ラブコメで結ばれるのはメインヒロインとは限らない

豆腐ピーナッツ

第1話 「姉はいつもおせっかいだ」 

 俺の名前は三越 涼太。東京の外れの方に住んでいる。

 趣味はゲームとアニメと漫画で、運動はそこそこできて勉強はちょっとだけ得意というごく一般的な高校生だ。

 夏休みがあと一週間をきっているというのに青春ぽいことは全くできていない。

 彼女が一人もできないまま学園生活が終わってしまうのではないかと時々考えてしまう。だめだ、それだけは何があっても避けたい。

 でも好きな人や好みのタイプなどは特にない。


 

 熱いビームを出している太陽が沈もうとしている。俺も今家に帰ろうとしている。友達との遊びの帰りではなく、今日発売のお気に入りの漫画を買いに行って来ただけだ。


 俺は困った顔をして立ち止まっている外国人二人組を見つけた。一人は俺と同じくらいの年齢の女の子。もう一人はその母親だろうか。観光客かな?俺は迷わず声をかけた。


「Shall I help you?」

 (和訳: 何か手伝いましょうか?)


 俺はこう見えて高二にして英検準一級を合格している。英語を習得するのが早いのは母親譲りらしい。日常会話はもちろん、医療用語までわかる。これは父ちゃんのおかげだと思う。


「I wanna go here」


 女の子が近くの喫茶店のホームページを見せてきた。どうやらここに行きたいらしい。帰り道の途中にあるから案内してあげることにした。


ーーThank you very much!!


 お礼を言われ、二人が喫茶店に入るのを見送った。


 しばらく歩き俺も家に着き、そして玄関ドアを開けた。


 階段を上がり部屋に入ろうとした時に隣の部屋からうるさい声が聞こえた。


「りょうた!彼氏ん家遊びに行ってくるから留守番たのむね」


 そう言いながらヘアアイロンで髪の毛を巻いているのは姉の結衣だ。高校時代から付き合っている彼氏がいる。


「かわいい弟を家に一人にしてなんとも思わないのか?」


 俺には母親がいない。父親は世界中を周っている。俺の父親は医学界では結構有名な医者らしい。世界中から講義のオファーや手術の依頼が絶えないらしい。帰ってくるとしても半年に一回だ。それに一週間程度だけ。今はこの姉の結衣と二人暮らししている。


「思わん!」


 即答すな!と心の中でつっこみをいれた。なんて冷たい姉だ。


「寂しいなら好きな人でも家に呼びなよ(笑)」


 俺はなぜかその瞬間、頭の中に同じクラスの高島 未晴が頭に浮かんできた。高島さんは美少女だ。可愛いと美しいのどちらも持ち合わせている。その上コミュ力も高い。学力も運動神経は抜群だ。その完璧なルックスから友達もたくさんいて男からもモテる。親友の大丸から聞いた話によると五人から同時に告白されたが、全員振られたそうだ。俺からしたら高嶺の花だ。



「え、りょうた、好きな人いたんだ〜」



 姉貴は俺の心を見抜いたかのように悪魔のような笑顔を浮かべた。



「お姉ちゃんに相談してみー?」


「ほっとけ」


「顔赤いぞぉー」


「早くでろ」


「じゃあいい子にしててね♡」


「ご飯炊いといたから家にある食材でなんかおかず作って食べといて。出かける時はドアを閉めること、あと寝る時はちゃんと…」


「わかってる、もう子供じゃないんだから子供扱いすんな。俺ら言うて三歳差だろ」


 そう、姉は俺の三つ上で今大学二年生である。


「はいはい、じゃあ行ってきまーす」


 彼女はそう言って家の外に出て行った。





……もう子供じゃないのかー、寂しいのは私の方かもね。


 結衣は少し寂しげな顔をして家の方を振り返った。

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