ダンジョンへ行く許可を貰おう!

錬金術ギルドを出て、マナさん達と共にバルグさんがいる邸宅へとやって来たのだがぁ……。


「それは許可しない!」


来るな! と言いた気なマナさんに対して、サシャさんは余裕な表情でマナさんに話し掛ける。


「いいじゃないですか。私が1人増えたところで何も変わら……いえ、戦力が増えて安全になりますよ。カイリさんもそう思いませんか?」


「えっ⁉︎ まぁ、そのぉ〜……」


サシャさんの目は「はい」と答えなさいと言う目で見ていて、マナさんの方を見つめれば「そんなことはない」と伝えろと言う目で見つめている。いや目で訴え掛けている!


「カイリさん」


「カイリィ……」


「キュゥ〜ン」


2人はそう言って顔を近付けて来る。今更ながらどうしてこうなったのかを説明すると、ガルマさんがいる邸宅へと戻って来たのまではよかったが、バルグさんが不在だったのでミレイにマナさんとサニーさんと共にダンジョンに行く話をしたら、サシャさんが行くと言い出したのだ。

あとルル! 何で2人に混じって顔を近付けているんだよっ‼︎ 遊び半分でやっちゃ駄目だからなっ‼︎


「私も行く‼︎ ……と言いたいところなんだけど、お腹にアイリちゃんがいるから断念しなきゃいけないわ」


そう言って愛おしそうにお腹を摩るミレイさんを見て、大切にしているんだなぁ〜。と思った。


「奥様、私が同行する許可を頂けないでしょうか?」


「ん〜……ダンジョンの1階から2階ぐらいなら、マナとサニーだけいれば問題ないと思うわ。

でも、サボることの多いマナが何をしでかすか分からないし、今日もサボっていたから……罰としてマナの代わりとしてサシャに行かせるわ」


「エエエエエエッ‼︎⁉︎」


マナさんがとてもイヤそうな顔をしている。


「ミレイ様、ありがとうございます」


「うん。分かってると思うけど、カイリちゃんにダンジョンの歩き方をしっかり教えるのよ」


「分かりました!」


「それで、予定はいつなの? それに何処のダンジョンに潜るの?」


「ミタ森の前にあるダンジョンに行くつもりだったのにぃ〜‼︎」


笑顔ままマナさんに聞くミレイさんに対して、マナさんは泣きそうな目で答える。


「ミタ森?」


「カイリ。もしかしてミタ森場所を知らないの?」


「え? まぁ……はい」


それと、「私を連れて行って!」って目で訴え掛けるな! サボった罰なんだから、甘んじて受けろっ‼︎


「ミタ森は門を出て左側に見える森よ。その前に遺跡があって中はダンジョンなっているのよ」


「遺跡!」


これまたど定番な感じだなぁ!


「あれ? もしかして、カイリは遺跡に興味があるの? ……グスンッ」


「え? まぁ、ちょっと昔興味があってね」


「……そうなの。まぁ危険な場所に代わりはないけど、出て来るモンスター自体がそんなに強くないから、気兼ねに行っても問題はないわよ」


「サニーさん、気兼ねって言ってもカイリちゃんはまだレベルが1桁なんだから。アイリちゃんもそう思うよねぇ〜?」


何故お腹の子に聞くんだ? あとマナさん、涙ぐんでもダンジョンに連れて行けないからな。


「ああ〜そうだったわね。でも私達がいれば1〜2階の敵ぐらいなら簡単に倒せるわよね?」


「……うん」


サニーさんがそう言うと、マナさんはか細い声で頷いた。……ってぇ!


「ルル、プル太郎。何でお前達も頷いているんだよ。もしかして、ダンジョンに潜ったことがあるのか?」


俺がそう聞くとルルは顔を逸らしてミレイさんの元に行き、膝の上に乗った。それに対してルルはサニーさんの足元で構って欲しそうにしている。


あっ⁉︎ アイツら逃げやがった‼︎


「とにかく、明日行くのは決定ね……プル太郎ちゃん、プニプニしていて可愛いわぁ〜…………」


プル太郎も撫でられて嬉しいのか、身体をくねらせて嬉しさを表現している。


プル太郎……お前はいつから浮気者になったんだ?


ルルの方に顔を向けて見てみると、サシャさんやサニーさんに可愛がられていた。


「ルルの浮気者! 今日は一緒に寝てあげないからなぁ‼︎」


「クゥッ‼︎」


ルルは「えっ⁉︎」と驚いた表情をさせると、俺の元に駆け寄って来た!


「キュ〜ン! キュ〜〜〜ンッ‼︎」


まるで「ゴメンなさい! 許してぇぇぇっ‼︎」と言いたそうな鳴き声を上げながら寄り掛かって来るので、ルルの頭を撫でてあげる。


「……ゴメン言い過ぎた。一緒に寝てあげるから泣きそうな声をあげないでくれ」


俺の言葉を聞いたルルは嬉しそうな表情になると、膝の上に飛び乗り、尻尾をブンブン振って俺の顔を仕切りにペロペロと舐め始めた。


……うん、やっぱり嬉しそうにしているルルは可愛いなぁ。てか、身体能力が上がっている気がするけど、もしかしてレベルが上がったお陰なのか?


「ルルって、本当に主人が好きなのね」


「それにあの誇り高きフェンリルの幼体が甘えているんですよ。私達は奇跡でも見ている気がします」


「可愛いわねぇ〜……やっぱりアイリちゃんが生まれたら、ワンワンを飼ってあげようかしら?」


「明暗ですね」


何か微笑ましい話が聞こえて来るけど、気にしないでおこうか。ところでルル、そろそろ顔を舐めるのを止めようか。


「さて、サシャ達の道具は私の方で揃えてあげるわ」


「いいんですか、ミレイ様?」


「ええ、これも必要経費の1つだからね。サニーはどうするのかしら?」


「私は自分のを用意してあるから、揃えて貰う必要はないわ」


「あらそう。プル太郎ちゃん達は何か用意して欲しい物とかなぁい?」


プルンッ⁉︎


「キャンッ!」


「……カイリちゃん。プル太郎ちゃん達が何言ってるか分かる?」


「多分、平気って言ってると思う」


って言うか、俺を含めてルル達も何を用意すればいいのか分からない。


「なるほど。ルルちゃん、プル太郎ちゃん、カイリちゃんのことを守ってあげてね」


「キャンッ!」


プルンッ!


うん俺がルル達のご主人の筈なのに、ミレイさんがご主人になっているのは俺の気のせいかな?


そんなことを思っていたら、プル太郎が俺の元に戻って来た。


「もしかして、構って欲しいのか?」


プルンッ!


あらまぁ〜。


「ルルと同じ甘えん坊なヤツめぇ〜!」


そう言って身体を撫でてあげると嬉しそうな反応を見せる。


「ねぇサシャ。何か羨ましいって思えるのは、私だけ?」


「私も羨ましいと思っていますよ。ですが我々はテイマーの職ではありませんし、何よりもカイリ様のように従魔に慕われるか分かりませんよ」


「それ以前に、フェンリルとかを従魔に出来るかが問題じゃない?」


「……そうですね」


俺とは別のところで話し合いが行われているよ。


「キャンッ‼︎ キャンッ‼︎ キャンッ‼︎」


今度はルルが「プル太郎ばかりズルイ! 構って欲しいよぉっ‼︎」と俺に向かって吠えて来たので、ルルを抱っこして撫でてあげたら肩部分をガジガジ噛んで来た。


ああ、これがいわゆる甘噛みってヤツかぁ〜……可愛らしくて胸がキュンキュンするぅ〜っ‼︎ ……でも。


「ルル、服が痛んで汚れちゃうから噛むのを止めちょうだい」


「キャンッ!」


ルルは「分かった!」と言いたそうな吠え方をすると、甘噛みを止めて俺の顔を見つめて来る。


「素直に言うことを聞くなんて、本当にいい子だよ!」


「……ねぇ、これが俗に言う親バカってヤツなのかしら?」


「そうですね」


「でも幸せそうだから羨ましいなぁ〜」


「私も、アイリちゃんの為にワンワンを飼ってあげたいなぁ〜」


皆さんそれぞれ何か言っているけど、俺は全く気にしない!


そんなことを思っていたら、マナさんが俺の後ろにやって来ると抱き付いて来た。


「私も構って欲しいなぁ〜!」


「マナさん、何を言ってるんですか?」


「だって従魔達ばっかり相手して貰っててズルイじゃん。だからカイリ、私の頭を撫で撫でして欲しいなぁ〜」


「そ、そう? なら撫でるよ」


そう言ってからマナさんの頭を撫でてあげたら、とても嬉しそうな顔をしていた。


「キャンッ! キャンッ!」


今度はルルが「もっと撫でてよっ‼︎」と怒った感じで吠えて来たので、頭を撫でてあげたら嬉しそうな顔をさせていた。


……もしかして、マナさんの策略なのか?あとマナさん! 耳元で「ダンジョン連れて行って」って囁かないでくれ! 俺にはどうすることも出来ないんだからさぁ‼︎


両方の頭を撫でながら、そう思ってしまうカイリであった。

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