バルグ邸にまたお泊まり!

何だかんだバルグさんの邸宅で色々あったが、サシャさんとサニーさんと俺で迷宮に行くことが勝手に決まった。


「キャンッ‼︎」


プルンッ‼︎


あ、そうだ。ルル達も一緒に行くんだった。ゴメンゴメン忘れてた訳じゃないから怒らないでくれ。それはそうと……。


「明日何時頃に行くんですか?」


「そうですねぇ〜……迷宮に潜る際は冒険者ギルドの報告しなければいけないので、早い時間に冒険者ギルドへ行きたいですね」


「迷宮に潜る時は報告が必要?」


「あら、もしかしてカイリは知らなかったの?」


俺その話初耳なんですけど。


「サニーさん、カイリ様は登録して間もないので、このことは知らなくて当然ですよ」


「何も教えられなくて当然……一体どういうことですか?」


「冒険者の大半は、生死が関わってくるような仕事が多いのはご存知ですよね?」


「まぁはい」


ファンタジーゲームで散々ダンジョンに潜って戦って死んでをやってるから、多少なりと理解している。


「冒険者ギルドの方針でFとEランクの冒険者は、基本的にダンジョンに入ることは許されていないのです」


「そうなんですか。でも、何でダンジョンに入れないんですか?」


「昔は冒険者に登録したら迷宮に入っても問題はない状態だったの。その若い冒険者がダンジョンに入って行って亡くなる事例が多発していたのよ」


「へぇ〜……でも、一階ぐらいの敵なら大丈夫じゃないか? それに危険になれば逃げればいいし」


俺ならそうするし。


そんなことを思っていたらミレイさんが少し驚いた表情を見せた後、説明を始める。


「そうね。普通ならそうやって強くなって段階的に下の階層を目指すの。でもね、ダンジョンは深く潜るほど高いランクのアイテムを入手出来る傾向があるから、みんな一攫千金を狙って……ね?」


つまり命知らずどころか、目先の利益しか見えていないから無理して深く潜ってしまうと。


「ミイラ取りがミイラになるような話だな」


「そうそう。場所によってはとんでもない数になっていることが判明したから、今のような制度を作ったみたいよ」


「国で見つけたダンジョンの入り口には、管理する人がいてね。その人に入ることを伝えてからダンジョンに入るのが義務なのよ」


「へぇ〜、ちゃんと対策をしているんだなぁ」


「でも、管理されてないダンジョンの場合は出入り自由! だけど誰にも入ることを知らせていないから、ダンジョン内で何かあったら助けて貰えないと思っていた方がいいのよ!」


つまり、そういった場所では自己責任で。って話だな。


「本当はDランクからこういった話をされるんだけど、カイリの場合は無理しそうにないからね」


「あっ! 因みに、もしEとかFランクの冒険者を引率でダンジョンに連れて行く場合は、引率を請け負った人達が責任を持たないといけないってルールがあるから、気軽な気持ちで誘わないようにね」


「その前にDランクに上がるかどうかじゃない?」


「そうね。でもカイリなら早くランクを上がると思っているわ」


う〜ん……サニーさんは錬金術ギルドの人だから説得力がないな。


「キャンッ!」


ルルが「自信を持って!」と言いたそうに吠えるので頭を撫でてあげる。


「ルル、お前はなんていい子なんだ!」


「それはそうと、私の方から宿の店主に話しておくから安心してね」


「はい!」


ミレイさんに返事をしながらルルの身体を撫でてると、サシャさんが俺に近付いて来た。


「では、カイリ様のお部屋をご案内するので、私に付いて来て下さい。マナ、アナタはサニー様にお部屋を案内してあげなさい」


「エエエエエエッ⁉︎ 私がカイリの案内をしたい!」


「ダメです。アナタに任せるとカイリ様に何を仕出かすのか分かったものではありませんから」


サシャさんの言葉を聞いたマナさんは、ムッとした表情を浮かべる。


「サシャが思っているような変なことはしないよ」


「……カイリ様に抱き付いているではありませんか」


うん確かに、何か分からないけど嬉しそうな顔で抱き着いているんだよね。


「これはスキンシップだから気にしないの」


マナさんはそう言うと、頬を俺の頬に当ててスリスリし始めた。


こ、これはこれで嬉しいかも!


「マナ、はしたないから止めなさい」


「う〜ん、もうちょっとだけ……」


「マナ、カイリちゃんと仲良くしたい気持ちは分かるけど、今は止めてちょうだい。お部屋の中でなら好きなだけやっていいから……ね?」


それどう言う意味っ⁉︎ まさかマナさんに、いけないことをされるのか?


「う〜ん、分かりました」


マナさんはそう言うと、名残惜しそうな顔で離れてくれた。


「マナが離れてくれましたし、行きましょうカイリさん」


「分かりました。行こうルル、プル太郎」


「キャンッ!」


プルンッ!


プル太郎を抱き上げると、ルルと共にサシャさんの後ろを付いて行く。


「……あれ? この部屋って、もしかして?」


「お気付きになられましたか。そうです。カイリ様が使われていたお部屋です」


あらまぁ〜……また同じ部屋に泊まることになるとは、思いもしなかったわぁ〜。


そんなことを思いながら部屋に入った途端、隣にいたルルがはしゃぎ回りだした。


「夕食まで時間があります。なのでお好きしていて下さい」


「分かりました! ルル、構ってあげるから止まってくれ」


「キャンッ!」


ルルは「はぁ〜い!」と言った感じに吠えると、尻尾を振りながら俺の元にやって来た。


「ホント可愛いヤツめぇ〜!」


そう言いながら身体を撫でてあげる。


ルルがこうやって構って欲しそうにするのは、つまんないからだろうなぁ。お金に余裕が出来たら、玩具を買って遊ばせてあげようか。

そうすれば俺が誰かと話し合っている時に割り込んで来ない筈だ。


「ルル様は本当にカイリ様のことが大好きですね。もしかしたらカイリ様のことを親と思っているのではないでしょうか?」


「アハハ……そうだね」


多分そんな感じではなく、友達感覚で構ってるんだと思う。


プルンッ!


ルルの身体を撫でていたら、プル太郎がサシャさんの元に行ってしまった。


「えっ? どうしたプル太郎?」


プルンッ! プルンッ!


「サシャさんに構って欲しい?」


俺の言葉にプル太郎は否定するように身体を横に振った。


違うの? だったらもしかして……。


「俺のことがイヤになったから、サシャさんの従魔になると?」


プルンッ‼︎ プルンッ‼︎ プルンッ‼︎ プルンッ‼︎ プルンッ‼︎


「違うっ‼︎ 違うっ‼︎ 違うっ‼︎ 違うっ‼︎ 違うっ‼︎」と言いたそうに身体を横に振った。


えっ⁉︎ これも違うの? それじゃあ一体何がしたいんだ?


頭を悩ませている俺に対して、プル太郎は必死そうなのか飛び跳ねたり、身を捩ったりして必死な感じで伝えようとして来る。


「う〜〜〜ん……見たい? もしかしてサシャさんの仕事を見てみたいのか?」


ッ⁉︎ プルンッ‼︎ プルンッ‼︎


プル太郎は俺の問い掛けに、「そうそうっ‼︎」と言うように身体を縦に振った。


「そういうことかぁ〜、サシャさんがいいよって言うんなら、付いて行って大丈夫だから」


俺がそう言うとプル太郎サシャさんの方を見た。


「構いませんよ。ただ、お仕事の方は地味なので面白く感じないと思いますよ」


プルンッ! プルンッ!


「プル太郎は、それでも構わないって言ってる……と思います」


付いて行きたそうなのは理解出来る。


「そうですか。それではプル太郎様をこちらでお預かり致しますね」


サシャさんはそう言うと、プル太郎を抱き上げて部屋を出て行ってしまった。


「何でプル太郎は、サシャさんに付いて行ったんだ?」


「キュゥ〜ン……」


ルルは「聞かれても分からないよ」と言いたそうな鳴き声を上げていたのであった。

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