第2話:国外追放
「あら、生きて帰ってきたのね。
ふだんから貴族令嬢の誇りです名誉ですと言っているから、きっと自殺して誇りと名誉を守ると思っていたのに、アレンス家の誇りなんてたいしたことないのね」
殺す、絶対に殺す、母上の誇りと名誉をぶじょくしたこいつは殺す。
「なんだその眼は、それが義理とはいえ母親に向ける眼か。
恥をしれ、恥を。
もうガマンならん、この場で斬り殺してやる」
「お待ちください、ネルソン子爵閣下。
ソフィア嬢は四十年の約束で莫大なお金を支払い、我が主人に仕えることになったのですぞ。
それを勝手に殺すというのなら、支払ったお金の三倍の違約金を支払っていただきますが、それでよろしいのですね」
え、私は売られたのですか。
四十年もの長さの約束だなんて、実際には奴隷ではありませんか。
実の娘を奴隷のように売り払うなんて、犬にも劣る行いです。
「いや、これは悪かったな。
いくら同格のテンプル方伯との約束とはいえ、違反するわけにはいかんな」
え、このバカはなにを言っているのですか。
方伯といえば公爵に匹敵する力を持った強力な貴族ではありませんか。
我が国のような小国には存在しませんが、とても広い領土を持つアストリア帝国では、本国や属国で皇帝陛下直属の貴族として絶大な権力を持っているというのに。
そんな方伯を子爵ていどが同格なんて言ったら殺されかねません。
なにも知らないというのは恐ろしいモノですね。
「……ネルソン子爵閣下はなにか大きな勘違いをされているようですね。
ですが今はその事についてはなにも言いません。
それよりもソフィア嬢の事が大切です。
ソフィア嬢、我が主人が待っています。
直ぐにアストリア帝国にきていただきますぞ」
「まあ、まあ、まあ、まるで国外追放のようですわね。
まるで奴隷のように四十年もの長きにわたる下級侍女の役目とは。
哀れな事ですこと。
もしかしたらベットの中での役目もあるのかしら、ふっふっふっふっ。
没落した家系にはそんな役目が相応しいかもしれませんね」
私をさげすみバカにして快楽をかんじているのですね。
なんて下劣でしゅうあくな性格なのでしょう。
この場で斬り殺したいですが、短剣で斬りかかっても逆に殺されるだけです。
ここはガマンして、復讐のきかいを待ちます。
「はっきり申し上げておきますが、今のネルソン子爵夫人の発言とネルソン子爵閣下の発言は、我が主人を侮辱したモノとしか思えません。
後日帝国より正式な抗議を察せていただきますので、ご覚悟願います」
これは、帝国とマーシャム王国の争いになりそうです。
母上の家名をこの差なければいけない私が、こんなとこで犬死するわけにはいきません、ここは帝国の力を利用するくらいの覚悟をすべきですね。
「使用人風情が何を偉そうに言っている。
同格の貴族同士が軽い冗談を言っただけであろうが。
つべこべ言わずのさっさとそいつを連れていけ」
「では、後日戦場でお会いさせていただきましょう」
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