肥え太ったオッサンが国王だと大体クソ

「おーーー、よく来てくれた勇者諸君」


 光が消えたから、目を開けて見れば肥え太り宝石をジャラジャラ付けたおっさんが偉そうにそんなことを言ってきた。

 しかも、そのおっさんの周りには女優やアイドル、モデルのようなとんでもない美女が5人ほどそのオッサンに寄りかかるようにいた。クソ羨ましいじゃなくて、けしからん。

 更にその周りには屈強な騎士みたいな人が10人以上。うん、凄く怖そう。

 そこから察するに、多分このおっさんはかなり地位の高い人だろうなって、いや、そんな事よりも気になるのがモデル以上の美女5人の中でも一際輝く美女いや美少女が1人。その美少女は何か凄い魅力を感じる。吸い込まれそうなほどの魅力を。彼女の為なら命すらも捧げてもいいって思うくらい美しい。


 「助けてください。私達の国は今、魔王という脅威に晒されています。」


 上目遣いの涙目で彼女がそう言った。ヤバい、可愛すぎる、俺は彼女の為に命を捧げて魔王を絶対に倒さなければいけない。彼女を涙目にさせるなんて魔王は許されない。俺は、俺は、俺は、俺は、違う、これは俺らしくない。何でだ、今俺は彼女に何をしようとした、全てを捧げようとした。そんな馬鹿な。俺らしくない、落ち着け。落ち着け。俺は二次元好きだろ。獣娘とか大好きな、二次元オタクだろ。落ち着け。俺らしくない。落ち着け。落ち着くんだ俺。


 「俺はやるぜ」


 俺が自分の不可解な行動に対して無理やり落ち着かせようとした時だった、クラスの中心人物であるラノベ主人公みたいな高校生・佐藤 賢がそう声を上げた。そしたら、それをかわきりに皆が一斉に声をあげる。


 「俺も」「私も」「私達も」「やってやるぜ」「貴方に全てを捧げる」「魔王を殺してやる」「俺の底力見せてやる」「俺の封印された最強の力今こそ貴方の為に」


 皆が次々と魔王退治を志願しだす。そんなこと有り得ない、皆平和な日本で学生をやっていた一般人だぞ。そんな簡単に命の危険のある魔王退治なんて・・・・・。

 これは、まさか、洗脳いや魅了か?それならば、皆の行動も俺のこのおかしな思考にも納得がいく。


 <スキル魅了を感知しました>

 <魅力を無効にしました>


 ・・・・・・・・・・・・・


 なるほど、やっぱり、魅了だったか。しかし、魅了の無効が遅い。いやまあ、結果的には無効化出来たから良いけど。

 多分あれか?自分で知覚しないとスキル効果発動しないとかそういう感じか?それっぽいな。うん。まあいいや、取り敢えずこの国から逃げた方がいいな。少なくとも魅了スキルで奴隷のような感じにしてる時点で、信じられる要素はゼロ、絶対ろくな目に合わない。こういうのは大人しく逃げるに限り。もうこれラノベの定番ですね。

 まあでも、今この場は無難にやり過ごした方がいいかな?変に怪しまれるのは危険やしね。取り敢えず魅了にかかったふりをしますか。


 「俺も貴方様の為、魔王を討伐してみせましょう」

 こんな感じかな?


 「おお~~、勇者はわが国の為に頑張ってくれるのか、ならばこの国王がため存分にその力を振るう事を許可しよう」


 特に怪しまれてはないかな。

 つか、それよりも、この太ったおっさんがこの国の王様だったのか。というかめっちゃ傲慢やな。明らかにクソ野郎って感じが強いわ。

 しかし、驚いたことに俺以外にも何人か嫌そうな顔をしているな。多分何らかの形で魅了がかかってないのか?まあ、いいや、でも後々話せば一緒にこの国を出る協力をしてくれるかもしれないかもな、いや、やっぱりやめとこう、流石にクラスメートとはいえそこまでメチャクチャ仲良いってわけでもないし、それに一緒にこの国から逃げましょって声を掛けれるほど俺のコミュニケーションレベルは高くない。いやでも、協力者がいた方が色々と便利そうやけれども。まあ、いいやそれは追々考えていこう。


 まあでも、少なくとも、今のところは俺は特に怪しまれている様子はないし。他の明らかに王様に怪訝な顔してる人は何となくだが、近くにいる騎士に睨まれているもとい怪しまれてそうだけど。まあ、俺ではないし大丈夫だろう。

 そう安心していたら魅了を掛けようとした美少女もとい悪女が。

 「勇者様も今日は色々なことがあって疲れてるでしょう、メイドまたは執事を1人ずつ付けるので、どうぞ疲れを癒してください。何か用がありましたらメイドまたは執事に何でも言って下さい。彼ら彼女らは勇者様には絶対に逆らいませんから」


 そう言って、微笑んだ。その顔は恐ろしいほど可愛かったが、同時に恐ろしいほど裏がありそうでゾッとする笑顔だった。いや、女は怖いね。

 しかしこれは、何か男子にはメイドが、女子には執事がのハニートラップもしくは都合のいい言葉による洗脳とかありそうだな。うん、警戒しておこう。

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