今日から始まる3か月記念日
@tennnennpa-ma
第1話 ルート1負けヒロインの勝ちルート
「3か月後に付き合おう」
「へ?」
勇気を出して告白した僕に彼女、東雲さやかが返した言葉はあまりにも突飛で予想外
だった。恋人同士が愛し合う今宵。聖なる夜クリスマスのムードは僕の間の抜けた声
にかき消された。
「えぇと、どうして3か月後なのかな?」
動揺と驚きが入り混じった声で僕は尋ねた。
「ほら、3か月後は入学式があるじゃない。君、顔はかっこいいから私じゃなくて他
の女の子のほうがいいんじゃないかなぁって。あ、もう帰らなきゃ、じゃぁね」
はにかむように彼女は言って、もみの木の下から去っていった。彼女の白いコートが
雪景色と重なり合っていく様子を僕は茫然と見ていた。
「アッハッハッハ....っひぃいい、なぁにあんなに私に告白の相談をしてきたのに、
ゲホッ、ゴホッ...結局振られたんだ。」
「うるさいよ、人が勇気を出して相談したのに笑うことないだろ。」
聖なる夜の翌日、やり場のない気持ちを紛らわせるためにふて寝をしていたら、唐突
にメールが来た。「話がある」とだけ書かれたメールの送り人の家に訪問したら、こ
のざまだ。「ほんっとついてねぇなぁ。」何気なく吐いたため息に気を悪くしたのか
送り主は少しだけ頬を膨らませて「なんだよぉ。この美少女のボクが君みたいな友達
の少ない陰キャと話しているんだよ。少しはありがたくおもってよぅ。」
自分で言っていて恥ずかしくなったのか最後は恥ずかしそうに口をすぼめた美少女様
の顔を改めて見る。こいつは幼馴染の
な
性格をしている僕の数少ない親しい友人だ。親同士の仲がいいということもあってか
僕らはすぐに仲良くなった。
「!んぁ、何急に...そんなじろじろ見ないでよ。ごめんって謝るからさぁ」
なんだか、互いに恥ずかしくなってしばらくの沈黙が部屋に流れる。
「あのさぁ!」
「!」
急な大声に僕が驚いていると
「私たちで、1度付き合ってみない?」
顔を真っ赤にしながら震える声で問いかける彼女に驚いていると、恥ずかしさが最高
点に達したのか、先ほどとは打って変わって
「ごめん!今の忘れてろ!」
懇願と命令が混じった台詞は彼女の心情を雄弁に語っていた。
「...いいよ、僕ら付き合おうか。ただし3か月間ね」
彼女が一瞬嬉しさや恥ずかしさが混じった恍惚な顔でを見せる。思わずドキッとして
しまうが、僕の変化に気づいたのだろう。慌てて頭を振って表情を取り繕う。その様
子が面白くて思わず吹き出してしまう。さらに顔を赤くしながら彼女は
「ボクが君を攻略して見せる!」
まいったな、ギャルゲーはやったことはあるけれどヒロインになるのは初めてだ。
「よろしく頼むよ静ちゃん。」
からかうように僕は彼女の手を取った。
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