スマホが話しかけてきた時の対処法を今すぐ教えてください!

ネオン

お前はなんなんだよ!

いつものようにスマホを開いたら知らないアプリがあった。ピープスルーという名前の。


いや、こわっ。なにこれ、知らない間に変なサイトにアクセスしちゃった!?

…心当たりがないことも無い。

昨日はこんな変なアプリ無かったから、寝る前に見たサイトか…?

いや、けど、あれは俺がいつもお世話になってるアプリだし……


まあ、とりあえず消すかな。


そう思い、アプリをアンインストールするためにスマホを操作した…


と思ったのに何故かアプリが起動した。


は?いやいや、あり得ないだろ。…あれっ?俺、操作間違えちゃった?これやばいアプリだったら終わったわー。


あれこれと考えていると


『ハジメマシテ、ワタシはピープです。おナマエは?』


と、スマホが突然喋り始めた。


恐る恐るスマホを手に取った。

画面はピンク一色であった。

アプリを閉じようとしても全然閉じる気配がない。スマホ自体の電源を落とそうとしても出来なかった。

俺がどうにかアプリを閉じようとしている間ずっと、『はじめまして、ワタシはピープです。おなまえは?』と、そのアプリは淡々と青年の声で繰り返していた。


「…ライ」


スマホがずっとうるさいので、仕方なく名乗った。流石に本名は嫌だなと思ったので、いつもゲームで使っている名前を。



『…かくにん しました。ライ さまですね。はじめまして、ワタシはライさまの友人のピープです』


「お前と友達になった覚えはないぞ」


何だこいつ。


『…ピープです』


若干不満げに聞こえた気がする。

…気のせいか?

機械だし、そんなわけないか。


「何なんだよ、このアプリ」


とりあえずいちばん疑問に思っていることを聞いてみた。


『…ピープです』


そういうと、質問に答えることなく黙ってしまった。


機械の声が先ほどよりも、不満げに聞こえたような気がする。

…気のせいじゃなかったのか…?


「おい、なんか言えよ」


『…ピープです!』


なんだ?こいつイラついてるのか…?


『だーかーら、ワタシのなまえはピープですって!何回言えばわかるんですか!?“おまえ”でも“アプリ”でもありません!』


キレた。

最初に喋った言葉よりも機械っぽさが無くなってるような…?


「えっと、ピープ?ピープは何物なにものなんだ?」


『はい!あなたのピープです!…わたしは、ライさまのスマホにインストールされている“覗き見し放題”アプリの管理AIのようなです』


声が凄く元気になった。

名前呼ばれなくて拗ねてただけか…。

いや、AIが拗ねるってなんだよ。


「覗き見ってなんだ?」


『その言葉のままの意味です。わたしに言ってくれればどこでも覗くことができます』


「どこでもって、どこでもか?」


『はい、ライさまが望めばたとえ火の中水の中、どこでもお見せしますよ』


「そうか、…例えば、1000m先の家の中、とかでもか?」


『…』


ライの言葉を聞いたピープは喋らなくなってしまった。


はっはっは、流石に無理だろう。ピープがどれだけ優秀なAIであろうが、監視カメラが無さそうな家の中なんて覗けるわけがない。


『…準備完了。映像を写します』


突然、ピープが喋り出したと思ったら、どこかの部屋の中の映像が画面に映されている。ベッドがあるから、寝室だろうか。人はいないが生活感がある部屋だ。部屋の主は外出中だろうか。


「……。なあ、おま…」


『ピープです』


「おま…」


『ピープ!』


「…ピープ、その家、カメラかなんかあるのか?」


『ありませんよ』


「…じゃあ、どうやって覗いた?おま…ピープはAIだろ、カメラか何か機械が無いと除けないと思うんだが…」


『わたしは、AIではなくAIです。わたしは人間、特に科学、では到底理解できないような存在です。ですので、AIに出来ないことでも人間に出来なことでもなんでも出来ます』


説明されてもさっぱりわからん。


『理解できなくても大丈夫です。ライさまの友人の生命体と思っていただければ』


「なんか、よくわかんねえけど、それでいいか。考えるの面倒くさいし」


『本当ですか!わたしライさまの友人でいいんですか!』


ものすごく嬉しそうに聞こえる。

改めてピープはAIじゃ無いんだと思った。

きっと、ピープに顔があれば満面の笑みなんだろうな…。


「ああ、もうそれでいいわ」


『嬉しいです!』


「じゃあそろそろスマホ返せ」


もうずっと画面がピンク一色で動かないんだわ。そろそろスマホ使いたい…。


『…わたしと一緒にいるの嫌ですか…』


しょんぼりした声だ。


「いや、そういうわけじゃなくて、スマホは使えないと困るからな。…そうだ、ピープはAIじゃなくて謎の生命体何だろ?なら人型になるとかできないか?」


我ながら名案では無いか?


『おお!それはいいですね!…でも、このアプリの機能は失われてしまいますが…』


「いらねえから、全然大丈夫だよ」


『そうですか…。では、スマホから出ていくことにします。…このアプリ無駄でしたよね、ははっ』


乾いた笑いだ。

ものすごく落ち込んでる…。

やっぱりこいつめんどくさいな…。

めんどくさい、とか直接言ったらどうなるんだろう、こいつ。

落ち込むどころじゃねえんだろうな…。

何するかわからないから言葉に気をつけねえとな。


「いや、その…まあ、そのアプリはいらなかったけど、ピープに会えてよかったとおもってるからな」


『そうですか!では、また明日、あっ、あの、ピープという名前は仮の名前なので、わたしの名前、考えておいてくださいね!』


嬉しそうにそう言うと、スマホの画面が元に戻った。


おっ、機嫌が治ったぞ。よかった…。

名前か、面倒だ…。

よし、あとで考えよう!

スマホが戻ってきてよかった…。


…まじで明日人型になって現れるのか?

どんな見た目なんだろうか…。








「おはようございます!ライさま」


翌朝、気持ちよく寝ていたところを青年の声で起こされた。


「…ん?……。…おまえ、まさか、ピープか?」


昨日散々聞いた声だったからすぐにわかった。

彼は本当に人型になっていた。

しかも、めっちゃイケメン。

俺よりモテそうだな、こいつ。

なんかムカつく…。


「はい、そうですよ、ライさま。ですが、もうその名前では無いので新しい名前をください」


こんな爽やかな感じなのに、性格はあれなんだよな…。


「ああ、そうだったな。おまえの名前は…」

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