど、平等な契約だから契約を辞めたいと思えば取り消せるよ」


「〜〜〜♪」


ファニーも理解したような顔をさせる。


「じゃあ……テイム‼︎」


妖精ファニーのテイム完了。名前が付いているようですが変更しますか?


変更はなしっと。


目の前に浮かんでいるNOと書かれたボタンを押した。


「……うん、これで契約完了だ。これからよろしくな、ファニーちゃん!」


女の子だから、ちゃん付けで呼ぼう!


「〜〜〜♪」


ファニーちゃんも「よろしくねぇ〜!」と言いたそうな返事を返してくれた。


「ところで、ファニー様はどうしてダンジョンにいたのですか? もしかしてこのダンジョンの中に妖精の国があるのでしょうか?」


「〜〜〜♪」


サシャさんとサニーさんがこっちを向いている。通訳をしてくれってことですね、はい。


「えっとぉ〜……違うと否定してます」


「じゃあ、どうしてここにいたの?」


「〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜〜♪」


「知らない。友達。遊ぶ? それに故郷……もしかして自国で友達と遊んでいたら、何時の間にかこの場所にいた。それで合ってる?」


「〜〜〜♪」


首を縦に振るってことは、合っていたみたいだ。


「誰かに連れ去られて来た。って線は消えるわね」


「先ほども話ましたが妖精の国の場所は一部の人にしか分からないので、密猟者が行こうと思っても行ける場所ではありません。

もしかして妖精の国の外で遊んでいましたか?」


「〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜〜♪」


ちょっと怒り気味に答えるファニーちゃんの表情を見ながら、俺は通訳をする。


「えっとぉ〜……そんなことしないよっ! やったらすぐにバレる‼︎ って言いたいんだと思います。もしかして女王は自分の国の妖精を把握出来るのか?」


「〜〜〜〜〜〜♪」


「……妖精女王は俺が言ったように、国にいる妖精達がどうしているのか、ちょっとだけ把握出来るみたい?」


ファニーちゃんが否定しないってことは、合ってることだよな。


「まぁ完全に把握はしてないと思うけど、妖精女王となればそれぐらいのスキルを有していそうね。

その女王様がアナタのことを心配していると思うわ」


「〜〜〜……♪」


ファニーちゃんは「うん……」と言いたそうな声をだしながら、ションボリしてしまった。


「ちょっ、サニーさん! ファニーちゃんが気落ちしちゃったじゃん!」


「でも安心して。妖精の国と交流がある人を知っているから、その人に話をしてみましょう」


「ッ⁉︎ 〜〜〜♪」


ファニーちゃんは「お願いします!」と言いたそうな声を出してサニーさんに近付いた。


「その人は遠いところにいるから伝わるにの時間が掛かると思うけど、その間カイリの側でサポートしてあげてね」


「そうですね。カイリ様はレベルは疎かステータスが結構低いですからね」


「〜〜〜♪」


プルンッ⁉︎


「そうなの?」と聞きたそうな声を出すファニーちゃんに対して、プル太郎が「そうだよ!」と答えるように身体を震わせた。


「うん……俺生産職だから攻撃面じゃ弱いよ」


「〜〜〜? 〜〜〜♪」


「そうなの? 私がサポートしてあげる!」と言いたそうな声を出しながら、はしゃぐファニーちゃん。


ファニーちゃんもいい子そうでよかったぁ〜。


「何となく言いたいことが分かりました。カイリ様はレベル上げの途中です。手伝って下さいますか?」


「〜〜〜♪」


「もちろん!」と言いたそうな声を出したファニーちゃん。


「ファニー様の了承を得ましたし、レベル上げの再開を致しましょう」


「そうね。みんな、頑張ましょう!」


「キャンッ!」


プルンッ!


「〜〜〜♪」


「オ……オオ〜…………」


ウチの従魔達はサニーさんの掛け声に合わせるように、「オオ〜ッ⁉︎」と掛け声を上げて付いて行くのであった。てかウチの子達ノリがよかったんだなぁ〜。

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